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第二章 帝国編
閑話 胎動
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ールード達が秘密の茶会を開催しているその頃ー
side:???
とある部屋の扉の下ー…
僅かな隙間に差し込まれていたその手紙をそっと手に取る。
ぎいぃぃぃ………
軋みを立てて揺り籠のように揺れるロッキングチェアに身を沈ませて、
手に持つそれの封を切り中身を確認する。
目を走らせた文面が示す内容に少し考える素振りを見せたものの、
表情は変わることがない。
ここまできて慌てるくらいならば、初めから来ていないのだから。
手紙を封筒にしまい、チェア脇にあるサイドテーブルでゆらゆらと揺らめく
証明代わりの蝋燭の火をそれに移す。
火は瞬く間に手紙を覆っていき、持つ場所がなくなるギリギリまで燃やされた後、
紅茶を飲んだあと空になったカップの中に放られた。
焦げ残った紙片が微かに残った紅茶を吸ってふやけて溶けると、
辺りに僅かに甘い香りが漂う。
すん……と鼻を鳴らしてその甘い空気を吸うと、
口の端を引き上げる。
今や唯一の自信の源となったその香りが、ここでの自分の支えとなっていた。
依存してしまっていると気づいていても、
今となっては自身からそれを切り離すことは考えられないほどに。
(あの男の思うがままに動くのは業腹だが……)
背に腹は変えられない。
元より自分に選択肢などなかった。
そうするより他に手立てが。
何度も何度も悩んで、それでも行動に移すことを決めたのは自分自身。
それがどのような結果を周囲に齎そうとも、知ったことか。
本日白磁宮から出された知らせー…
自分の仕事は数日後に開かれるそれへ参加する、それだけだ。
たったそれだけで、望みを叶えるとあのお方が約束して下さった。
あの男に脅かされた日常を、あの方が取り戻してくれる。
それさえ守ってもらえるのなら、
自分はどうなっても構わない。
これからの人生で得ることのできたかもしれない喜びも、幸せも。
全部全部……全てどうでもいい。
願うのはただ、望みが守られることだけ。
チェアから立ち上がり、ベッドを目指す。
ふかふかと柔らかいそれに身を横たえ沈ませると、ゆっくりと目蓋を閉じた。
意識が闇に溶けていくのを感じながら、
しかし少し楽しみでもある、と、先程自身が抱いた投げやりな思いを少しだけ否定してみる。
それがどれほどの効果を齎すのか、何も齎さずともそれはそれでいい。
でも本当に聞いた通りの効果を齎らしたならばー……
今や何の色もない自分の人生の最期に、少しは華を添えてくれることだろう
………………………………………………………………………………
ー帝都・とある屋敷ー
side:???&???
『手紙は確かに渡したのだろうな』
『ほっほ、ご安心を。
ちゃあんとわしの可愛い孫がお部屋に届けておきましたよ』
『ならばいい』
『ほっ!ほんに疑り深いお方ですなぁ、貴方様は。
そんなに警戒せずともアレは素直に役目を果たしましょう?』
『事が事だ。
こういった機会が巡ってくるのをどれほど待っていたと思う。
………お前の如き薄汚れた老人には理解出来んだろうが、な』
『貴き御方方の深慮に思いを巡らせるなどとてもとても……。
ですが、もう一人の方はよろしいので?』
『所詮は少し大きくなっただけの子供……どうとでもなるわ。
それに、もういい具合なのだろう?』
『へぃ、それはもう……ほっほっ!!』
『ならば放っておけ。
また暫くすれば自分から強請りに来るのだから』
『宮仕えも大変であられますなぁ……』
『本当にな……面倒な事この上ない。
が、もうすぐそれも………』
屋敷の窓の外に広がる夜の暗闇を、
男は満足げに目を細めながら。
そしてもう一人の老人は奇妙な笑みを浮かべて、暫しの間眺めていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※色々と、不穏な気配漂う一話でした!
もう一本の閑話は明るいものとなる予定っす(*'▽'*)
明日もまた、お楽しみに~♪
side:???
とある部屋の扉の下ー…
僅かな隙間に差し込まれていたその手紙をそっと手に取る。
ぎいぃぃぃ………
軋みを立てて揺り籠のように揺れるロッキングチェアに身を沈ませて、
手に持つそれの封を切り中身を確認する。
目を走らせた文面が示す内容に少し考える素振りを見せたものの、
表情は変わることがない。
ここまできて慌てるくらいならば、初めから来ていないのだから。
手紙を封筒にしまい、チェア脇にあるサイドテーブルでゆらゆらと揺らめく
証明代わりの蝋燭の火をそれに移す。
火は瞬く間に手紙を覆っていき、持つ場所がなくなるギリギリまで燃やされた後、
紅茶を飲んだあと空になったカップの中に放られた。
焦げ残った紙片が微かに残った紅茶を吸ってふやけて溶けると、
辺りに僅かに甘い香りが漂う。
すん……と鼻を鳴らしてその甘い空気を吸うと、
口の端を引き上げる。
今や唯一の自信の源となったその香りが、ここでの自分の支えとなっていた。
依存してしまっていると気づいていても、
今となっては自身からそれを切り離すことは考えられないほどに。
(あの男の思うがままに動くのは業腹だが……)
背に腹は変えられない。
元より自分に選択肢などなかった。
そうするより他に手立てが。
何度も何度も悩んで、それでも行動に移すことを決めたのは自分自身。
それがどのような結果を周囲に齎そうとも、知ったことか。
本日白磁宮から出された知らせー…
自分の仕事は数日後に開かれるそれへ参加する、それだけだ。
たったそれだけで、望みを叶えるとあのお方が約束して下さった。
あの男に脅かされた日常を、あの方が取り戻してくれる。
それさえ守ってもらえるのなら、
自分はどうなっても構わない。
これからの人生で得ることのできたかもしれない喜びも、幸せも。
全部全部……全てどうでもいい。
願うのはただ、望みが守られることだけ。
チェアから立ち上がり、ベッドを目指す。
ふかふかと柔らかいそれに身を横たえ沈ませると、ゆっくりと目蓋を閉じた。
意識が闇に溶けていくのを感じながら、
しかし少し楽しみでもある、と、先程自身が抱いた投げやりな思いを少しだけ否定してみる。
それがどれほどの効果を齎すのか、何も齎さずともそれはそれでいい。
でも本当に聞いた通りの効果を齎らしたならばー……
今や何の色もない自分の人生の最期に、少しは華を添えてくれることだろう
………………………………………………………………………………
ー帝都・とある屋敷ー
side:???&???
『手紙は確かに渡したのだろうな』
『ほっほ、ご安心を。
ちゃあんとわしの可愛い孫がお部屋に届けておきましたよ』
『ならばいい』
『ほっ!ほんに疑り深いお方ですなぁ、貴方様は。
そんなに警戒せずともアレは素直に役目を果たしましょう?』
『事が事だ。
こういった機会が巡ってくるのをどれほど待っていたと思う。
………お前の如き薄汚れた老人には理解出来んだろうが、な』
『貴き御方方の深慮に思いを巡らせるなどとてもとても……。
ですが、もう一人の方はよろしいので?』
『所詮は少し大きくなっただけの子供……どうとでもなるわ。
それに、もういい具合なのだろう?』
『へぃ、それはもう……ほっほっ!!』
『ならば放っておけ。
また暫くすれば自分から強請りに来るのだから』
『宮仕えも大変であられますなぁ……』
『本当にな……面倒な事この上ない。
が、もうすぐそれも………』
屋敷の窓の外に広がる夜の暗闇を、
男は満足げに目を細めながら。
そしてもう一人の老人は奇妙な笑みを浮かべて、暫しの間眺めていた。
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※色々と、不穏な気配漂う一話でした!
もう一本の閑話は明るいものとなる予定っす(*'▽'*)
明日もまた、お楽しみに~♪
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