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再び西へ(その3)

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 観音寺城から旅立って京に到着した源太郎は、六角定頼が手配した先触れのお陰で、待たされる事無く将軍・
足利義晴に拝謁できた。

 将軍家御所

 「ご尊顔を拝し奉り恐悦至極にござります」

 「管領代・武田信義よ、面を上げい」

 「ははっ!」
 
 「何事か大変であったそうじゃのう」

 「ははっ!恐れ入り奉ります・・・」

 源太郎は駿河でのイスパニア人が襲撃して来た事のあらましを語った。

 「で、願いとは何じゃ?」

 「恐れながら、上様より各大名小名家へ、此度の駿河での事を注意喚起の旨、、お伝え願えれば・・・と考えております」

 「相解りました。そなたの願い、計らいましょうぞ」

 「ははっ!有難き幸せ!」

 こうして駿河での出来事は幕府によって、全国の大名家へ伝達される事となる。






 京でのやるべき事を終えた源太郎は摂津・池田城の北畠晴具を訪ねた。

 「武田殿、如何なされた?そなたも忙しき御仁じゃのぅ」

 「北畠様、駿河が外つ国の船団に襲撃されました」

 「何じゃと?!では此度の来訪はそれ絡みか?」

 「その通りでござる。先ずはこれを見て下され」

 源太郎は5丁の短銃を側用人に渡し、晴具の元へ持って行かせた。

 「何じゃ?これは?」

 「鉄砲と言い、襲って参ったイスパニアと言う国の者達が使っておる武器でござる。その筒の部分から、火薬と申す薬を爆発させた力を利用して、金属の玉を打ち出すのでござる」

 「なるほど。されど、不便そうな物じゃの」

 「不便とは?」

 「弓と違い、次を打つのに手間がかかりそうじゃ」

 「なるほど、流石は弓の名手として名高い北畠様ならではの見解でござる」

 「何やら引っかかる物言いじゃのぅ?」

 「我らが調べた鉄砲と弓の違いでござるが、鉄砲が次発を打つまでに弓は3射でき申す。されど、1射当たりの威力と射程の長さが弓よりも優れて居り申す。ここが長所か短所か解りませぬが、打つ時に大きな音が響き渡りまする故、騎馬隊の傍では使えませぬ」

 「そなたなら、使い分けは考えて居ろうが?」

 「ある程度は・・・」

 「ならば良いではないか?」

 「どう考えても騎馬隊との連携がやり難いのでござる」

 「それ程の轟音なのか?」

 「まことに・・・」

 「そなたでも頭を悩ます事はあるのじゃのぅ・・・初めて見たわ」

 「お人が悪うござるぞ」

 「ハハハ、許せ。されど、イスパニアとやらの国にも騎馬隊はあるのであろう?」

 「そうでござった!そこは尋問して居らなんだ」

 「仕方のない事であろう。何しろ初めてだらけの事であろうからの」

 「他の方との話は大事でござるなぁ・・・」

 「おいおい武田殿!そなたの年齢で何を爺臭い事を申される」

 「何しろ、それがしを筆頭にして、領内の者達がやる事目白押しにて、話す暇もない程でござる」

 「ならば、他国の者達を勧誘すれば良いではないか?平穏なそなたの領内であれば希望する者は多いであろう」

 「では、ここまで来ました故、手土産に勧誘していこうと思いまするが、どこの国の者に声をかければ宜しいか、解りませぬが・・・」

 「ならば、隣の播磨は如何?未だ小さな紛争が頻発して居る地域故、話を聞くだけの者はおるであろう」

 「では、行ってみる事に致し申す」

 「暫くここに逗留なされて、播磨の民をゆるりと品定めされるが好い」

 「お言葉に甘えさせて頂きまする」

 「おお、そう為されるが好い」

 源太郎は暫く摂津に留まる事となった。






 

 


 







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