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神華と獅子王編
3話 ジレウス視点
しおりを挟むお待たせしました、久しぶりの更新です!
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夜が明けてーー
腕の中ですぅすぅと寝息を立てている番の顔をたっぷりと堪能しつつ、
心中で、またやっちまったなぁと反省する。
番ってからこっち、本当に我慢が利かないのだ。
毎晩ではないにしても、
夜に安心しきった甘えた顔で微笑まれると、どうしても致したくなるのは新婚の夫の性だろうと誰にともなく言い訳をしてみるも、鬼畜なことには違いなく。
(どうしたもんかなぁ)
これでは早晩、コーキが身体を壊してしまうのでは?と密かに頭を抱えていると、
腕の中の存在が身動ぐ。
ゆっくりと大きな目を開閉したのち、
「ジレウス……?」
と真っ先に自分の名を呼ぶ愛しの番に、
「おはようコーキ。飯にするか!」
仕様もないことで頭を抱えていたことなど遥か彼方へと投げ捨てて、
ニカっと心から笑う自分は現金な奴なのだろう。
そうして笑みを返してくれるコーキをみて、
きっと今日もいい日になるぞと気分を上げるのだった。
※ ※ ※
とはいえ。
最近どうにも気がかりなことがある。
妙な視線を感じるのだ。
仕事をしている時やギルド内にいる時はまだ理解できる。
ギルマス代理である自分や小綺麗なコーキはギルド内では結構目立つ存在だからだ。
しかし、コーキの採取依頼に付き合っている時も、帰る時も、ましてや昨晩に至っては夜中コーキと致している時まで視線を感じたのはどう考えてもおかしい。
つい苛立って最初から手酷く抱いてしまったのは反省すべきところだが。
だがいずれにせよ全てが同種の視線。
ねっとりとまとわりつくようなタチの悪いものだけに、
放置は考えられない。
現に昨日はどうやらコーキすらその視線を感じ取ったようだった。
(……もしや国、か?)
自分達ー、主にコーキを監視する可能性が最も高いのは国の諜報だろうという考えはあった。
何せコーキの種族は伝説と呼ばれるほどの絶滅危惧種扱い。
伝記などで伝わる能力もかなりのものなだけに、
報告があがった以上調査に人が張り付いてもおかしくはない。
だが調査というにはーー
(……気持ち悪ぃな。どこのどいつだ)
視線が粘着質すぎる。
これは国へ上げた情報が裏の、後ろ暗い類の組織に流れたと考える必要もあるなと警戒を強めた。
もしこの視線の主が誰ぞに依頼されてコーキを拐おうなどと考えているのであれば。
(全員素っ首叩き切ってやる)
獅子のーー否、番を奪うという行為は世界で一番の重罪。
奪った相手はどこの誰であれ、例え国王その人であったとしても。
復讐や殺したところで罪にはならない。
足腰が立たず、執務室で代理の仕事に励む俺の膝に大人しく座って本を読んでいるコーキは、
今この時でさえ感じる視線には気付いた様子はない。
おそらく窓の外からなんらかの魔法かスキルでこちらを覗いているのだろうが。
(絶対にコーキを側から離さん。
それでも奪いにくるというのなら覚悟するんだな?)
次第に昨晩の疲れからかうとうとと舟を漕ぎ出したコーキの頭を自分の胸にもたれさせつつ、
ギラリと窓の外を睥睨した。
窓の外にある木の枝に止まっていた一羽の鳥が、
慌てて飛び立ち視界から消えるまでじっと睥睨し続けた。
ーー鳥が完全に去り這いずる視線が消えた後。
「せっかくのいい日が台無しだ鳥やろう」
(昔のツテを使って探りを入れてみるか…)
気が進まんがなぁ。
そう独りごちて、デスクに処理済みの書類をトントンとまとめて置くと、
完全に寝入ってしまったらしいコーキを起こさぬよう大事に抱え直して部屋を後にした。
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