狼さんっ！ ～もふもふ尻尾のある生活～

2 狼さん、相合傘ですか？

　雨の日は大好きだ。

　ひんやりするし、いい匂いだし、落ち着くし。

　だけど…

「うわーーーん！！傘忘れてきたぁぁぁぁ！！」

　そう！天気予報が一日中晴れというのを信じ切ってた俺はこうなることを予測できてなかった！！

「うぅ…これじゃー濡れるよなぁ」

　とか思ってると急に視界が薄暗く。

「疾風」

　あ、この声。俺が一番会いたくて真っ先に振り向きたくなる人。

「せんぱいっ！」
「よぉチビわんこ。困りごとしてる声が聞こえてきたから助けに来たぜ」

　もうほんと俺のヒーロー。大好き。好き。抱いて。

　すると遠くからひそひそ話が聴こえて来た。

「ホモだ…ホモがいる…」
「いちゃつくなら他所でやれよ…」
「でもなんかいいなぁ」
「いい雰囲気だから余計に腹立つ」
「リア充爆発しろよマジで」

　なんとでも言うがいい。
　俺が漏れなく妄想爆発してるから。

―――

　ちょっと歩いて二人きり。雨が降ってるから邪魔者はいない。

「ねぇ先輩」
「んー？」

　ちょっとだけ聞いてみる。

「先輩と相合傘とか、俺、心臓爆発しそうだなーって思いました」
「…へぇ」

　すると唐突に俺の、俺のつむじにキスをした！？！？！？

「…これで爆発しなかったら、たっぷり褒めてやる」

　あっ、ばくはつしました。

　すき。どうしようもなくすき。

―――――

　とうとう相合傘を決行してしまった。
　しかも丁度良くあいつが傘を忘れるものだからチャンスだと思った。

　下心全開。俺は何時でもあいつの前じゃケダモノだ。

　…ひょこひょこ俺の傘の下で遅れないように歩くこいつは、
　…可愛い。しかも心臓爆発しそうときた。

　旋毛にキスをした。なんというか、本物の子犬に触れてる気分だ。

　…その後、なんで俺はあんな言葉を出してしまったんだよ。
　くそっ、決まらねぇ…

「狼さん」

　…今、ここでその呼び方をするか。

「あんまり困らせるなよ、俺の疾風」

　頭を撫でる。これだけでいい。
　…これだけで、俺はとてつもなく満たされてる。

「せんぱいぃっ」
「おい。待てだ。ステイ」
「何時になったら先輩と堂々といちゃいちゃできるんですか～」
「いつも堂々といちゃいちゃしてるだろほら一回離れろ」

　全く。少し調教しないとならないな。
　…いや、寧ろ俺が調教されてるのかもしれない。

　どろどろに甘やかされて、
　俺はこいつの中に堕ちたいのかもしれない。

　…まだ、その時じゃないから、俺もまた、お預けだ。

―――――