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第一章  出会い編

第15話  ガドの奮闘〜狂わすもの〜

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「此処が?」

「ええ、内密とのことでしたので。ご不満ですか(文句あるか、あ?)」

「(おおぅ、副音声復活!)いや、いい。全く持って不満も問題もない」

「ふふ…それは重畳、では。」

「ああ」


話し合いと参りましょうか
そう互いに頷いて足を踏み入れたのは王都の貴族街を抜け、城下街に軒を連ねる宿屋の一つ。

宿屋『ガラクの宿』
という名の看板を掲げた、一際小さいその宿はおそらく個人経営なのだろう。ボロくはないが決してしっかりとした作りとは言えず、どう考えても城勤の役職付きが利用するような宿には思えない。

「いらっしゃいませぇ~!!……ってアレ?ロイさんだ!こんにちわ~!!」

「ああこんにちわジェシー。お部屋、空いてるかい?二部屋欲しいんだが。」

「もぉ~、ロイさんったらうちが年中空き部屋多いの知ってるくせに!当然空いてますとも!!」

コロコロと表情を変えながら宿帳の準備に勤しむ明るく元気な少女(ジェシーというらしい)を微笑ましげに眺めるロイドの眼差しは温かい。が、その眼差しは

(何だか…何かを必死に思い出そうとしているような)

そんな感想を俺に抱かせるものだった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ー ガラクの宿最奥の一室 ー


「さて、ガド殿?そろそろお話とやらを聞かせていただけませんか?」


「ああ、わかっている。」


訳もわからず振り回されているように感じるのだろう(ま、そりゃそうだわな)。ロイドの表情は先程とは打って変わり硬く、微かに苛立ちが透けて見える。遠回しは逆効果だと判断した俺は、本題をそのままぶっ込むことにした。


「ロイド殿、いやロイド。あんた…、誰かさんに思考誘導を受けてるぜ?」



「………。は、はは!ここまで手間をかけさせられてなにを言い出すのかと思えばっっ!!
馬鹿馬鹿しい…」


「馬鹿馬鹿しく聞こえようが何だろうが事実なんだよロイド」

「思考誘導などと、何を世迷言を。そんなことは不可能です!不肖、父の代より宰相の役を果たしてきた身なればこそ、会話や交渉ごとに置いてそのような」

「やめろロイド、時間の無駄だ。俺がそういう意味で言ってるんじゃあないことは分かってんだろ?」

「……。」


自身が何者から何かをされておかしくなっているー

そんなことを突然言われれば
当然冗談と笑うだろう。
身に覚えもないことを言われ、いい加減なことを言うなと怒るだろう。
現にロイドは笑ったし怒った。
しかし ー…そのアメジストの瞳に大きな揺らぎが生じたのを、
俺は見逃さなかった。

(おそらくは『無自覚に』自分でも違和感を感じてんだろうな…。だが、9年間“この状態”にあったなら…には骨が折れるな)


そう。
によって為された思考誘導を解く方法はただ一つ。本人に『現実』をしっかりと自覚させること。簡単な忠告や指摘では、自覚に至るまでに足らないし、また自覚できなくなる。アレはそういう厄介極まりない類の物なのだ。



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