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初めてリュカの父と母に会う。どんな人だろう、お兄さんは2人居て、長男のオルカ様にはこないだ会った、セブルカさんの想い人。結婚式を上げる前に番になってしまって、良く思われないかも。
リズの不安の入り交じった緊張を感じ取って、リュカはぎゅっと手を握る。怖いことなんかないって、俺がいるから大丈夫って、言葉にしなくても、気持ちが流れてくる。そうだ、自分にはもうリュカという番がいるのだ。
「大丈夫です、リュカさん」
「ん、緊張しなくて良いから」
扉を開けようとしているメイドさん達の目を盗むように、ちゅと、髪に口付けされ、整えた心が乱される。
「リュカさーーん」
「ハハッ、ごめん、真面目な顔が可愛くて」
なにそれ、真面目な顔は可愛くなんてないです。小声で文句を言っていたら、緊張をする暇もなく、扉が開き、中へと招かれた。
中央に豪華な食卓があり、正面に年配の男性と、その右に美しい黒髪の女性、リュカに似てる。左右の席にオルカさんと、もう1人、オルカさんを小柄にした感じの真っ赤な髪の青年が座っている。
正面の年配の男性が、席を立った。
「やぁ、リズさんはじめまして、リュカの父のセルカ·サリザーラだ、以後お見知り置きを、こちらは妻のリュリュ、長男のオルカ、次男のティシュカ、さぁ、どうぞ席について下さい」
紹介を受けた順に、妻のリュリュはにこりと微笑み、優しい瞳でリズをみつめて、オルカは良かったねという顔で見守るみたいな眼差しで、ティシュカは、ムスっとしていた。
(え、次男さんなんか怒ってない!?)
少し戸惑ったが、リズは、キチッと頭を下げた。それをみて、リュカも頭を下げた。リュカは、普段はしない挨拶をリズのために、きちんとすることにした。
「おはようございます、父上、母上、兄上、こたびの祝宴をありがとうございます、こちらが我が伴侶となったリズ·カリルです」
「サリザーラ伯爵、並びにご家族の皆様、ご挨拶が遅れたにも関わらずこのような温かな席に招いて下さり感謝いたします、わたくしは、クライスから軍医として参りました、リズ·カリルです、このたび、勝手ながらご子息であらせられるリュカさんと、番となりました、事後報告になりましたこと許し下さい」
リズのきちんとした態度に、サリザーラ伯爵は満面の笑みを浮かべた。
「リュカは素晴らしい伴侶を得たな、おめでとう、さぁ、リズさんこちらへ座って、もっと話をしましょう」
「はい」
リュカと共に用意された豪華な席に着く。伯爵は、ワインを注ぐように、メイドさん達に指示をだし、タプタプとつがれたワイングラスを片手に掲げた。キラキラと、照明に輝くそれを高らかに。
「我が息子の善き伴侶に乾杯しよう」
「善き伴侶に」「可愛い伴侶に」「……」「我が番に」
「僕の番に」
「「「「「カンパーイ」」」」
ゴクッと飲むと、口の中に葡萄の甘い香りとこくが広がって、うっとりするくらい美味しかった。
「さぁ、サリザーラ邸の自慢のシェフが作った料理だ、食べなさい」
「はい、いただきます」
前菜の野菜を啄むように口にして、ちらりと視線を伯爵へ向けると、伯爵は上機嫌で、人参を妻の皿へいれている。
「我が妻は人参が大好きでね、この人参は、特別な肥料で作った我が領土の特産品なんだ、甘くて美味しい」
「ほほ、騙されないで、この人、人参を食べれないんですの、本当に美味しいのに」
「……あ、はい、人参美味しいです」
「もっと食べるすか?」
リュカまで、リズの皿に人参を乗せようとしてきて、大丈夫だと首をふる。
「仲が良くて妬けるね、僕も伴侶を持とうかな」
「おや、オルカ、とうとうセブルカを娶る気になったのかい」
「父さん、やめてくださいよ、いない人を話題にするなんて、良くないですよ」
「リズさんは、セブルカに会ったことあるのよね」
お母上が、人参を食べながらリズにたずねた。
「はい、本当に良くしてもらって、優しい楽しい方でした」
「私の母の妹の娘の息子なのよ、リュカに少し似てるでしょ」
「はい、最初に見た時、お兄さんなのかと思いました」
「まぁ、あながち間違いないじゃないな、オルカががんばれば」
「父さんっ!!」
真っ赤な顔になって、父を注意するオルカさんを見て、リズは、あれ?と思った。
(あれ?もしかして、もしかして、オルカさん、セブルカさんと両想いなのでは!?え、セブルカさんっっ!!両片想いとか、甘酸っぱい)
ちらりと、リュカに視線を送ると、リュカは頷く。
「あいつら、お互いを意識し過ぎて、ここ数年、一言も喋れなくなったんだ、家族一同見守り体勢にはいってる」
「はぁーーん、なんて甘酸っぱい」
「あのさ」
突然、次男のティシュカが、バンッとナイフとフォークを机に置いた。
「皆浮かれてるけど、僕のこと忘れてない!!」
「へ?」(父)
「あら」(母)
「おや」(兄)
「うるさ」(リュカ)
「エッ」(リズ)
「リュカが将軍職を辞退するって本当にそんなこと許すつもりなの!?そんで、僕が将軍になるって、そんなバカな話しある!!」
「あーー」
「仕方ないわよ」
「それかぁ」
「お前、兄だろ」
「エエっ」
「兄だろじゃ、ないだろ、リュカ!!なんで僕が将軍なんて、無理に決まってんだろ」
「大丈夫だよ、軍義にでて座ってるだけだから」
「んな訳ないだろ!!お前なんで、やめるんだよ、辞めんなよ」
「しょうがないじゃん、リズと一緒にいたいんだから、俺も新人騎士部隊に入るって決めたんすわ」
「決めたんすわじゃねーわ、ダメに決まってるだろ!!何いってんの、まじで、父さん、こいつ、頭イカれてるよ、リズさんも伴侶として叱ってよ」
「えええっ、りゅ、リュカさん、何がどうして」
「ん?将軍職だとやること多くてそばに居られないから、辞めちゃおうと思って、あとちょっとヤることあるし、ちょうど、ティシュカが空いてたからねじ込んどいた」
「軽い!!」
リズは、青ざめた。何がどうして、こんなことにと。
リズの不安の入り交じった緊張を感じ取って、リュカはぎゅっと手を握る。怖いことなんかないって、俺がいるから大丈夫って、言葉にしなくても、気持ちが流れてくる。そうだ、自分にはもうリュカという番がいるのだ。
「大丈夫です、リュカさん」
「ん、緊張しなくて良いから」
扉を開けようとしているメイドさん達の目を盗むように、ちゅと、髪に口付けされ、整えた心が乱される。
「リュカさーーん」
「ハハッ、ごめん、真面目な顔が可愛くて」
なにそれ、真面目な顔は可愛くなんてないです。小声で文句を言っていたら、緊張をする暇もなく、扉が開き、中へと招かれた。
中央に豪華な食卓があり、正面に年配の男性と、その右に美しい黒髪の女性、リュカに似てる。左右の席にオルカさんと、もう1人、オルカさんを小柄にした感じの真っ赤な髪の青年が座っている。
正面の年配の男性が、席を立った。
「やぁ、リズさんはじめまして、リュカの父のセルカ·サリザーラだ、以後お見知り置きを、こちらは妻のリュリュ、長男のオルカ、次男のティシュカ、さぁ、どうぞ席について下さい」
紹介を受けた順に、妻のリュリュはにこりと微笑み、優しい瞳でリズをみつめて、オルカは良かったねという顔で見守るみたいな眼差しで、ティシュカは、ムスっとしていた。
(え、次男さんなんか怒ってない!?)
少し戸惑ったが、リズは、キチッと頭を下げた。それをみて、リュカも頭を下げた。リュカは、普段はしない挨拶をリズのために、きちんとすることにした。
「おはようございます、父上、母上、兄上、こたびの祝宴をありがとうございます、こちらが我が伴侶となったリズ·カリルです」
「サリザーラ伯爵、並びにご家族の皆様、ご挨拶が遅れたにも関わらずこのような温かな席に招いて下さり感謝いたします、わたくしは、クライスから軍医として参りました、リズ·カリルです、このたび、勝手ながらご子息であらせられるリュカさんと、番となりました、事後報告になりましたこと許し下さい」
リズのきちんとした態度に、サリザーラ伯爵は満面の笑みを浮かべた。
「リュカは素晴らしい伴侶を得たな、おめでとう、さぁ、リズさんこちらへ座って、もっと話をしましょう」
「はい」
リュカと共に用意された豪華な席に着く。伯爵は、ワインを注ぐように、メイドさん達に指示をだし、タプタプとつがれたワイングラスを片手に掲げた。キラキラと、照明に輝くそれを高らかに。
「我が息子の善き伴侶に乾杯しよう」
「善き伴侶に」「可愛い伴侶に」「……」「我が番に」
「僕の番に」
「「「「「カンパーイ」」」」
ゴクッと飲むと、口の中に葡萄の甘い香りとこくが広がって、うっとりするくらい美味しかった。
「さぁ、サリザーラ邸の自慢のシェフが作った料理だ、食べなさい」
「はい、いただきます」
前菜の野菜を啄むように口にして、ちらりと視線を伯爵へ向けると、伯爵は上機嫌で、人参を妻の皿へいれている。
「我が妻は人参が大好きでね、この人参は、特別な肥料で作った我が領土の特産品なんだ、甘くて美味しい」
「ほほ、騙されないで、この人、人参を食べれないんですの、本当に美味しいのに」
「……あ、はい、人参美味しいです」
「もっと食べるすか?」
リュカまで、リズの皿に人参を乗せようとしてきて、大丈夫だと首をふる。
「仲が良くて妬けるね、僕も伴侶を持とうかな」
「おや、オルカ、とうとうセブルカを娶る気になったのかい」
「父さん、やめてくださいよ、いない人を話題にするなんて、良くないですよ」
「リズさんは、セブルカに会ったことあるのよね」
お母上が、人参を食べながらリズにたずねた。
「はい、本当に良くしてもらって、優しい楽しい方でした」
「私の母の妹の娘の息子なのよ、リュカに少し似てるでしょ」
「はい、最初に見た時、お兄さんなのかと思いました」
「まぁ、あながち間違いないじゃないな、オルカががんばれば」
「父さんっ!!」
真っ赤な顔になって、父を注意するオルカさんを見て、リズは、あれ?と思った。
(あれ?もしかして、もしかして、オルカさん、セブルカさんと両想いなのでは!?え、セブルカさんっっ!!両片想いとか、甘酸っぱい)
ちらりと、リュカに視線を送ると、リュカは頷く。
「あいつら、お互いを意識し過ぎて、ここ数年、一言も喋れなくなったんだ、家族一同見守り体勢にはいってる」
「はぁーーん、なんて甘酸っぱい」
「あのさ」
突然、次男のティシュカが、バンッとナイフとフォークを机に置いた。
「皆浮かれてるけど、僕のこと忘れてない!!」
「へ?」(父)
「あら」(母)
「おや」(兄)
「うるさ」(リュカ)
「エッ」(リズ)
「リュカが将軍職を辞退するって本当にそんなこと許すつもりなの!?そんで、僕が将軍になるって、そんなバカな話しある!!」
「あーー」
「仕方ないわよ」
「それかぁ」
「お前、兄だろ」
「エエっ」
「兄だろじゃ、ないだろ、リュカ!!なんで僕が将軍なんて、無理に決まってんだろ」
「大丈夫だよ、軍義にでて座ってるだけだから」
「んな訳ないだろ!!お前なんで、やめるんだよ、辞めんなよ」
「しょうがないじゃん、リズと一緒にいたいんだから、俺も新人騎士部隊に入るって決めたんすわ」
「決めたんすわじゃねーわ、ダメに決まってるだろ!!何いってんの、まじで、父さん、こいつ、頭イカれてるよ、リズさんも伴侶として叱ってよ」
「えええっ、りゅ、リュカさん、何がどうして」
「ん?将軍職だとやること多くてそばに居られないから、辞めちゃおうと思って、あとちょっとヤることあるし、ちょうど、ティシュカが空いてたからねじ込んどいた」
「軽い!!」
リズは、青ざめた。何がどうして、こんなことにと。
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