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第一章 転生

ep.7 夜明けまで強がらなくても

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 瞬時に東の森から脱出したティリス達は、息を潜め悪魔女王デーモンクイーンの追撃に備えるべく待ち構えていたが、これ以上の戦闘はなかった。

 正直に言えば、これ以上の戦闘はティリスにとっても本当に勝てるかどうか分からなかった。

 いや、長引きけば死んでいただろう。

 転生をしてから、久しく魔力全開での戦闘をしてこなかったのが原因だった事。
 ショートソードに付けられた英霊石は本物ではなく、簡易的な風の力を入れる為の高価な石だった事。

 その証拠に今は石にヒビが入り、精霊の力も感じ取れなくなってしまった。

 前世から負けた事の無かったティリスは、初めて敗北という感覚を味わう事になる。

 たが、今はそれで良かったと……
 
 後に最強の賢者と言われるのは、もう少し後の話だ。


◆◆◆◆


  ドルイド村を出る時は7人居たが、今は3人だけがドルイド村へと辿り着いた。

 村に入り村長の家へと向かう3人

 満身創痍……それが村長の最初に見た光景だった。

 綺麗だった鎧は跡形も無く、流れる様な金のブロンド髪は、土埃と泥に塗れその中で転がりながらも戦った為かギシギシになり全てがボロボロだった。
 だが、1番に変わり果てたのは、サラの片腕が失くなっている事だった。

「騎士様! そのお体は!?」

「あぁ、腕を持って行かれたが、ティリス君の回復薬のお陰でなんとか一命を取り留める事ができた」

「おぉ、そうでしたか、先ずは我が家で療養下さい」

「あぁ、申し訳ないが……世話になる」

 アスカに肩を貸してもらいながらも、騎士として礼節は怠らないサラは頭を下げ、部屋へと案内されしばらく休む事になった。

 ティリスも消耗激しく限界ギリギリだった。

「にぃに、おかえりなさい」

 それだけで、全てが報われた。

 それでも、ラミナの言葉に救われるティリスは、前世では待っている人も居ない孤独の身だったが、今世はラミナが待って居る、村の皆んなが待って居る、それだけで、生きて帰ってきた価値があると思うのだった。

「ただいま、ラミナ」


◆◆◆◆


 一夜明け、ティリスは朝を迎えた。

 筋肉痛とは違う痛みが体全体に走る。

 一般的に『魔力痛』と呼ばれ、空っぽになるまで魔力を行使する事で起きる痛みだったが、これを繰り返す事で魔力量や威力の向上がされていく。

 今の時代に魔力痛になるのはティリス1人だけだろう。

 軋む痛みを我慢してある所へと向かうティリスは、村長の家へとたどり着く。

 簡易的に村長の2階を、サラ達の部屋として使用していた。

 『コンコン』っと、扉を叩く。
 中から『開いている』とサラの声が聞こえる。

「サラさん、容態はどうですか?」

「ティリス君か、わざわざ来てもらってすまない」

 ベットに横たわるサラ

「痛む所とか、気持ち悪い所とか無いですか?」

「あぁ、正直言って痛い、っあははは……心も体も……」

 胸に手をやり、着ている服を強く握り掴む

「サラさん……」

 言葉を詰まらせながら、目には涙が溢れていた。

「切磋琢磨してきた仲間達が居なくなって行った……あの時、私がもっと強かったら、私があの時あの命令をしていなければ……私が!! わたしが……討伐依頼なんて受けなければ…皆を殺されずに今も……」

 自分を否定したい、自分の弱さが今回の事を招いたと後悔するサラだったが、ティリスはそう思っていない。

「サラさん、それは違います! 皆さんは貴方だから付いてきたんです、貴方だから命を張れたんです……だから自分を卑下にしないで下さい!!」

 ティリスは前世の自分を重ねていた。
 こんな仲間が欲しかった。
 一緒に冒険や魔法の研究をしたかった。
 孤独という絶望感を知っていただからこそ出る言葉は、

「俺はサラさんの様に、あんな仲間達が居る事が羨ましい、自分の為に一生を掛けてくれる仲間が羨ましい……そう思います」

 妙な説得力にサラは『ッハ!』っと我に帰る。

「……すまない、まさか子供に励まされるとはな! っあははは!! まだまだ、私も子供だな」

 そんなサラの笑顔をみて、ティリスも我に帰った。

「いえ、なんか偉そうな事言ってしまって、すいません……っん? そういえばアスカさんは?」

「あぁ、アスカは仲間の亡骸を少しでも故郷に戻してやりって言ってな、また、東の森の方まで行ってしまった」

「あいつも苦しんでいる筈なのに、私の為に動いてくれている……信用できる仲間だよ」

「それじゃ、アスカさんが帰ってきたら直ぐにお腹いっぱい食べれる様に手配しておきますね」

「あぁ…すまないなティリス君」

 それから、4日後……

 アスカは東の森から戻ってきた。

 泥沼の丘陵で死亡してしまった騎士団員は、帰ってくる時に村に戻す事は出来たが、東の森は悪魔女王デーモンクイーンとの戦闘が激しく、肉体はおろか、防具などもほとんど消滅していたが……

 そんな中でも、唯一、ボールドの鉄兜だけが、岩場の下に無事残っていた。

 それを見たサラは『馬鹿者め! だが、ありがとう』と、その鉄兜を片腕で強く抱きしめた。


◆◆◆◆


 サラやアスカの療養が落ち着き、7日が過ぎた。

 今回の事を報告する為に村の者を使って王都に派遣し、それを聞いたサラの家の者が、ドルイド村へと派遣される。

 それは、要人専用の馬車で、そこらの武器じゃ傷をつける事も出来ない要塞といって良いほどだった。

「サラさんって、なに? お金持ちのお嬢様なの?」

 ティリスは驚きを隠せなかった。

 いや、なんとなく気付いてはいた、まず、自分の騎士団員が居る事がおかしいと、『様』付けだし、代々伝わると宝剣とか言ってたし……そこでティリスは気づく、英霊石を壊したままだと。

「ティリス君、世話になったな、村の皆さんも!」

「あ……あの~サラさん? 様?」

「なんだ!? 改まって、様って、こんな馬車が来たって、私は私だ! いつも通りで君は大丈夫だ!」

「いや…そういう事では無くて……」

「なんだ? ハッキリしない奴だな? ……そうか! 寂しいんだろ?? っえ?! 私達が帰ってしまうのが寂しいんだろ? っあははは! まだまだ、子供だな~」

「いや、あの、宝剣なんだけど……戦いの最中で壊したまんまで…」

 皮袋からショートソードを取り出し、サラに見せる。
 サラはその姿に絶句をしたが、今のサラに必要の無いものだった。

「いや、その剣は君に託すよ…。こんな片腕だ、もう剣は振れない……これからは家の為に尽くす事にするつもりだ」

 サラの顔は晴れやかだった、幼い頃から剣を振ってきたはず、それを諦めなければならない現実…それを受け止めて前を向いているんだとティリスは感じた。

「分かりました、そう言う事なら大切に使わせて頂きます」

「ティリス君、家の事が落ち着いたら一度、王都に遊びに来ると良い、妹さんも連れてな」

「分かりました」

「サラ様、そろそろ出発します」

 アスカは出発の準備が出来たことを報告しに来る。

「分かった、ティリス君、もしなにか困った事があったら、『サラ・システィーヌ』の名を出すといい、魔除けになる筈だ」

「…ん? わかりました」

「では、本当にさらばだ」

 サラの号令の下、馬車は村を出て行った。

「王都か……一度、行ってみるか」



———————————————

第一章は、ここで終わりです。

読んで頂いてありがとうございます。
書き始めたばかりなので、誤字や脱字、どういう意味?
みたいな言葉があるかも知れませんが
頑張ってまだまだ、書いていきますのでどうぞ、応援よろしくお願いします。

最後に、第二章の内容をもう少し詰める作業が、遅れているので、少しだけ、更新が止まります。
が、直ぐに再開しますので、見捨てないで下さい~泣

では、これにて一旦、失礼します。
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