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【Q】
④
しおりを挟む「ちゃんと謝ろうと思った。アイのこと理解しようと思ってた筈なのに、そう決意していたのに、突然のことで腰が引けてしまって……すごく恥ずかしい。申し訳なかったと思ってる。本当にごめん」
それでも蓮太は、ちゃんとひと晩で整理して、私を受け入れようとしてくれている。その気持ちは、痛いほど伝わってくる。
「怒ってないよ。私もたぶん、びっくりしただけ。忘れよう?」
すると蓮太は体を斜めにして、あらためて私の顔を見て言う。少し泣きそうなその表情が、愛おしいと思った。
「いや、忘れない。一生憶えてる。昨日俺に言ってくれた全てをひっくるめて、あらためてアイのことを知っていこうって、そう思ったんだ」
「……本気で言ってる?」
「ああ。本気だ」
「怖く、ないの? 私が」
「怖い? そんな風に思ったことは、一度も無いよ」
「……私、なんて言うか……蓮太と正反対の人間だよ? 蓮太の正義や優しさに甘えていい人間じゃない」
「そんなことない。やっぱり、あれは事故だと思う。よく考えてさ、こどもの純粋な好奇心が命の重さに勝ってしまうことも、絶対に無い話じゃないって、そう思った。大きくなった今は常識的に思うことも、欲求に素直で従順な小さい幼稚園児に、その時常識と考えられなかったことだって、あるって思ったんだ」
蓮太はきっと、その純んだ心でそんな推論をいっぱい考えてくれたんだ。
ガチャガチャに鋭く尖って危険な私の『本当のこと』を、傷付けずにゆるく包みこもうと優しく受け入れている。
「アイは、何も悪くない」
蓮太の両の目尻から、ひと粒づつ非対称に零れていた。
この人は本当に優しいから、想像も出来ないような葛藤を嚙み砕いて、降りかかった疑問に答えを見出そうとしてくれている。
私はずっと、蓮太の優しさに気付かないふりをして甘え続けているだけだ。
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