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神華と獅子王編

4話

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後半、性的な表現があります。
苦手な方は回避推奨。

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(とある侯爵屋敷)


きぃぃ…とかすかに音を立てて開いたベランダへ通じるガラス扉に、
ラガンは眉を盛大に顰めた。

ここは彼の寝室で、
就寝前で明かりが消えているせいか、部屋は暗闇に包まれている。
が、そんな中扉から忍ぶようにして姿を現した黒装束の獣人に、
彼の来訪を心待ちにしていただけに単身で現れたことに盛大なる不快感を露わにした。


「……何故荷物がないのだ」

「………申し訳」

ガシャン!


ベッドサイドに置かれたクリスタルオブジェを無造作に床に払い落として謝罪を遮る。

「もう一度、聞いてやろう。
何故。荷物がない?」

「…番であるギルドマスター代理の獅子獣人が常に荷物を手放さない故、
全く手が出ず。
こちらの監視の目にも気付いた為、一度引きましてございます」

「傲慢な肉食獣種め…!
それでお前は荷物をただ眺めるだけでそのまま放ってきたと。
使いすら碌にできんのか!!」

「………」

「なんとか言ったらどうなんだっ!?」

「そこまで言われるならご自分で荷を手に入れるがいいぞ侯爵」


突如現れたもう1人の人物に、
ラガンは苦虫を噛み潰した顔で黙り込んだ。

スラリと背の高いシルエット
暗がりの中では顔の造形まで判別することは難しいが、一つだけ。
そのたった一つの特徴だけは暗闇の中でも爛々と光彩を放っていた。

濡れて光るルビーのような、真っ赤な真っ赤な瞳。

それだけでラガンは男の正体を知り得た。


「その瞳……吸血種。
闇ギルドの長、散血ざんけつのヴェルナールか」

「ご名答。
しかしあまり役職名と名を呼ばれるのは好きではないのでご遠慮願いたい。
あと。子飼いとはいえ、あまりうちのギルド員を低賃金でこき使うのはやめていただきたい」

「…自分の子飼いをどう使おうと勝手であろうが。
寧ろ賃金を払ってやるだけ感謝して」

欲しいと続けようとしたラガンは、ぞわりと走った怖気に慌てて口を噤んだ。
桁違いの、魔力。
ただの人間が長時間濃密な魔力に威圧されればどうなるか、想像に難くないからだ。

「子飼いであろうがなんだろうが。
闇ギルドに名を連ねたその時からその者は私のものだ。
勝手に使うなぞ本来なら許されぬよ。
その者がスラムから拾われた恩義とやらを私に告げていなければ。
貴様はとっくに乾いた干物だぞ?侯爵」

「っ」

「だがしかし。
使、王妃様の為の荷物と聞く。
かの方が快癒されるのであればこちらとても部下が一度受けた依頼。
完遂はしてやろう。

だがーー…ゆめゆめ忘れるなよ侯爵、この依頼はと」

「……っわかった!ちゃんと貴様らの正規依頼分は支払うと約束しよう」

「ふむ。最低条件は果たしたな。
では依頼を遂行するとしようか。
さぁ、帰ろうか?」

「…御意」

「ではな、侯爵?
次はちゃんと報酬を用意しておいてくれよ」

ーじゃないと次こそ干物が出来上がることになるからなーー

赤い瞳を細めていうや、カカと笑い闇に消えた。

気付けば黒装束の獣人も姿はなく、ガラス扉もしっかりと閉まっている。

「……化け物が。
ふん、まぁ予想外の大物がきたが寧ろ良かったのかも知れん。
これで荷物が届くのだからな」


ラガンは知らずかいていた汗を乱暴に寝巻きで拭うと、
贅を尽くした寝台へとぼすん、と身を投げた。


※  ※  ※


「……真実を知らず欲に目の眩んだ人間は実に滑稽で哀れだねぇ。
金の成る木に金欲を刺激され、王妃を快癒させようとは。
はは!
王妃が快癒したら真っ先に死ぬだろうなぁ」

「主様を化け物などと。
もう恩も義も消え失せました。
あの男…消しましょう」

「ふふ、まぁそう猛るなルルド。
さぁさ、あんなチンケな人間のことなど忘れて私にお前の翼を見せておくれ」

「…お見苦しいものを」

「私のものが見苦しい、と?」

「っいえ!私の元より持っている方が、です。
しかし、わかりました」


バサ…!


跪いた獣人の背中に広がる翼。
通常一対の鳥翼なはずのそれは酷く歪で。
片翼は鳥のもの、そして片翼はー蝙蝠。
貴族屋敷の屋根の上で広げられたそれに指を滑らせてうっとりと目を細めながら、
赤目の男は笑う。

指を這わされた獣人の男も翼をふるりと振るわせてうっとりと主たる赤目の男を見上げ。

「ああ、綺麗にね!
やはりお前にはこちらの方が合っている。
ふふ…翼を触らせてくれたご褒美だ。お飲み」

翼を触るのとは反対の手の指腹を長い自身の爪でピッと切ると、
獣人の男の口元に持っていき……

「…ぁあっ…」

はぁ…と興奮したように指から流れ落ちる真っ赤な血液へと
獣人男ールルドは必死に舌を伸ばした。

垂れた血液では足りないとばかりに指へと舌を這わせて勃起するルルドを、
ヴェルナールは恍惚とした様子で嗜虐的に見下ろしていた。

「さてはて、荷物はあの獅子王の番か。
全く厄介な仕事を引き受けてくれたこと。
あの獅子王との敵対はあまりしたくないのだが、…まぁいいか。
しかし荷物が私の目に叶うものならば…少し手元に置くのも悪くはないかな?」

「ぅぁあッッ」

銀色の長い髪を風に靡かせながらそう独りごちた吸血鬼は、
ぐり…と未だ自身の指を舐めしゃぶって発情している鳥獣人の股間を踏みつけると髪を鷲掴み、
身を屈めて己の血に濡れる唇にねっとりと吸い付いた。

「あぅじ、ひゃ、ま……あ、んふ」

「……ふ、本当にお前は可愛いねルルド。
仕事が片付いた暁にはもう片翼も捥いで、生やしてやろうね。
…そぉら、もっと舌をお出し」

くちゅくちゅと水音が激しさを増し、
禍々しい魔力と共に、酷く淫蕩な香りが風に乗って侯爵屋敷から上空へと流れていった。



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何やらエロくてダークな新キャラ(主従)が誕生してしまいました。
(いろんな意味で)コーキ君ピンチ??
次回もお楽しみに~♪( ´▽`)
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