12 / 161
第一章 出会い編
閑話 side:ルード〜未知との遭遇③〜
しおりを挟む
今自分の目の前にいるこれは、本当に人間なのだろうか
※奇しくもその時ルードが抱いた感想は、シェイラと同じものだったが本人達が知るはずもない(内容は全くの別物である)
確かに二本足があり立っているからには人間なのだろうが、何せここは奇妙すぎる森の中。未だ見たことのない生物が生息していないとも限らない。赤茶けたボサボサの長い髪からあまり顔がはっきりと判別できない。
(取り敢えず…暗殺の類いでなければ良いが……。試してみるか)
ここにきて自身の中で一気に警戒レベルを上げた俺は知らず腰元に帯びる愛剣に手を伸ばし、
『何者だ』
カリス帝国の主国語であるルキア語で敢えてそれに問いかけた。これで帝国関連の人間ならば何かしら反応をー……
『初めて、それもこのようなところであった無防備且つ曲がりなりにも女性に対して。
ご立派な剣にお手をかけられ脅すようにお声を掛けられる貴方様はさて、それこそ“ナニ様”なのでしょう?』
『…』
反応が返ってきたのは良い。思いもかけず高く澄んだ声からそれが人間の女性であることもわかった上、口から発せられた言葉は俺と同じルキア語。がしかし、その内容に強烈な毒が含まれているように感じるのは俺の被害妄想か?
続いて
『きっとさぞかしご立派で高貴な身分のお方なのでしょう(ほんと偉そう)
ええ、そうに違いありませんわ、何せアルギス語が主のトリアドス王国領地内で出会った人間に対してかけられたお言葉がルキア語!(自国の言葉しか認められないとでも?郷に行ってはなんとやら、他国に足を踏み入れる際にその主国語の簡単な挨拶すら出来ないとは)
さぞ御身の母国語に誇りを持っていらっしゃるのでしょう!(ふん、お里が知れるな)』
『……!!』
やはりだ。会話が全て嫌味の副音声付きで聞こえる。思わず固まってしまった俺だが、徐々に笑いがこみ上げてきた。女に知られぬよう片手で口を覆い隠すが、身体の震えがどうにも御し難い。
何せこのような強烈な会話(副音声付き)を面と向かって言われたことなど皇帝に立して以来一度もない。
更に言えば、子供の頃ならいざ知らず、今は自身の容姿が他人に評価されるのか嫌というほど自覚している。
成人して22歳となる現在まで称賛や耳障りの良い言葉ばかり女性から聞かされてきた身としては、この扱いは斬新すぎる。
言ってしまえば、小気味いいのだ。
(…な、何か、続けなければ!)
『……先ほどからの発言から鑑みるに、つまり俺の態度や発言が不満で不愉快、と?』
そう言いたいんだろう?と問うと
『まぁ!そんな不満で不愉快だなどと(分かってんじゃねぇか)!
私は素晴らしい身なりの高貴なお方には私など理解の及ばない崇高なこだわりをお持ちなのではと愚考しての発言ですわ(本当に高貴な身分なら挨拶における一般常識くらい承知済みでは)?私の発言にご不快を感じられたのなら謝罪いたしますわ(こんな小娘の嫌味くらいで切れるほど安い神経してないよな?)』
トドメの、ドヤ顔。しかし前髪が邪魔でまるでドヤ顔をする意味がない。
『…そう、か。いや、……うむ…』
(だ、駄目だ俺!耐えろ、!耐え抜け!!ここで折れ(笑っ)たら何かに、何かに負ける気がするっっ…)
しかし。嗚呼、最早俺の腹筋と表情筋が限界だ。尋常でない震えは隠しようもない、
で。
『……くっっもう、駄目だっっ……。耐えられない……っっ!!』
『……あの、もしやどこかお加減でも悪』
はい限界突破。
『『ぶはっっ!!!』』
「は?」
『『あっははははははははははははははっっ!!!!』』
(………くそ、負けた。(何かに)それとガドよ、お前もか……。)
※奇しくもその時ルードが抱いた感想は、シェイラと同じものだったが本人達が知るはずもない(内容は全くの別物である)
確かに二本足があり立っているからには人間なのだろうが、何せここは奇妙すぎる森の中。未だ見たことのない生物が生息していないとも限らない。赤茶けたボサボサの長い髪からあまり顔がはっきりと判別できない。
(取り敢えず…暗殺の類いでなければ良いが……。試してみるか)
ここにきて自身の中で一気に警戒レベルを上げた俺は知らず腰元に帯びる愛剣に手を伸ばし、
『何者だ』
カリス帝国の主国語であるルキア語で敢えてそれに問いかけた。これで帝国関連の人間ならば何かしら反応をー……
『初めて、それもこのようなところであった無防備且つ曲がりなりにも女性に対して。
ご立派な剣にお手をかけられ脅すようにお声を掛けられる貴方様はさて、それこそ“ナニ様”なのでしょう?』
『…』
反応が返ってきたのは良い。思いもかけず高く澄んだ声からそれが人間の女性であることもわかった上、口から発せられた言葉は俺と同じルキア語。がしかし、その内容に強烈な毒が含まれているように感じるのは俺の被害妄想か?
続いて
『きっとさぞかしご立派で高貴な身分のお方なのでしょう(ほんと偉そう)
ええ、そうに違いありませんわ、何せアルギス語が主のトリアドス王国領地内で出会った人間に対してかけられたお言葉がルキア語!(自国の言葉しか認められないとでも?郷に行ってはなんとやら、他国に足を踏み入れる際にその主国語の簡単な挨拶すら出来ないとは)
さぞ御身の母国語に誇りを持っていらっしゃるのでしょう!(ふん、お里が知れるな)』
『……!!』
やはりだ。会話が全て嫌味の副音声付きで聞こえる。思わず固まってしまった俺だが、徐々に笑いがこみ上げてきた。女に知られぬよう片手で口を覆い隠すが、身体の震えがどうにも御し難い。
何せこのような強烈な会話(副音声付き)を面と向かって言われたことなど皇帝に立して以来一度もない。
更に言えば、子供の頃ならいざ知らず、今は自身の容姿が他人に評価されるのか嫌というほど自覚している。
成人して22歳となる現在まで称賛や耳障りの良い言葉ばかり女性から聞かされてきた身としては、この扱いは斬新すぎる。
言ってしまえば、小気味いいのだ。
(…な、何か、続けなければ!)
『……先ほどからの発言から鑑みるに、つまり俺の態度や発言が不満で不愉快、と?』
そう言いたいんだろう?と問うと
『まぁ!そんな不満で不愉快だなどと(分かってんじゃねぇか)!
私は素晴らしい身なりの高貴なお方には私など理解の及ばない崇高なこだわりをお持ちなのではと愚考しての発言ですわ(本当に高貴な身分なら挨拶における一般常識くらい承知済みでは)?私の発言にご不快を感じられたのなら謝罪いたしますわ(こんな小娘の嫌味くらいで切れるほど安い神経してないよな?)』
トドメの、ドヤ顔。しかし前髪が邪魔でまるでドヤ顔をする意味がない。
『…そう、か。いや、……うむ…』
(だ、駄目だ俺!耐えろ、!耐え抜け!!ここで折れ(笑っ)たら何かに、何かに負ける気がするっっ…)
しかし。嗚呼、最早俺の腹筋と表情筋が限界だ。尋常でない震えは隠しようもない、
で。
『……くっっもう、駄目だっっ……。耐えられない……っっ!!』
『……あの、もしやどこかお加減でも悪』
はい限界突破。
『『ぶはっっ!!!』』
「は?」
『『あっははははははははははははははっっ!!!!』』
(………くそ、負けた。(何かに)それとガドよ、お前もか……。)
5
お気に入りに追加
9,663
あなたにおすすめの小説
敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
魔族 vs 人間。
冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。
名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。
人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。
そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。
※※※※※※※※※※※※※
短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。
お付き合い頂けたら嬉しいです!
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
死んだ日の朝に巻き戻りしました ら、溺愛生活がリスタート?
ピコっぴ
ファンタジー
婚約者に裏切られ、家族に見限られ、絶望の中、飛び込みをした⋯⋯
ら、泳げる者は入水自殺は無理なのだと判る
まして、我が血族は精霊術で名を上げた名家
水霊が私を死なせなかったし、あまりの苦しさに藻搔いて、岸に辿り着いてしまった
結局、本当のところ、死にたい訳ではなかったのだ
それがわかったので、なんとか生き直そうと思った矢先、事故で死んでしまった
愚かな自分に泣けてくるけど、その涙を流す身体ももう動かない
精霊の導きであの世へ⋯⋯ と、思っていたのに、目が覚めたら、投身自殺した当日の朝に戻っていた?
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?
氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、
「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる