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尾張にて
しおりを挟む織田信秀が武田に属した知らせは、守護職斯波家・守護代織田家のそれぞれの人達に衝撃をもたらす事になる。
尾張守護・斯波義統は二人の守護代・織田達勝(みちかつ)と織田信安を守護邸へ呼んだ。
「達勝、そなたの家臣の信秀が武田に降ったそうじゃが、まことか?!」
「はっ!恐れ多き事ながら・・・」
「信秀は戦上手ではなかったのか?」
「武田家の当主自らが勝幡城へ出向き、降伏を促したそうでございます」
「達勝、信秀も意気地の無い男児よのぅ。城内に来たのであれば誅すればよいモノを」
「はっ!まことに・・・」
「して、武田をそなたは如何するのじゃ?」
「はっ!那古野城を攻めまする」
「勝てるか?は尋ねぬぞ」
「はっ!必ず勝ちます故」
「好き知らせを待っておるぞ」
「承りましてございます。では早速準備があります故・・・」
織田達勝は一礼して守護邸を辞していく。
「さて信安よ、率直に聞く。そなた武田と戦して勝てるか?」
「相手がある事ゆえ、やった事が無い相手では何とも言えませぬ」
「ならば、そなたは如何する?」
「達勝の家とは因縁がありまするが、此度は力添えいたしまする」
「そうか?ならば行け!」
「はっ!」
織田信安も居城への帰途へ着く。
織田達勝も織田信安も帰り道の道中同じ言葉を吐き捨てた。
「「何も知らぬお飾りが!」」
織田達勝の清洲城と織田信安の岩倉城の動向は、商人たちの噂で瞬く間に尾張中に広がった。
源太郎は那古野城へ諸将を呼んだ。
集まったのは、飯田城から福島正成(くしま・まさしげ)と綱成の親子・岡崎城から甘利虎泰・源太郎に付き従っている者が、承芳改め、今川義元と岡部親綱、太原雪斎、宇佐美定満、馬場虎貞の養子の信春、そして那古屋城の真田幸隆と長尾為景、新たに加わった勝幡城の織田信秀である。
「各々方、お集まり頂き感謝致し申す。さて、近日中に織田達勝と織田信安がここへ攻めてくると商人たちが騒いでおる。皆の考えを聞きたいが、信秀殿、攻めて来られる両名は如何なる人物でござろう?」
「はっ!両名とも野心強く誇り高き者にて、ここへは最大兵力を以て攻め掛かるかと考えます」
「かたじけない。信秀殿、解り申した。福島正成殿、綱成殿、どちらでも良い、尾張へ出て参らぬか?」
親子は顔を見合わせた。
「「どの様な意味で?…」」
「決まっており申す!此度落とす清洲城か岩倉城をお願いしたい。人手が足りぬ」
「有難き幸せ!ならば、倅・綱成をお出しいたします」
「どちらが欲しい?」
「ならば、清洲城を・・・」
「よし、馬場信春を付ける故、清洲城が空になるのを見計らい攻め落とせ」
「「「ははっ!」」」
「岩倉城にはワシが出向く。信春、清洲城が終わったら岩倉城へ来るのじゃ。そなたにその城任せる」
「はっ!有難き幸せ!」
「幸隆に為景殿、攻めてくる者共をなるべく長く引き留めておいて欲しい」
「「ははっ!」」
「信秀殿は勝幡城にて待っていて下され。合図とともに寄せ手を押し包みましょうぞ」
「はっ!」
織田達勝と織田信安が全軍を率いて那古野城を包囲した頃、空になった清洲城が福島勢に降伏し入城を許した。
同様に岩倉城も源太郎の軍勢がが入城した。
源太郎は馬場信治が岩倉城へ到着するのを待って、織田信秀に使いを出し那古野城へ向かう。
源太郎の軍勢と織田信秀の軍勢が那古野城を囲む織田達勝と織田信安の目の前に現れた。
「那古野城を囲んでおられる清洲と岩倉の織田家の方々、それがしは武田家当主・源太郎信義でござる。そちらの城は既に落ち申した。我等に降伏して頂きたい」
源太郎が寄せ手へ呼びかける。
「「何を馬鹿な事を!」」
そこへ達勝の養子・因幡守織田家の信友が駆け込んできた。
「義父上、信安殿、清洲城も岩倉城も落ちましてございます」
「「ならば総大将を討ち取れば良いのよ!武田の当主へ突っ込め~っ」」
「わあ~っ!」と叫びながら、清洲勢と岩倉勢が突っ込んでくる。
それを待っていたかの様に信秀の軍勢と那古野城の軍勢が出て来て寄せ手を押し包む。
やがて織田達勝と織田信安、織田信友が討ち取られると、清洲勢と岩倉勢は降伏した。
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