魔法使いゴースト

夜鳥すぱり

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出会い

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 それは綺麗な石が散りばめられた、小さな宝箱だった。野薔薇(のばら)は、その小さな宝箱を手にとってじぃっと見つめた。グリーンの石が2つ中央に埋め込まれていて、その石の中に黒い細い線が、角度を変えると丸になったり、細くなったりと、まるで家で飼ってる猫のマーニャの瞳みたいだと思った。

「おじぃちゃん、誕生日プレゼントこれがいいわ」

傍にいた祖父に、野薔薇はこの宝箱をねだることにした。今日は野薔薇の12歳の誕生日、大好きな骨董品の中から何でも選んでよいと羽振りのいい祖父に言われたのだ。

「おや、そんな小さな箱で良いのかい?あっちに御前の好きな織部があったぞ」

「良いの、私、この子が気に入ったから」

野薔薇は、骨董品を気に入るとまるで子猫に話しかけるみたいに、この子という。いつもの調子で、1度決めたことはもう覆らないことを悟った祖父は、店の主を呼んだ。

「すみません、定員さん、これを貰いたいんだが」

「はい、お待たせしました、あら、その箱、開かないけど良いですか?」

「野薔薇良いのか?」

「まぁ!開かずの宝箱なんて素敵、絶対これがいい」

開かない宝箱と聞いて、野薔薇はより喜んだ。定員さんは、そんな野薔薇をみて、小学生らしい夢見がちな女の子だと思った。

「では、こちら千円になります」

いつか大人になったとき、手にしたものに価値が無くても、子供のときにかったものは永遠の宝物だ。このがらくたの箱は幸せだなと、定員さんは、お金と引き換えに可愛らしい女の子の手の中に、小箱を置いた。

「お買い上げありがとうございます」

「はい、ありがとうございます」

満面の笑顔でお礼を言うと、野薔薇は祖父の手をとった。

「お爺ちゃん、ありがとう!大切にするね」
「野薔薇が気に入ったのがあって良かった」

野薔薇の頭をなぜながら、祖父はもう少し高い物をねだっても良かったのになと思ったが、好きになったものにつく価値が人によって違うことをよく知っていたので、自分の、ましてお金の価値でこの小箱をみてはいけないと思い直した。

「さぁ、野薔薇の誕生日プレゼントも買えたし帰ろうか」
「はーい」

元気よく返事して、野薔薇は祖父と手を繋いだまま、帰路についた。







自分の部屋に帰ってきて、野薔薇はこの素敵な小箱を何処に飾るか部屋を見渡した。

年代物の木机の上には、所狭しと骨董品が並んでいて、窓の出窓には、お気に入りの織部の湯飲み、その横に、無名だが綺麗な壺や、花瓶、ティーカップ、硝子コップが並んでいてキラキラと光を受けて輝いている。

「この子も日が当たる方が良いかしら」
「寒いのは嫌いだが眩しいのはあんまり好きじゃない」

「え?キャッ」

小箱の中から声が聞こえた。野薔薇は驚いて小箱をポーンとベッドの上にホウリナゲテしまっまた。


「おいこら、乱暴に扱うな、俺を誰だと思ってる、庶民」

「は、箱が喋ってる!?」

「箱じゃない、これは封印器だ、あの忌々しい魔女が俺を罠にはめて、ここに閉じ込めたんだ、おいおまえ、俺をここから出してくれよ」

「で、でも、悪魔かも」

「ハッ、悪魔なんかじゃないよ、俺はかの有名なアトランティス王に使えた大魔法使いテボラ様だ、知ってるだろ?」

「知らない」

「知らない!?どんだけ無知なんだ、まぁいいから早く開けてくれよ」

「開かないって言ってた、おねぇさんが」

「あくって、2つの石目が真ん丸の時、鍵があく仕組みだ、ほら早く」

「で、でも、怖いことしない?」

「しないって、嫌ならすぐに出ていってやるから」

「解った」

野薔薇は恐々、先程と同じように小箱を手に取り、角度を変えて、石の中の黒い模様が丸になるように調節してゆっくりと小箱を開いた。

ボワワワワン、中から飛び出してきたのはスケスケの海賊みたいな出で立ちの若い男のゴーストだった。

「きゃぁ!!」

「出れたーー!!」


ゴーストは、ふわふわと浮かびながら万歳をして喜んでいる。野薔薇は腰がぬけて、その場にへたりこんだまま、恐怖で固まった。

「あ?なんだよ、おまえ、俺にあえて恐縮すぎたか?」
「こっちこないで」

「失礼なやつだな!俺を誰だと思ってる、俺はかの有名なアトランティス王の」

「知ってるけど!あなた、ゴーストじゃない」

「は?ゴースト?え、あれ?わーーーすけてる!俺の身体がっ!!」

目の前の男のゴーストは、バタバタと自分の身体をみて驚き慌て、野薔薇の部屋の中を飛び回っている、なんだか、その様子が本当に驚いて動揺して気の毒になってきて、野薔薇は落ち着きを取り戻した。






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