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第一章 転生

ep.4 戦闘開始

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 サラの号令で、騎士団員達は岩陰から走りだす。

 〈〈うおおぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!〉〉

 近くにいた小鬼ゴブリン共に、抜いたショートソードを斬りつけていく。

 〈〈ギャァアァァァァァ〉〉
 
 小鬼ゴブリンの断末魔がこだました。

 ッズシン! ッズシン! っと、地鳴りの様な音を立て小鬼ゴブリン共の後ろから大鬼オーガ3体が迫って来る。

 〈〈グオオォォォォォオオォォォォォォ!!〉〉

 近くまで迫った大鬼オーガの体は、全長2メートル程の体躯で、サイズ的には子供サイズの大鬼オーガだったが、それでも、筋骨隆々の体に片手には木の棍棒を持ち、それを悠々と振り回しサラの真後ろへと近づく。

「サラ様ーーー!」

 1人の騎士団員がサラを押し退け大鬼オーガと相対する、振り下ろされた棍棒を受け止めた騎士団員はショートソードを真っ二つに折られ、棍棒は鎧を粉々し騎士団員は吹き飛ばされる。
 そのまま近くにあった大きな岩に叩き込まれ、動かなくなってしまった。

 それを見たサラはもう一度、号令をかける。

「私が大鬼オーガを受け持つ! 雑魚共は頼むぞ!」

「っは!」

 残った騎士団員達は、小鬼ゴブリン共に照準を合わせ戦闘スタイルを変える。

 彼らが小鬼ゴブリン共を相手にしてくれているので、サラは前の大鬼オーガに一点集中する事が出来た。

 近づく大鬼オーガとの距離は1メートル、、、

 振りかざした棍棒は優に3メートルを超えていた。

 岩陰から見ていたティリスは、無属性魔法を応用し小石を棍棒へと当てバランスを崩させる。

 サラはそのチャンスを見逃さず、構えたショートソードを上段から振り抜く———

 《斬ッ!!!!!》

 流石は『Aランク』の冒険者、一瞬の隙を見逃さず振り抜いたその剣は、大鬼オーガの胴体を2つに分断させる。

 ———ズドンッ! っと、地面に落ちる大鬼オーガの上半身と、そのまま崩れ倒れる下半身は動かなくなった。

 〈〈———っうぉぉぉぉぉ!!!〉〉

 騎士団員達は剣を天に掲げ雄叫びが上げる。

 それと、同時に士気もあがり、そのまま残っていた小鬼ゴブリン共を殲滅させる。

「気を抜くな! まだ、大鬼オーガは2体残っている! ここは通させん」
 
 サラの指揮のもと、大鬼オーガに立ち向かう騎士団員達は傷を負うも、サラを筆頭に2体の大鬼オーガを討伐する事が出来た。

 辺りを見渡すと魔物の血で地面が赤く染まり、その戦闘の壮絶さが窺える。


◆◆◆◆


 サラは、ゆっくりと1人の騎士団員の元へと歩み出す。

「すまない……私がもっとしっかりしていれば、お前をここで死なす事はなかった」

「サラ様、私達は貴方の盾です、むしろサラ様の為に死ねるなんて幸せ者ですよコイツは」

 騎士団員のリーダー『ボールド』は、兜を取る。

 短めの黒髪に、口髭を蓄え、見た目の歳は40歳前後だろうか、ボールドは大きな声で天を仰ぎながら笑うが、頬には一筋の涙が溢れた。

 サラは自分に言い聞かせる様に、強い口調で声を出す。

「もう大丈夫だ、もうこれ以上は死なせない」

 周囲の警戒を気にしながら戦闘体制に入っていたティリスだったが、他の残存|《モンスター》がいない事を確認し、岩陰から出てくる時には警戒を解いていた。

「ティリス君、無事だったか……」

 サラは安心してホッと胸を撫で下ろす。

「さすがは高ランクの冒険者ですね、見ていてドキドキしましたよ」

「いや、私は団長失格だ……あの程度の大鬼オーガを倒すために団員を、、、」

 サラは悔しさに下唇を強く噛んだ。

「すまない、君のような子供にこんな愚痴を……忘れてくれ」

「サラさん、、、」

 サラは自分の頬を両の手で叩く。

 辺りには『パーーン』っと、響き渡る。

「さぁ! 皆んな行こうか!!」

 歩き出す騎士団の後を、ティリスはついていく。



◆◆◆◆



 泥沼の丘陵を超えて、東の森へとたどり着いた一行は、ティリスの提案により、入り口より少し離れた所でテントを設置していた。

「皆さん少し良いですか?」

 皆はティリスの言葉に耳を傾ける。

「東の森は別名『迷いの森』と呼ばれている事はご存じですか?」

「いや、聞いた事はないな」

 サラをはじめとする他の騎士団員も初耳だった。

「この森は以前、エルフが住む森と呼ばれていました、今は他の地へと移った様ですが、その時の名残で森全体に磁場を狂わせる結界が張られています」

「なるほど、それで迷いの森か……でも、ティリス君は東の森にへ狩りをしに出ているんだろう?」

「はい、そこで『探索サーチ』の魔法を使います」

「『探索サーチ』? …魔法とはなんだ? あの皮袋も気になってはいたが、あれはレアスキル付きのアイテムとかではないのか?」

(魔法を知らない? ……確か、俺がいたキュレル・レナード時代から500年と言う長い年月の中で、魔法が衰退……いや、精霊達が居なくなった? それよりもスキルって何だ?)

「いや、それなら『生活魔法』はどうしてるんだ? 水や光は?」

「『生活魔法』……? すまない、それも分からない、ただ、君の言う水や光はスキルアイテムで使えるぞ、君の言葉でいうと生活スキルってやつなのか」

(いやいや、まてまてまて、……魔法が無い、スキルアイテム? 『!!』 今、思い返せば確かにティリスの記憶には魔法なんて使ってる記憶は無かった)

「ちなみに、今、スキルアイテムってありますか?」

 たどたどしく、ティリスはサラに聞いてみる。

「そうだな、この鎧には守備力向上が付いてるし、足のブーツには、韋駄天トップギアというレアスキルが付いてるぞ」

 いろいろと、スキルの事を紹介してくれたサラは、俺の知らない事を教えてくれた。

「最後にこのショートソードだ、何でもこのルビーと呼ばる石に風の加護を封じ込めたと言われていてだな、別名『疾風の剣』と呼ばれるスーパーレアスキルなんだそうだ」

(あれは、やっぱり英霊石、精霊をあの中に封じ込めて使っている……? と言う事は、魔法を知っている者がいる、だがそれを良しと思わない者が情報操作をして意図的に魔法の事を伏せているという事か)

「どうした? ティリス君、この剣をマジマジと……っは!? この剣はやらんぞ!」

 焦るサラは、先程までの沈んでいた人とは思えない程に楽しそうにしていたが、それは自己防衛の為か心配をさせたく無いのか、から元気なのがバレバレだった。

「いえ、凄く綺麗な石だったのでつい」

「あぁ、これは私の家に代々伝わる宝剣なんだ、『A』ランクに昇進した時にな、父上から譲り受けたんだ」

 家の事や、親を尊敬し手育ってきたのだろう。

「何となく分かりました! そろそろ動きましょうか」

「そうだな、君と喋っていると何故か年上の方と喋っている様に感じてしまって、ついついしっかりするのを忘れてしまう」

(まぁ~確かに実年齢なら90歳と10歳で100歳も生きてる訳だしな)

「いえ、緊張も解れていい感じです」

 再び一向は東の森の入り口、『迷いの森』へと入って行く。

「では、今から探索サーチを使いますので、俺から離れないでください」

「了解した」

 サラと、騎士団員達は頷いた。

 果たして、大鬼オーガの大群は何体居るのか、それとも……。




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