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その42 コラルド帝国への道(前)
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コラルド帝国への道すがらのヒロイン・ヒーロー以外の会話や様子回です。
本編以外興味のない方はスキップ推奨。
=====================================
(馬車の中・side:侍従and侍女)
「…………」
「…………」
「…そ、ソリュー…」
「…何ですかエヴァンス」
「今からでも同行を、じ、辞退できないかn」
「できません諦めてくださいませそれでもまだ貴方ひとりのために今更引き返せなどとふざけたことを抜かすようでしたら今すぐ締め殺して道端に投げ捨てて差し上げますがいかが致しますか?」
「っそんな食い気味に言わなくとも!
しかも真顔で瞬きなし息継ぎなしで怖いこと言わないでくれるかなぁッッ!?」
「恐れ多くも私ども仕えのものの為に馬車を一台追加して下さったアルフレッド殿下の好意を無下にするようなことを言うからです。
一体何を怯えることがあると言うのですか?
私達は殿下とルシェルディア様が正式にご婚約を許されるという素晴らしい瞬間を目にすることができるのですよ?」
「ソリュー…だ、だってあのレイブン伯爵家だぞ、コラルドの。
しかも殿下の話ではルシェルディア様はその、そ、相当ご家族様方から溺愛されていらっしゃるとか…。
そんなすんなり婚約できるのか!?
む、むしろ殿下とか護衛達とか俺とか俺とか伯爵家の皆様方に嬲り殺されるんじゃ!?」
「何故俺とか、などと連呼するのかわかりませんが…はぁ。
どちらかといえば嬲り殺されるのは殿下だけでしょう。
我々護衛や仕えの者らはあくまで付属品、おまけ、傍観者に過ぎないのです。
だから安心なさい、エヴァンス」
「全然安心できないんだけど!?
殿下は嬲り殺されてもいいの!?
俺っ、殿下の侍従だぞ!?いざという時には身を挺して守らなきゃなんだぞ!?」
「じゃあ思う存分嬲られて派手に散ってくださいませ」
「!!?」
「まぁ我が国最強の魔力と戦闘能力を誇る殿下が簡単に死ぬはずはないので杞憂だとは思いますがね。
お話が以上でしたらお話しはここまでに致しましょう。
コラルド帝国に到着するまでに私は休息を取りたいので」
言うや、会話を打ち切って目を閉じてすうすうと寝始めた侍女ソリュー。
言われるだけ言われて放置されたエヴァンスは、
「……側仕え仲間が、冷たい………」
そして帰りたいと小さく小さく呟き、さめざめと静かに泣いた。
これ以上騒いで侍女の睡眠妨害をした結果、
本当に馬車から放り出されるのが怖かったので。
※ ※ ※
(side:護衛達)
「おい」
「…なんだよ」
「……なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「…逆になんでお前はそんなに顔色が悪いんだ?」
「……だってお前。
レイブン伯爵家ってあの『拳神』とか『魔神』とかがいるコラルド帝国の最終兵器的な家だろ?」
「そうだな」
「しかも罪人護送中にうちの連中を吹っ飛ばしたのって御令嬢のお母上らしいし。
母親って、伯爵夫人ってことはさ?
法国から『死神』とか呼ばれているあの人だろ!?」
「そうだな」
「果たしてそんな人達から我らは殿下を守り切れるのかとか死ぬんじゃなかろうかとか!?
不安にならんの!!?」
「そうだな」
「……お前。なんでさっきからそうだな、しか言わんの?」
「だって何故そんなことを心配しているのか本気で分からん。
拳神?魔神?死神??
望むところではないか。
寧ろあわよくば。
あわよくばだぞ?
そんな生ける伝説達と手合わせができるかもしれない好機を何故お前は喜ばないのか。
本気で理解に苦しむ。
故にまともに会話する気がない」
「ヤベェ同僚が想像を遥かに超える戦闘狂だった」
「…はぁ。
兎も角今は護衛の任務中、集中しろ。
王家直属の近衛として足並みを揃えてコラルド帝国に入国することだけ考えていればいい。
着いたら、くく……お楽しみが待ってると思えば、疲れなど感じん」
早くお楽しみの瞬間になってほしいものだと真面目な顔してうっそりと笑う同僚に、話しかける相手を間違えたと話す前より遥かな疲労を滲ませた護衛その1がいたとかいなかったとか……。
本編以外興味のない方はスキップ推奨。
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(馬車の中・side:侍従and侍女)
「…………」
「…………」
「…そ、ソリュー…」
「…何ですかエヴァンス」
「今からでも同行を、じ、辞退できないかn」
「できません諦めてくださいませそれでもまだ貴方ひとりのために今更引き返せなどとふざけたことを抜かすようでしたら今すぐ締め殺して道端に投げ捨てて差し上げますがいかが致しますか?」
「っそんな食い気味に言わなくとも!
しかも真顔で瞬きなし息継ぎなしで怖いこと言わないでくれるかなぁッッ!?」
「恐れ多くも私ども仕えのものの為に馬車を一台追加して下さったアルフレッド殿下の好意を無下にするようなことを言うからです。
一体何を怯えることがあると言うのですか?
私達は殿下とルシェルディア様が正式にご婚約を許されるという素晴らしい瞬間を目にすることができるのですよ?」
「ソリュー…だ、だってあのレイブン伯爵家だぞ、コラルドの。
しかも殿下の話ではルシェルディア様はその、そ、相当ご家族様方から溺愛されていらっしゃるとか…。
そんなすんなり婚約できるのか!?
む、むしろ殿下とか護衛達とか俺とか俺とか伯爵家の皆様方に嬲り殺されるんじゃ!?」
「何故俺とか、などと連呼するのかわかりませんが…はぁ。
どちらかといえば嬲り殺されるのは殿下だけでしょう。
我々護衛や仕えの者らはあくまで付属品、おまけ、傍観者に過ぎないのです。
だから安心なさい、エヴァンス」
「全然安心できないんだけど!?
殿下は嬲り殺されてもいいの!?
俺っ、殿下の侍従だぞ!?いざという時には身を挺して守らなきゃなんだぞ!?」
「じゃあ思う存分嬲られて派手に散ってくださいませ」
「!!?」
「まぁ我が国最強の魔力と戦闘能力を誇る殿下が簡単に死ぬはずはないので杞憂だとは思いますがね。
お話が以上でしたらお話しはここまでに致しましょう。
コラルド帝国に到着するまでに私は休息を取りたいので」
言うや、会話を打ち切って目を閉じてすうすうと寝始めた侍女ソリュー。
言われるだけ言われて放置されたエヴァンスは、
「……側仕え仲間が、冷たい………」
そして帰りたいと小さく小さく呟き、さめざめと静かに泣いた。
これ以上騒いで侍女の睡眠妨害をした結果、
本当に馬車から放り出されるのが怖かったので。
※ ※ ※
(side:護衛達)
「おい」
「…なんだよ」
「……なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「…逆になんでお前はそんなに顔色が悪いんだ?」
「……だってお前。
レイブン伯爵家ってあの『拳神』とか『魔神』とかがいるコラルド帝国の最終兵器的な家だろ?」
「そうだな」
「しかも罪人護送中にうちの連中を吹っ飛ばしたのって御令嬢のお母上らしいし。
母親って、伯爵夫人ってことはさ?
法国から『死神』とか呼ばれているあの人だろ!?」
「そうだな」
「果たしてそんな人達から我らは殿下を守り切れるのかとか死ぬんじゃなかろうかとか!?
不安にならんの!!?」
「そうだな」
「……お前。なんでさっきからそうだな、しか言わんの?」
「だって何故そんなことを心配しているのか本気で分からん。
拳神?魔神?死神??
望むところではないか。
寧ろあわよくば。
あわよくばだぞ?
そんな生ける伝説達と手合わせができるかもしれない好機を何故お前は喜ばないのか。
本気で理解に苦しむ。
故にまともに会話する気がない」
「ヤベェ同僚が想像を遥かに超える戦闘狂だった」
「…はぁ。
兎も角今は護衛の任務中、集中しろ。
王家直属の近衛として足並みを揃えてコラルド帝国に入国することだけ考えていればいい。
着いたら、くく……お楽しみが待ってると思えば、疲れなど感じん」
早くお楽しみの瞬間になってほしいものだと真面目な顔してうっそりと笑う同僚に、話しかける相手を間違えたと話す前より遥かな疲労を滲ませた護衛その1がいたとかいなかったとか……。
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