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旅立ち

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 地図を開いて、まずは隣国である白の国へいこうと言うことになった。クロトが伝令を飛ばしますと言うので、小首を傾げると、白色の美しい小鳥を鳥籠からだしてきた。その鳥の足に文を入れるケースがついていて、そこへ文を入れて飛ばすらしい。

「純なる獣は他の国へ自由に行くことができるのです、なので他国とのやり取りはこうやって伝令鳥を使います」

「あーーなるほど、それで他国の様子が解るのか」

「はい、しかしながら伝令鳥は1国に辿り着くのがやっとで、白の国より下に有る国からの情報は他の国伝いでないと我々には届かないのです」

「鳥だもんな、そんなに遠くへは行けないか」

「はい、伝い伝いに聞いた話からすると灰の国からの伝令鳥が途絶えたのは3ヶ月前だそうです、それまでは月に数回来ていたとのことですが、状況は悪くなる一方とのことでした」

「心配だよな……魔族か、魔族ってさ、どうやって攻めてくるの?本拠地みたいなのがあるの?」

「混沌から生まれると聞きます、灰の国の下に黒い穴があき、そこから魔族が這い出てきては襲い掛かってくるのだそうです、その穴を塞ぐ術がなく、人海戦術で打ち倒して何とか耐えている状態です」

「そっか」

されどと、クロトは凛々しい顔で俺を励ますように一言一言に思いを込めるように話す。

「されど、灰の国は武人の国です、最強の戦士揃いの逞しい国です、きっと渚様が行かれるまで持ちこたえてくれるに違いありません」

「うん、でもさ俺が行って本当に役にたつのかな、俺は特別な力なんか無いんだよ、そんな魔族とかどうやって戦えば良いのか解らないし、王を選ぶというならもうクロトで良いじゃん」

「渚様、不安は解ります、しかし今、渚様にそのように選んでいただく訳にはいきません、10人の王全てに会った上で私を選ばなくては他の者が不満に思います、禍根が残っては世の王として軍勢を率いる事はできないでしょう」

クロトが言う事はもっともだ。もうクロトでいいからなんて、失礼な事を言って恥ずかしくなった。

「うん、ごめんクロト」
「しかしながら、僕だって他の王に渚様を譲る気はありません、晴れて番候補になりましたし、これからは全力で口説きますので御覚悟を」

にっこりと、クロトが笑う。なんだこの可愛さは。さっきまで不安でいっぱいだった気持ちが、ふにゃりとふやけたように弛む。

「あはっ、じゃぁ、俺もクロトに呆れられないように頑張らなきゃな、よし、とっとと白の国へ行こう!!」
「はい」


◇◇◇◇◇◇◇◇

白の国に行くには、天馬にのって空路を行くという、天馬が居ることに驚いたが、まてまて人間と猫のハーフみたいな猫人がいるんだ、何が居てもおかしくない。

真っ白な天馬が2匹、神官達に連れられやってきた。背に荷物をつけられ、その上に乗ると言うが、俺は乗馬をしたことがなかった。

「あのさ……クロト」
「はい、どうしましたか?」
「俺、馬に乗ったこと無いんだけど」

はっとしたように、クロトは天馬の背の荷物を1匹の方に全部移し替え、手早く鞍を二人用に変えた。

「問題ありません、私と共に乗ってください、さ、まずは渚様、ここに足をかけて羽を掴んで、そうです、そのまま股がって下さい」

クロトに指示を受け、なんとか天馬の背中に乗ることができたが、凄く高く感じて恐い。その後にヒラリとクロトが天馬に飛び乗り俺を後ろから抱き締めるみたいに綱をとった。

「渚様、僕にもたれて下さって構いませんし、ここのたてがみを掴んで下さい、僕が後ろから支えますし、絶対に渚様をおとしたりしませんから大丈夫ですよ」
「あ、うん、悪いな」

俺の方が年上だけど、もはや、そんなことには拘らない。クロトが頼りになるのはとっくに解っているし、実際凄くよく気が付いて優しくて包容力が有る。

「クロトは本当にできた子だよ」
「ふふ、何ですか、褒めて下さっているなら嬉しいです」

鮮やかに、天馬を操り、ヤッ!という掛け声で天馬は地を蹴り空へ駆け上がった。ぐんぐんと空を駆け上がっていく。

「白の国は、黒の国を出ますと、南下方に有ります、天馬で下り降りますのでもし何かありましたら、直ぐに言って下さいね」

クロトが優しく、耳元に囁く、何だか本当にもしかしたらクロトは俺の事が好きなのかなと思ってしまうくらいその声が甘くて。赤面してしまった。

よく考えたら、俺は恋愛とかしたこと無かったし、生まれた時から隣には直哉がいて、いつか直哉と番になるのかなと思うことは有ったけど、そういう意味では直哉の事を見たことがなかったから。もちろん、直哉も俺のことは良い遊び相手くらいにしか思ってなかっと思うし。

自分にだけ向くベクトルがこんなに心地良いものなんて知らなかった。

クロトは可愛いし、しっかりしてるし、賢いし、何よりも最初からずっと優しくて、案外本当につがうならこんな人となら何時までも楽しく暮らせるのではなんて思って、また赤面した。






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