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第二章 入学編
ep.1 旅立ちと別れ
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大鬼の大群から悪魔女王との壮絶な戦いがあってから、早5年の月日が流れた。
ティリスは今年で15歳を迎える。
この5年で変わった事が多くあった。
先ずは魔力量の強化、これは毎日の様に魔力を行使し続けた結果、最初の1年は魔力痛に悩まされたが、その後は全く痛む事なく順調に魔力量の底上げをする事ができた。
次にサラだが、王都に戻ったあの後は、凄い怒られたそうだ…。
そら、年頃の女性が帰って来たら右片腕が無くなっているとか、普通の親なら卒倒ものだろうが、そこは騎士の家系もあってか、雷は落ちても妥協されるぐらいの器量の大きさを伺える。
しかもシスティーヌ家といえば、王都でも5本の指に入るほどの名家らしく、今は政務に終われ冒険をしてた時よりもイキイキとしていると1年程前に聞いた。
アスカさんも、剣を置き手には筆を持ち、文字通りサラの右腕としてお世話を続けている。
悪魔女王に負けてからこの5年、奴が飛び去って、どこかに身を伏せているのか、情報が一切入ってくる事は無かった……
また、同じ様な事が起きない様に、ティリスはサラに頼みシスティーヌ家の財力・情報源をフル活用させ英霊石を探しだしてもらったが、それでも、2年の歳月を掛けて見つけてもらえた。
ティリスは風の精霊と契約を結び、この時代、初めての魔法使いとなったが、まだ一部の者しか知らない。
◆◆◆◆
ある晴れた朝だった……それは、いつもの様に修行をしていた時の事だった。
「お兄ーーーちゃん!!!」
10歳になるラミナは、背も伸び、ショートだった髪はこの5年で肩に掛かる程に伸びていた。
身内贔屓と言われるかも知れないが、どこに出しても恥ずかしくない程に、可愛く美人に成長してくれている。
青の髪は親父似、美人で優しい目をしているのが母親似だった。
この5年で1番に変わった事がある。
それは、ラミナが8歳になった頃から俺への呼び名が、『にいに』から『お兄ちゃん』へと変わってしまった事だ。
なんでも、村の男友達に馬鹿にされたみたいで、もう呼ぶのが恥ずかしいみたいなのである。
一時は、その友達を注意しようかと思ったが、お兄ちゃんも有りだなっと思い止まった。
「ちょっと! お兄ーーちゃん!! おーーい! 聞こえてる?」
俺の目の前で、顔の辺りを手で上下にブンブンと動かし、様子を見ていたラミナに、我に返ったティリスは何の用事かと聞いた。
「お兄ちゃん、忘れたの? 今日、王都に旅立つ日でしょ? サラお姉ちゃんの屋敷の人がムトンダさんの家に迎えに来てるよ」
何度かサラの屋敷には、お世話になっている。
そして、今回もお世話になるのだが、長期の旅立ちになりそうで、それを色々と工面してくれたシスティーヌ家には頭が当分上がりそうにない状況だった。
「そうだった、呼びに来てくれてありがとう。行こうか」
2人は村長のムトンダの家へと向かう。
「ティリス! 何しとったんじゃ! お客様をお待たせしおってからに」
「すいません、皆さん」
頭を下げるティリス
「いや、大丈夫だティリス君」
今回、迎えに来てくれたのはアスカだった。
「お久しぶりですアスカさん、サラさんの容態はどうですか?」
「あぁ、やはりまだ傷は疼くと仰られる……それでも、痛いなどと一言も言われず、政務に忙しくされているよ」
「さすが、サラさんらしいですね」
2人は、クスッと笑った。
「おっと、長話をしている場合では無かった、ティリス君、少し急ぎたいのだが準備は出来ているか?」
ティリスは皮袋を見せ
「いつでも、準備万端です♫」
ふふんっと、ドヤ顔をする。
「やはり便利だな、その皮袋とやらは」
「よかったら、作りましょうか?」
「ほほはほ、本当か!!」
「えぇ、王都に着いたら作っておきますよ」
「約束だぞティリス君!!」
興奮が抑えきれないのか、後ろについた尻尾がブンブンと振っている様に見える。
突如、ムトンダの家の入り口が開き『ちょっとアスカさん、そろそろ急いで下さいよ』っと、外にいる方達に怒られるてしまった。
「……っん、ゴホン! ではティリス君、出発しようか」
「分かりました」
「寂しくなるの~」
ムトンダは少し昔の事を思い出していた。
「ムトンダさん、本当にお世話になりました。両親を早くに亡くした俺達を見守ってくれて……ここまで、成長出来たのはムトンダさんのお陰です。本当の親父の様に思ってますよ」
「ばっきゃもーーん!! 今生の別れじゃないんじゃ……ワシを泣かしてどうするつもりじゃ~ー」
涙が止まらないムトンダを奥さんは優しく抱きしめる。
「そうよ、ティリス君、いつでも帰って来なさいね。ここは貴方の家でもあるのよ」
「ありがとうございます。お母さん」
ニッと笑うティリスだった。
そして、ラミナはと向き直る。
「ラミナ、俺はこれから王都へ旅立つ……3年は帰って来れないだろう、ラミナの成長を見守れなくてゴメン」
「お兄ちゃん! わたし寂しくないよ…だって、3年ぐらいでしょ? 全然、待てるよ……それにドルイドさんや、村のみんなが居るからね、次会った時はもっと美人になってお兄ちゃん気付かないかも」
「バカやろ、お兄ちゃんパワーを舐めんなよ! 直ぐに見つけてやるよ!」
2人は涙を流し、ティリスはラミナの頭に手をポンっと置いた。
「直ぐに帰る、体には気をつけるんだぞ」
「うん……っ、ありがとう」
ラミナは唇を噛み、今から出発をしようとする兄に気をつかわせない様に、気持ちを押し殺す。
「アスカさん、お待たせしました、出発しましょう」
「あぁ……うっううぅぅぅ」
アスカはもらい泣きをしていた。
ティリスはラミナ、村長夫婦、村の皆んなに総出で送りだしてもらい、一行は王都へと向かう。
旅立ったあと、ラミナが号泣していた事を知る由は無かった。
ティリスは今年で15歳を迎える。
この5年で変わった事が多くあった。
先ずは魔力量の強化、これは毎日の様に魔力を行使し続けた結果、最初の1年は魔力痛に悩まされたが、その後は全く痛む事なく順調に魔力量の底上げをする事ができた。
次にサラだが、王都に戻ったあの後は、凄い怒られたそうだ…。
そら、年頃の女性が帰って来たら右片腕が無くなっているとか、普通の親なら卒倒ものだろうが、そこは騎士の家系もあってか、雷は落ちても妥協されるぐらいの器量の大きさを伺える。
しかもシスティーヌ家といえば、王都でも5本の指に入るほどの名家らしく、今は政務に終われ冒険をしてた時よりもイキイキとしていると1年程前に聞いた。
アスカさんも、剣を置き手には筆を持ち、文字通りサラの右腕としてお世話を続けている。
悪魔女王に負けてからこの5年、奴が飛び去って、どこかに身を伏せているのか、情報が一切入ってくる事は無かった……
また、同じ様な事が起きない様に、ティリスはサラに頼みシスティーヌ家の財力・情報源をフル活用させ英霊石を探しだしてもらったが、それでも、2年の歳月を掛けて見つけてもらえた。
ティリスは風の精霊と契約を結び、この時代、初めての魔法使いとなったが、まだ一部の者しか知らない。
◆◆◆◆
ある晴れた朝だった……それは、いつもの様に修行をしていた時の事だった。
「お兄ーーーちゃん!!!」
10歳になるラミナは、背も伸び、ショートだった髪はこの5年で肩に掛かる程に伸びていた。
身内贔屓と言われるかも知れないが、どこに出しても恥ずかしくない程に、可愛く美人に成長してくれている。
青の髪は親父似、美人で優しい目をしているのが母親似だった。
この5年で1番に変わった事がある。
それは、ラミナが8歳になった頃から俺への呼び名が、『にいに』から『お兄ちゃん』へと変わってしまった事だ。
なんでも、村の男友達に馬鹿にされたみたいで、もう呼ぶのが恥ずかしいみたいなのである。
一時は、その友達を注意しようかと思ったが、お兄ちゃんも有りだなっと思い止まった。
「ちょっと! お兄ーーちゃん!! おーーい! 聞こえてる?」
俺の目の前で、顔の辺りを手で上下にブンブンと動かし、様子を見ていたラミナに、我に返ったティリスは何の用事かと聞いた。
「お兄ちゃん、忘れたの? 今日、王都に旅立つ日でしょ? サラお姉ちゃんの屋敷の人がムトンダさんの家に迎えに来てるよ」
何度かサラの屋敷には、お世話になっている。
そして、今回もお世話になるのだが、長期の旅立ちになりそうで、それを色々と工面してくれたシスティーヌ家には頭が当分上がりそうにない状況だった。
「そうだった、呼びに来てくれてありがとう。行こうか」
2人は村長のムトンダの家へと向かう。
「ティリス! 何しとったんじゃ! お客様をお待たせしおってからに」
「すいません、皆さん」
頭を下げるティリス
「いや、大丈夫だティリス君」
今回、迎えに来てくれたのはアスカだった。
「お久しぶりですアスカさん、サラさんの容態はどうですか?」
「あぁ、やはりまだ傷は疼くと仰られる……それでも、痛いなどと一言も言われず、政務に忙しくされているよ」
「さすが、サラさんらしいですね」
2人は、クスッと笑った。
「おっと、長話をしている場合では無かった、ティリス君、少し急ぎたいのだが準備は出来ているか?」
ティリスは皮袋を見せ
「いつでも、準備万端です♫」
ふふんっと、ドヤ顔をする。
「やはり便利だな、その皮袋とやらは」
「よかったら、作りましょうか?」
「ほほはほ、本当か!!」
「えぇ、王都に着いたら作っておきますよ」
「約束だぞティリス君!!」
興奮が抑えきれないのか、後ろについた尻尾がブンブンと振っている様に見える。
突如、ムトンダの家の入り口が開き『ちょっとアスカさん、そろそろ急いで下さいよ』っと、外にいる方達に怒られるてしまった。
「……っん、ゴホン! ではティリス君、出発しようか」
「分かりました」
「寂しくなるの~」
ムトンダは少し昔の事を思い出していた。
「ムトンダさん、本当にお世話になりました。両親を早くに亡くした俺達を見守ってくれて……ここまで、成長出来たのはムトンダさんのお陰です。本当の親父の様に思ってますよ」
「ばっきゃもーーん!! 今生の別れじゃないんじゃ……ワシを泣かしてどうするつもりじゃ~ー」
涙が止まらないムトンダを奥さんは優しく抱きしめる。
「そうよ、ティリス君、いつでも帰って来なさいね。ここは貴方の家でもあるのよ」
「ありがとうございます。お母さん」
ニッと笑うティリスだった。
そして、ラミナはと向き直る。
「ラミナ、俺はこれから王都へ旅立つ……3年は帰って来れないだろう、ラミナの成長を見守れなくてゴメン」
「お兄ちゃん! わたし寂しくないよ…だって、3年ぐらいでしょ? 全然、待てるよ……それにドルイドさんや、村のみんなが居るからね、次会った時はもっと美人になってお兄ちゃん気付かないかも」
「バカやろ、お兄ちゃんパワーを舐めんなよ! 直ぐに見つけてやるよ!」
2人は涙を流し、ティリスはラミナの頭に手をポンっと置いた。
「直ぐに帰る、体には気をつけるんだぞ」
「うん……っ、ありがとう」
ラミナは唇を噛み、今から出発をしようとする兄に気をつかわせない様に、気持ちを押し殺す。
「アスカさん、お待たせしました、出発しましょう」
「あぁ……うっううぅぅぅ」
アスカはもらい泣きをしていた。
ティリスはラミナ、村長夫婦、村の皆んなに総出で送りだしてもらい、一行は王都へと向かう。
旅立ったあと、ラミナが号泣していた事を知る由は無かった。
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