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その40のその間  私、リリーさん……今、貴女の前にいるの①

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(コラルド帝国への道中)


「っくそ!くそくそくそ…っ!
外れろ!このォッ!!」

「五月蝿いぞ静かにしろ!」

「あんたこそうるっさいのよ!!
……あのクソ王弟ヤロウ…こんなものを私に取り付けるなんて信じられない!
私は!こんなところで!終わる女じゃないのよッッ!
さえなければこんな男どもなんて」


騎士らや自身を捕らえたスレイレーンの王弟に悪態を吐きながら
牢馬車内の床や鉄柵にガンガン腕輪を打ち付ける女。
髪を振り乱しながら取り憑かれたように腕輪を壊そうとするその様は異様で、
罪人特有のボロ衣の裾が捲れて際どいところまで露わになっているのに、まるで気にした素振りがないのは女としてどうなのか。
恥じらいはないのかと、騎士らからため息が漏れる。

「……全く、元が貴族令嬢などとはとてもでないが信じられないな。
ちなみに言っておくが、万が一その腕輪が外れたとしても無駄だぞ?
殿下の申し付けにより、
貴様よりも魔力が少ない者と魔法抵抗力が弱い者は今回の護送に関わっていない」

だから魅了できるなどとは夢にも思わん方がいい

そう告げる騎士団員らに対して、
ふざけんなぁッッ!と下品に喚き散らす罪人ー、ソフィア。
現在絶賛母国・コラルド帝国へ護送されている最中。

騎士らは女のあまりの下品さにげんなりしていた。

品のなさもさることながら口汚くこちらを罵るその顔は酷く醜悪で、
女性というより何処ぞの森深くに生息する未知の魔物のようだった。

女の態度に、期せずして騎士らの心は一致した。


(((さっさと送ってさっさと国に帰ろう))) と。

そんな時。


「あらあら…こんなところまで遥々何を運んでいらしたの、騎士様方?」

罪人以外の女の声が。

「「「!!??」」」

穀倉地帯を横切っている最中の為建物は殆どなく、
それ故に視界を遮るものがない。
こんなあけた場所に。
唐突に、ローブを被った女が現れたことに騎士らは驚愕した!


ローブのせいで顔は見えないものの、声・体つきを見ても護送中の罪人女とは格の違う品格を漂わせ、だというのに一切の気配なく突然姿を現したことから警戒値は最高レベルを突破。

「……淑女レディ
失礼だが貴女は一体何者だ?」

騎士の1人の言葉に、ローブの女は口元に弧を描く。

「ふふ…名乗るほどの者ではなくてよ、真面目な騎士様?
ただ私は…そちらでキーキーと小煩く鳴いているお猿さんに用がありますの」

「……っ仲間か!?」

護送中の罪人に用があるなど、脱走を手伝いに来た仲間か!?と
騎士らは一斉に剣を抜いて構える。

「……仲間?」


すると。

突然ぞわぁ…!と彼らの背に一斉に怖気が走った!
騎士の言葉を繰り返した彼女から、背筋の凍る気が発せれられた。

うふふ…とローブの女が笑う。

「ふ、ふふ…おかしいわ。
本当、おかしい。そのお猿さん、屑と仲間だなんて!
なんて………笑えない冗談なのかしら」

一瞬風に煽られ、ローブの裾から女の眼光が見えた気がした。
まるで人形のように綺麗で、虚なー…

「仲間だなんてあり得ないのだけどそうね、
その屑を私に頂戴な?
私ー…遊び甚振る相手がほしいの。

ねぇーー、ち ょ う だ ぁ い ??」

甘えるように語尾を伸ばして女が告げた直後ーー、

牢馬車の周囲にて構えていた騎士達が揃って吹っ飛んだ。


==========================================
続きます。

ラストに向けて復活しました!
基本“追放令嬢~”は完結まで1日おきくらいの更新で進んでいきます。
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