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軍義を終えた後の、将軍達の動きは速かった。阿吽の呼吸で其々が散って軍を動かす準備に入っていく。
ゼクスは気を許せばカタカタと鳴る自分の歯を噛み締め、リュカの用意した、集団と共に、ドラクロンの中枢へ入っていった。ここからは、リュカは遠方からしか手伝ってはくれない。
傀儡ではだめだと言う。自分で考えて動けと、託されたその巨大事業に、びびって悩んでる時間はなかった。ゼクスは、引っ切り無しに飛び交う情報に最初は振り回されるばかりだったが、次第に手際よく、必要な時に必要なものを拾えるように適応していった。それに連れて、信頼のできる、部下が数人、手駒のように動いてくれて、人を動かす事に自分が慣れて長けてゆくのを感じ、それは、ゼクスの自信へと繋がった。
忌むべきものと思ってた紫の髪と、瞳は、ドラクロン王家の血筋の証、使えるものは何でも使った。自分達が支持する者が偽物ではない事を、貴族と密会を重ね、協力者を増やし、リュカの撒いた種が爆発的に効果的にドラクロン王国の民の心を侵略していく。
《人の心を動かせ、一人一人がやがて王を作ってくれる》
リュカの言葉は、ゼクスの心に楔のように突き刺さって、その挫けそうな脆弱な心の芯となって、前だけを、反乱を、大きな集団を、国民の想いを味方につけて、とうとう、大軍を率いて、ドラクロン王宮に足を踏み入れた。
ドラクロン王は、全く気付いていなかった、まさに寝耳に水だった。自分に刃向かう者が現れる訳がないと信じていた。だが、それは、妄信だった。
傍にいた筈の、何でも言うことを聞く、将軍がいつの間にかいなくなっているとこも、おべっかを使い、新しいオメガを連れてくる貴族達も、いつの間にか、その王座の周りには誰もいなくなっていた。
「な、な、何が起こって……宰相はどうしたっ!!なんだ、そいつは、なぜ王座の間に、剣を持って入ってきている!!捕らえよ、将軍は何処へいった!!なぜ誰も動かぬ!!」
大声で怒鳴り散らす、無様で年老いた老人が、ゼクスの前にいる。
かつては、その強大な権力でこの国の総てを支配した成れの果て、こんな、無駄な贅肉にまみれ怒鳴るだけの愚かな男が、そんな権力を持っていたことに、絶望すら覚えた。
なぜもっとはやくに…ゼクスが知るだけでも沢山の罪のない人が殺され、汚名を着せられ、下げずまれた。
「こんな者をのさばらせた責任は、我々総てにある」
「なっ、なんだ貴様は」
ゼクスは、無様な王の、その豪華なマントを踏みつけた。それだけで、王は、縫い止められた標本の蛾のように、動けなくなった。
「あなたの暴虐の乱世は終わった、もはや外道に堕ちきったあなたが悔い改めることも無いだろうが、第二のあなたができないための礎くらいには成るだろう」
ゼクスが、衛兵に、向かう。
「この者を地下廊へ、殺したい者も居るだろうが、今は我慢してくれ、法を作り、最初に裁きを与える為だけに、生かしておきたい」
「ハッ」
「何をするんじゃ!!ワシを誰だと思っておるのだ、お前ら、一族郎党皆殺しにしてやる!!離せ!!誰か、殺せ!!誰か!!言うことをきけ!!殺されたいのか!!」
最後まで、わめき散らす、その暴言の一つ一つが恨みと成ることも解らず、愚かな老人は、日の当たらない、深い地下廊へと封じられた。
「さて、皆さん、僕はあれに成り代わって、王座に着く予定ですが、一代限りの王となるつもりです」
ざわざわと、兵士達がざわめく。せっかく、苦難の中から立った、救世主のような王を、なぜまた失わなければならないのかと。
「僕たちの國は実はとっても貧しい、軍事力ばかり肥大して、田畑は枯れ、作物は育たず、農地は荒れ、人は痩せ、気力も向上心も奪われた、だが、それも、今日で終わる、僕たちの国は、不死鳥のように甦る、麦を作りましょう、米を作りましょう、沢山食べて、笑い合いましょう、そして隣人を助け、環を広げ、やがて国を笑いで溢れる豊かな国に変えましょう、理想をもちましょう、希望をもちましょう、諦めないで力を合わせましょう」
ううっと、誰かが、呻きその場に崩れ、それを皮切りに大勢の者が涙を流した。悔しかった日々は終わった、絶望しかなかった、諦めるしかなかった日々が終わったのだ。
「この国を法治国家にしましょう!!そして、代表は総ての国民の中から、あなたが、あなたかも、そこにいる誰もが、もっとも優秀な人を代表にして、間違えたらいさめられる国にしていきましょう、権力は分散させ、国の利益と幸福だけを追及してくれる人を常に俺たちが選んで、皆で国を作り上げていこうじゃないか、僕たちが目指すのは、どの国にも負けない、軍事力なんかじゃじゃない、国民の一人一人の力で、富める国に、豊かな、幸福な、誰もが大切な人を守れる国に、そのために命を使おう」
理想論だと言われても、有り得ないと言われても、目指すことは高い理想でなければ、己を律して、踏ん張る理由にならない。
「誰もが天に誇れる姿を、、生きていこう」
うわぁぁと、それこそ天が割れそうな歓声が王宮を、いや、ドラクロン王国全土で撒き起こった。それほどにしいたげられてきた、解放は、人々の心に希望を灯した。
かくして、革命は、陰謀は、大成功した。
ゼクスは気を許せばカタカタと鳴る自分の歯を噛み締め、リュカの用意した、集団と共に、ドラクロンの中枢へ入っていった。ここからは、リュカは遠方からしか手伝ってはくれない。
傀儡ではだめだと言う。自分で考えて動けと、託されたその巨大事業に、びびって悩んでる時間はなかった。ゼクスは、引っ切り無しに飛び交う情報に最初は振り回されるばかりだったが、次第に手際よく、必要な時に必要なものを拾えるように適応していった。それに連れて、信頼のできる、部下が数人、手駒のように動いてくれて、人を動かす事に自分が慣れて長けてゆくのを感じ、それは、ゼクスの自信へと繋がった。
忌むべきものと思ってた紫の髪と、瞳は、ドラクロン王家の血筋の証、使えるものは何でも使った。自分達が支持する者が偽物ではない事を、貴族と密会を重ね、協力者を増やし、リュカの撒いた種が爆発的に効果的にドラクロン王国の民の心を侵略していく。
《人の心を動かせ、一人一人がやがて王を作ってくれる》
リュカの言葉は、ゼクスの心に楔のように突き刺さって、その挫けそうな脆弱な心の芯となって、前だけを、反乱を、大きな集団を、国民の想いを味方につけて、とうとう、大軍を率いて、ドラクロン王宮に足を踏み入れた。
ドラクロン王は、全く気付いていなかった、まさに寝耳に水だった。自分に刃向かう者が現れる訳がないと信じていた。だが、それは、妄信だった。
傍にいた筈の、何でも言うことを聞く、将軍がいつの間にかいなくなっているとこも、おべっかを使い、新しいオメガを連れてくる貴族達も、いつの間にか、その王座の周りには誰もいなくなっていた。
「な、な、何が起こって……宰相はどうしたっ!!なんだ、そいつは、なぜ王座の間に、剣を持って入ってきている!!捕らえよ、将軍は何処へいった!!なぜ誰も動かぬ!!」
大声で怒鳴り散らす、無様で年老いた老人が、ゼクスの前にいる。
かつては、その強大な権力でこの国の総てを支配した成れの果て、こんな、無駄な贅肉にまみれ怒鳴るだけの愚かな男が、そんな権力を持っていたことに、絶望すら覚えた。
なぜもっとはやくに…ゼクスが知るだけでも沢山の罪のない人が殺され、汚名を着せられ、下げずまれた。
「こんな者をのさばらせた責任は、我々総てにある」
「なっ、なんだ貴様は」
ゼクスは、無様な王の、その豪華なマントを踏みつけた。それだけで、王は、縫い止められた標本の蛾のように、動けなくなった。
「あなたの暴虐の乱世は終わった、もはや外道に堕ちきったあなたが悔い改めることも無いだろうが、第二のあなたができないための礎くらいには成るだろう」
ゼクスが、衛兵に、向かう。
「この者を地下廊へ、殺したい者も居るだろうが、今は我慢してくれ、法を作り、最初に裁きを与える為だけに、生かしておきたい」
「ハッ」
「何をするんじゃ!!ワシを誰だと思っておるのだ、お前ら、一族郎党皆殺しにしてやる!!離せ!!誰か、殺せ!!誰か!!言うことをきけ!!殺されたいのか!!」
最後まで、わめき散らす、その暴言の一つ一つが恨みと成ることも解らず、愚かな老人は、日の当たらない、深い地下廊へと封じられた。
「さて、皆さん、僕はあれに成り代わって、王座に着く予定ですが、一代限りの王となるつもりです」
ざわざわと、兵士達がざわめく。せっかく、苦難の中から立った、救世主のような王を、なぜまた失わなければならないのかと。
「僕たちの國は実はとっても貧しい、軍事力ばかり肥大して、田畑は枯れ、作物は育たず、農地は荒れ、人は痩せ、気力も向上心も奪われた、だが、それも、今日で終わる、僕たちの国は、不死鳥のように甦る、麦を作りましょう、米を作りましょう、沢山食べて、笑い合いましょう、そして隣人を助け、環を広げ、やがて国を笑いで溢れる豊かな国に変えましょう、理想をもちましょう、希望をもちましょう、諦めないで力を合わせましょう」
ううっと、誰かが、呻きその場に崩れ、それを皮切りに大勢の者が涙を流した。悔しかった日々は終わった、絶望しかなかった、諦めるしかなかった日々が終わったのだ。
「この国を法治国家にしましょう!!そして、代表は総ての国民の中から、あなたが、あなたかも、そこにいる誰もが、もっとも優秀な人を代表にして、間違えたらいさめられる国にしていきましょう、権力は分散させ、国の利益と幸福だけを追及してくれる人を常に俺たちが選んで、皆で国を作り上げていこうじゃないか、僕たちが目指すのは、どの国にも負けない、軍事力なんかじゃじゃない、国民の一人一人の力で、富める国に、豊かな、幸福な、誰もが大切な人を守れる国に、そのために命を使おう」
理想論だと言われても、有り得ないと言われても、目指すことは高い理想でなければ、己を律して、踏ん張る理由にならない。
「誰もが天に誇れる姿を、、生きていこう」
うわぁぁと、それこそ天が割れそうな歓声が王宮を、いや、ドラクロン王国全土で撒き起こった。それほどにしいたげられてきた、解放は、人々の心に希望を灯した。
かくして、革命は、陰謀は、大成功した。
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