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おそらく、賢者の塔を僕は物凄く楽しんで登ったに違いない。記憶が無くてもわかる、絶対楽しんでる。
王子さまは、はぁと、小さくタメ息を吐いた。
「私もそなたに、ついて行きたかったが、私は魔法が使えなくてそなたがかけた鍵魔法を解除できなかったんだ、だから十階でもう1ヶ月程、そなたが降りてくるのをまっていた」
「1ヶ月も待ってたんですか!?そんなのすぐ諦めてくださいよ」
「そなたに何かあった時、すぐ助けに行けるのは私だけなんだぞ、鍵も塔ごと破壊すれば、壊せなくもないし」
「脳筋発想で無茶苦茶だが、根底の優しさよ」
だがな、と、王子は、少し興奮した様子でリーンに語りかける。
「1ヶ月たった頃、急にそなたの声が聞こえたんだ、『いま、二十八階層まできました、まだ登るので王子はお帰り下さい、転移魔法覚えたので僕は出ようとすればすぐでられますし、通信魔法もおぼえたので何かあったら連絡します、じゃ』って、一方的に話して、連絡がとだえた、その後は、いくら名を呼んでも、こちらからは通信はできなかった」
「わーーー僕、かなりの自己中ヤロウですね、あぁ王子、ほんとにいい人過ぎて、申し訳ない」
「まぁ、探求心があるのは良いことだ、そなたの事を待っていたかったが、私も王家の試練中だ、3ヶ月以内に戻らねばならなくて、仕方なく塔を降りたんだ」
「当然です、もっと早く降りてください」
「それから何度か、十階へ行ってみたが、リーンは塔から出てくる気配はなくてな、一年たった頃、急に《やりました!!踏破しました!!》って、夜中の2時にそなたの声が聞こえて、あらゆる賢者の塔関連のお偉方に声をかけ、塔へ迎えにいったんだ」
「うわぁ、迷惑過ぎる、ごめんなさい」
「そなたは、手に大賢者の証の、賢者の杖を持って出てきたんだ、あの時は、本当に興奮したぞ」
「夜中ですしね、変なスイッチははいってますよね、確実に」
話を一気に聞いて、僕は、納得した。なるほど、そういう経緯で僕は大賢者になったのか。歳が若いし、大賢者ってどういう事ができるのか謎だったが、塔を踏破して、大賢者の証を手に入れれば、即ち、大賢者になれるという訳なのね。
「その杖は?」
「うむ、調査隊に穴の付近を捜させているのだが、まだ見付かっておらぬ、大切なものだ、早く見つかるとよいが」
「えっと、ちなみに塔に登ってもう一回杖貰ってくる事ってできないんですか?」
「たぶん無理だろう、大賢者の杖を手に入れてそなたが降りてきてから、塔はただの十階の塔になってしまったから」
「あぁ……」
至極残念だ、おそらく、賢者の杖の力で塔には何らかの魔法がかかっていたんだろう。
その核を持ってでてきちゃったから、壊れたんだ。過去の自分よなんて愚かな。
リーンは、はぁっと、タメ息を吐いた。
王子さまは、はぁと、小さくタメ息を吐いた。
「私もそなたに、ついて行きたかったが、私は魔法が使えなくてそなたがかけた鍵魔法を解除できなかったんだ、だから十階でもう1ヶ月程、そなたが降りてくるのをまっていた」
「1ヶ月も待ってたんですか!?そんなのすぐ諦めてくださいよ」
「そなたに何かあった時、すぐ助けに行けるのは私だけなんだぞ、鍵も塔ごと破壊すれば、壊せなくもないし」
「脳筋発想で無茶苦茶だが、根底の優しさよ」
だがな、と、王子は、少し興奮した様子でリーンに語りかける。
「1ヶ月たった頃、急にそなたの声が聞こえたんだ、『いま、二十八階層まできました、まだ登るので王子はお帰り下さい、転移魔法覚えたので僕は出ようとすればすぐでられますし、通信魔法もおぼえたので何かあったら連絡します、じゃ』って、一方的に話して、連絡がとだえた、その後は、いくら名を呼んでも、こちらからは通信はできなかった」
「わーーー僕、かなりの自己中ヤロウですね、あぁ王子、ほんとにいい人過ぎて、申し訳ない」
「まぁ、探求心があるのは良いことだ、そなたの事を待っていたかったが、私も王家の試練中だ、3ヶ月以内に戻らねばならなくて、仕方なく塔を降りたんだ」
「当然です、もっと早く降りてください」
「それから何度か、十階へ行ってみたが、リーンは塔から出てくる気配はなくてな、一年たった頃、急に《やりました!!踏破しました!!》って、夜中の2時にそなたの声が聞こえて、あらゆる賢者の塔関連のお偉方に声をかけ、塔へ迎えにいったんだ」
「うわぁ、迷惑過ぎる、ごめんなさい」
「そなたは、手に大賢者の証の、賢者の杖を持って出てきたんだ、あの時は、本当に興奮したぞ」
「夜中ですしね、変なスイッチははいってますよね、確実に」
話を一気に聞いて、僕は、納得した。なるほど、そういう経緯で僕は大賢者になったのか。歳が若いし、大賢者ってどういう事ができるのか謎だったが、塔を踏破して、大賢者の証を手に入れれば、即ち、大賢者になれるという訳なのね。
「その杖は?」
「うむ、調査隊に穴の付近を捜させているのだが、まだ見付かっておらぬ、大切なものだ、早く見つかるとよいが」
「えっと、ちなみに塔に登ってもう一回杖貰ってくる事ってできないんですか?」
「たぶん無理だろう、大賢者の杖を手に入れてそなたが降りてきてから、塔はただの十階の塔になってしまったから」
「あぁ……」
至極残念だ、おそらく、賢者の杖の力で塔には何らかの魔法がかかっていたんだろう。
その核を持ってでてきちゃったから、壊れたんだ。過去の自分よなんて愚かな。
リーンは、はぁっと、タメ息を吐いた。
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