上 下
57 / 66

57

しおりを挟む
少しだけ涙目のリズを、リュカは会場の隅で抱き締めた。

「リズ、本当に気持ち悪いとかならもう部屋に」

「ごめんなさい、リュカさん、僕嫉妬してただけなんです、もしあんな綺麗な人たちにリュカさんとられちゃうんじゃないかって、だってぼくの身体ちっとも魅力的じゃないし、あの人たち。胸が大きくてとっても女性的だったし、ぼく、男だし」

「胸?いいか、リズ、あんなのただの贅肉だ、胸なら俺にもリズにもある、正直、リズの身体は、リズならなんでも良い」

「どういう」

「だから、最初は確かに一目惚れだったけど、今はもう、リズならなんでも良いんだよ、極端な話、リズが例えば怪我して顔がぐちゃぐちゃになっても、手足がなくなっても、生きてればなんでもいい、形なんかどうでも良い、リズの魂だけリズならなんでも良いんだよ、解ってる、キモいよな、でも本心だから……だから、リズが太ろうが痩せようが、胸が有ろうが無かろうが、女とか男とか、どうでも良いんだ、もっと言えば、例えばリズが、考えたくないけど、魔法とかで姿を変えられて芋虫とかになっても俺は愛せる、そんくらい好きなんだよ」

リュカが言いながら顔を赤らめていく。リズならば、姿形が何であろうと構わない。本心からそう思って、もちろん、この可愛らしい姿が一欠片でも失われるのは嫌だけれど。

「俺、本当に、リズならなんだって良いんだ」

リズの髪にそっと触れる。指通りの良い、くすんだ鼠色の髪も、形の良い頭も、リズを構成する全部が愛しい。


「芋虫……リュカさん、僕もリュカさんなら芋虫でもなんでも大切にします、毎日、新鮮な葉っぱとってきて、お水も変えて、どこにでも連れていきます、リュカさんが芋虫だったら、今度は僕が守りますね」

「ありがとう、リズ」

こんな話をしたせいか、その夜の夢は、芋虫の夢を見てしまって、リズは、うなされた。


「んんんっ……りゅ、か、さ……いも、む、し、可愛い、あ、違う、いもむし、が、リュカさんに……だめ、そのイモ、ムシは……リュカさんだ、から、ぼく、しか、さわっちゃ、だめ、や」

「リズ、起きろ、寝言……なんか、卑猥だな」


隣でうなされるリズの寝言を、平常心では聞いていられなくて、リュカは、頭を抱えた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

僕が愛しているのは義弟

朝陽七彩
BL
誰にも内緒の秘密の愛 *** 成瀬隼翔(なるせ はやと) *** *** 成瀬 葵(なるせ あおい) ***

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

処理中です...