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7 狼さん、天然(素材100%)ですか?

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 夏。それは地獄の始まり。
 特に狼さん…いや、犬狼族にとっては最悪の季節なようで。

「暑い…鼻が曲がる…」
「先輩、意味が分からなくなってます」

 屋上で大の字に寝そべってる先輩。尻尾も耳もだらーん、としてる。

「暑いのは自然の摂理だからまだいい、いいんだ。だが、夏になると異常なまでに強い匂いが教室に溜まるのが気に食わん」
「そっか、汗拭きシートとか制汗剤とかの匂い、先輩には相当きついですよね。やっぱり嗅覚がいいんですか?」
「…特に敏感な奴は山奥に離れていても人間の集落から放たれる匂いに気付く奴もいる。」

 夏場はとにかく嫌なんだよ、と愚痴を零しつつ起き上がる先輩。胸元を大きくはだけさせてぱたぱたと襟元をつまんで風を起こそうとしている。

 …あの。すっごくエロいです。

 大胸筋で作り上げられた谷間がなんとも言えません。喉仏のラインも男らしくて、それでいて艶やかな肌は、遠目に見てもモデルか俳優か、と勘違いしてしまう程に様になってる。滴る汗で更に色気が醸しだされてて、俺、凄くドキドキしてます!!

「お前さ」
「ふぁいっ!?」

 唐突に起き上がって顔を俺の首筋に近づけて、匂いを嗅いできた。えっ、俺そんなに匂いきついかな…後でシャワー浴びたい、それかお風呂…。

「香水とかはやめとけよ」
「えっ」

 なんで、と言われる前に抱き寄せられた。

「俺がマーキングするから」

 耳元で甘い低音が俺のモノ宣言。最初からもう既に先輩のモノですけどね。俺。

「俺も、先輩の匂いが欲しいです」
「はっ、そうかよ」

 不敵な笑みを浮かべて俺を撫でる先輩。全てが尊くて好き。

「つかお前さ、何か途中で果物でも食ったのか?」
「んむ、今日はデザート食べてないですよ」
「…そうか。」

 どうしたんだろう。先輩も果物食べたいのかな?
 …果物を美味しく食べる先輩。きっと天然記念物ものかも。
 いや、いっそ国宝がいい。こんなイケメンな人他にいないし。

 多分俺、先輩の野性的で穏やかな匂いにやられてるのかも。
 人工物じゃないよね?天然素材100%の本物だよね?

―――――

 暑さに脳がやられてきたのか、唯一、疾風の匂いが救いだった。
 ふわりと薫る甘い香り。木の実を頬張る小動物のような、とも思う。ただ一つ、俺が傍にいるとその匂いを強めて俺に飛び込んで、先輩、先輩、とじゃれついてくるのだから始末に負えない。

「(可愛い)」

 本当は、汗の匂いが酷いからあまりくっついて欲しくないのだが。こいつはとことん俺を堪能しようと顔を埋め、腕を俺の背中に回し、全身で幸せを伝えてくる。こんなところで発情するのは絶対に避けたいのに、それを許してくれない。隙あらば俺に一線を越えたことを強請る。
 …悪い子犬にはしっかり躾けをしないとならないが。生憎俺も悪い狼だ。成り行きを見守りつつ、頃合いを計って美味しく頂こう。

「(早く、こいつと結ばれたい)」

 しかし、随分こいつにとっての俺の理想が高い気がする。俺はそこまで綺麗な生き方してないというのにな。
 だが、望まれるならそれでいい。俺も応えるまでだ。

「疾風」
「蒼牙先輩?」
「俺が間違えても、笑って許してくれるよな」
「勿論ですよ、先輩」

 これじゃぁ、間違えてくれ、と言わんばかりじゃないか。俺も、夏の暑さに随分とやられているようだ。
 …いや、春の陽気の時点でこうなることは決まっていたのだろうか。

―――――

 その頃屋上の扉に隠れて観察してた人達は。

「うわ、相変わらずいちゃついてるよ」
「いやぁ、邪魔しちゃ悪いなあれ」
「でもさ、この調子じゃ一生あのままじゃない?」
「もうセックスしてるだろあの表情。」
「つか、ツッコミ入れなくていいのか?」
「へ?何が?」
「…屋上、もうすぐプール開きで掃除するってさ」
「それもそーだね」
「じゃ、せーのっ」

「「「いつまでいちゃついてるんだはよ帰れお前らッ!!!!!」」」
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