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シーズン4
少女に憑くもの
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ジレンマがファイルを持ってきた。
「これこれ、昨日きた依頼なんだけど緊急性のある案件でね、お願いするよ」
案件の内容はこうだ、高校生の娘につきまとう霊体。今のところ被害はないが、毎晩襲う悪夢になやまされている。
成田美海 17歳、都内に住む
私立高校生 両親は環境省の役人か。
「今、親子さんと連絡とって放課後に駅前カフェに来てもらうようアポをとったから時間になったら待ち合わせ場所にいってくれないか」
「わかりました」
「時間までくつろいでくれ、私は下の店舗にいる。」
ジレンマは下のカウターに降りていった。
「風間くんそろそろ向かってもらえるかな」
「わかりました」
「何かあったら連絡して」
ジレンマから少女の連絡先とジレンマの連絡先を渡された。
指示のあったカフェに入り依頼人を待つ。
「美海また明日ね」
美海?あの子が今回の依頼人の子か。
「パラドックスの方ですか?」
「あぁそうだ、どうぞ座って」
俺は店員を呼び、飲み物を注文する。
政府のお偉い方の娘ということもあり
真面目そうな感じだ。
「僕は風間、パラドックスのものだ、親御さんは?」
「母は仕事でこれそうもないので1人できました。」
「わかった、悩んでいるのが君なら問題ない、話を聞かせてくれ」
美海はスマホを差し出し画像ホルダーを開いた。
「2週間前に友達たちとスマホで写真取ったんです」
美海はスマホを差し出した、4人で仲良さそうに記念撮影したような画像だ。
美海は中央にいて左2人、右に1人。
「ここに女の人のような顔があって」
よく見ると確かに美海と右隣の女の子間に顔のようなものが写っている。
「次の画像も見てください、これは3日後の画像です。」
どこかの橋で美海と女友達が2人で写っている画像だ。
「この背後に同じような女性が写っているんです、手すりギリギリでとったので私たちの後ろだと宙に浮いてないと辻褄が合わないと思うんです。」
確かに顔の大きさといい、美海の背後3メートルくらい後方くらいのスケールになってる。
その他にも美海は2、3枚画像を見せた、どれも同じような女性が映り込んでいる。
「中には被っている友達もいるんですけど、私とその女性がセットになっていて、私がカメラマンになってとった写真には写り込んでないんです。。。」
美海の言うとおり、彼女が写っている画像のみこの女性が写っている。
「何か心当たりはあるか?」
「全くないです、この画像とってから毎晩夢の中でこの女性が現れ、何かを言ってるのですが、声が聞き取れなくて、そしてうなされ目が覚めるんです。」
この子にこの女が憑いているのは間違いない、今、霊視を始めたが確かに後ろにいやがる。今すぐ焼き払ってもいいが、何か裏があるなぁ、本体はこいつじゃねぇ。
「確かにお前には女の霊体が取り憑いている、それを今祓う事もできる」
「お願いします、元の生活にもどりたいんです。」
「ただし、きっとまた取り憑かれるだろう」
「どう言う事ですか?」
俺は美海にこいつが本体ではないことを伝えた。この霊体を美海に差し向けるトリガーとなった事があるはずだ。
しかしただの女子高生に恨みを持つ本体とは
どんな奴なんだ。
「今、後ろにいる霊体は口をわらないしな。。。」
「どう言う事ですか?」
「成仏ってのは、簡単に言うと、言い分を聞いたり、理解して怒りを鎮める必要がある、未練を断ち切り、輪廻転生なのか、天国か地獄か分からないが次への一歩へ導くことなんだ。」
「本体にそれをしてあげないと、解決しないと言う事?」
俺は頷き、些細な事でもきっかけがないか2週間前の記憶を辿らせた。
「あの日、母が学生時代の同窓会に行っていて、帰りが遅かったのと、久しぶりの友人との再会だったのに帰ってから何も言わず寝室にいってしまったのですが、関係はないですよね?」
「お父さんはどう?」
「父は特に変わりないと思います」
母親と一度会ってみた方が何か掴めそうだなぁ。
「そうだ、母親から貰ったものとか、身につけていた物とかないよね?」
美海はカバンの中を漁りだした?
「母のものは、ないかと思いますが。。。あっ、このハンカチ、今朝学校行く時に部屋にハンカチを忘れてしまって玄関先で母のを借りて登校しました」
美海は一枚の花柄のハンカチを取り出した。
「ちょっと貸してみて」
俺は霊力を解放して霊視を始めた。
うっすらだけど何か見える。
2年B組の看板、そして、戯れる女子高生。
何人かで一件の家に入っていった。
男性と女性の怒号?
ダメだ、残留思念が僅かすぎる。
「母親は何時くらいに手が空くかな?」
「19時くらいなら連絡取れると思います」
「そしたら20時にパラドックスに来てもらえるかな」
美海は母親にLINEをして、ひとまずで母親を待つためパラドックスに向かった。
美海はカフェに来た時よりも僅かながら
笑顔が増えてきた。きっと相談を聞いてあげた事により、恐怖が少し和らいだのだろう。
「おかえり、あれ、美海ちゃん?」
「そうです、こんにちは」
「ジレンマ、母親が来るまで2階で待たせてもらう」
「あぁ、わかった。」
俺と美海は2階にあがり、母親の連絡を待つ事にした。
ー19:00ー
「母から返信来てここに来てくれるようです。」
美海の母親と連絡は取れた、解決の糸口が見つかればいいのだが。。。
「風間さん、母がもうすぐ来ます」
俺はいつの間にか眠っていた。
時計を確認するともうすぐ20:00だ。
「美海外にでるぞ」
俺は美海を誘い店の外にでる。
万が一母親に何か取り憑いていた場合、この強力な結界の中に入れても一時的に母親から離れてしまう可能性があるからだ。
「母です」美海は向かいの通りにとまったタクシーを指差した。
タクシーからおりた女性は左右の安全を確認してこちら駆け寄る。
「すみません、遅くなり、美海の母です」
「お母さん早速ですが場所を移動して宜しいでしょうか?」
3人でさっきのカフェに移動する。
俺は早速元凶かもしれない、同窓会の話を伺った。同窓会は女子校時代の集まりで高校3年の時の吹奏楽部のメンバーで行ったようだ。
俺が霊視でみた2年B組になにか覚えがないか聞いてみると、母親は美海を外させた。
「ごめんなさい、美海の前では話しずらいことなので。。。」
母親は苦悶の表情で話し始めた。
高校3年の頃の吹奏楽のコンクールの練習に明け暮れていた。
全国で上位のレベルを誇る学校だったために、練習も上下関係も厳しい部活であり、イジメなんて事もよく行われていたようだ。
2年B組にひとつ年下の千尋という、トロンボーン奏者がいて度々演奏をミスすることからイジメの対象になっていたようだ。
美海の母はそんな千尋をいつも慰めてあげてたようだが、イジメの指導者、明子がある日こんな事を提案してきた。
学校からほど遠くないところに一件の空き家があり、そこに千尋を誘い出し閉じ込めていじめよういう計画だ。
美海の母は明子の指示で千尋をその一軒家に誘き出せと命じられた。どんな結末か想像できるものの仕返しを恐れていたため、仕方なく千尋を放課後誘い出した。
ただ閉じ込めると聞いていたのに、結果は想像を遥かに超えるものであった。
家の中には明子の友人の男子校生が潜んでおり、性的暴力をうけインスタントカメラでその様子を撮影された。
笑いながら一軒家から出てきた、若者たち。
美海の母は中に入れず、立ち去ってしまった。次の日から千尋は不登校になり、3年生が卒業をひかえた半年後、自ら命を経ってしまったとのことだ。
当時の友人の子供が事故や病気で3人もなくなっているという不自然な点があり、どの子も高校2年の時に亡くなっているというはなしになり、タブーである千尋の名前がでてきた。首謀者の明子とは連絡が取れないようだった。今回の同窓会はそんな話題がほとんどだった。
「なるほど、これはちょっと娘さんには言えないですね」
「美海の悪夢といい写真といい不安なんです。」
「ちなみに写真に映る女性はその千尋なんです?」
「似てるといえば似てるのですが。」
俺は今回のこの怪現象を止めて、美海を救うには母親にある覚悟をして貰わなければならなかった。
「この怪現象を終わらせるには、お母さんあなたの覚悟が必要です。過去に自分が犯した罪を娘に伝えなくてはならない。その覚悟はありますか?」
母親は目に涙を滲ませながら、頷いた。
「わかりました、早速始めましょう」
僕は美海を手招きし、母親の隣に座らせた。
「今から2人同時に霊視をする、美海、お母さんの記憶を見るかもしれないが、お母さんの好きな所だけを考えろ、優しい母親、家族との思い出そんな事だけを信じろ、わかったか?」
美海は戸惑いながらも頷いた。
俺は迦楼羅炎を解放した🔥
背後を灼熱の炎が燃え上がる。
その炎を両手に集中して2人の手を握った。
俺が見る光景はこの親子にも見えるはず。
目の前にあるのは、あの一軒家と外には母親の姿がある。
中から数人の若者が出てきた。
事件のあった当日のようだ。
この家の中に千尋がいるはず、俺は家の中に入って行った。
中はごく一般の作りになっている。
空き家になってからおよそ10年くらいか室内は埃っぽい。
一階には千尋はいない、2階か?
階段を登り2階に向かう。
中は夕方ともあり薄暗い、2階に上がると3つ扉がある。少し物音がする一番左の部屋に入る。
千尋の姿が見えない、でも畳には僅かな血痕跡がありこの部屋で間違いない。
部屋の左手に押し入れがある。
押し入れの中から音がする。
「ガリガリガリ」
襖をゆっくりと開けると膝を抱えてうずくまる千尋の姿がある。
肌が露出してる部分にはアザが複数あり、なんとも無残な姿だった。
それから場面が変わり、彼女の自宅であろう場所にかわった。
千尋は部屋を飛び出して廊下の突き当たりにあるトイレに駆け込む。
嗚咽をしながら、トイレで倒れ込む。
千尋の力なきその手には妊娠検査機が
彼女は妊娠していた。
きっとあの時、暴行された時に宿されてしまったのであろう。
そのまま場面が切り替わる。
寒空の河川敷?
千尋は国道が上を走る橋下にいた。
少し膨らんだお腹に手をあて、ゆっくりと川の中へ引きづり込まれていく。
結果的に千尋の独断で生まれてきたいという新しい命の希望をたってしまった、若き母親、千尋であった。
僕はゆっくりと目を開けた。
寝の前には泣き崩れる親子の姿があった。
「今のはお母さんに憑いている千尋さんの当時の記憶です。当事者は恨まれても仕方のない、許されぬ行為だったと思いますか?」
「はい。。。」母親は涙をハンカチで拭いながら小さな声で返事をした。
「千尋さんは貴方と娘さんに同じ報いを望んでいます、俺の力では娘さんは救うことはできても貴方のことは救うことはできない。」
「貴方が全てを背負うと言うことで千尋あんと交渉しますが、その覚悟はありますか?」
「娘が助かるならどんな事でも構いませんお願いします。」
俺はわかりましたと回答し、3人でパラドックスに一度戻った。
午前0時までこの店から絶対でないよう美海に伝え、母親とともにタクシーにのり込み。
自殺した河川敷に向かう。
当時と同じような凍てついた風が吹き付ける河川敷、周りには誰もいない。
「いるのはわかっている、出てきてくれないか?」
ピリピリと霊気が辺りを漂う。
千尋が姿を現した、ずぶ濡れの制服姿、
体はふやけて、所々肌が溶けている。
そしてもう1人、千尋の生まれてくるはずだった娘だ、20歳くらいか?生まれてくればこのくらいであろう年頃だ。
ただ、数多くの念や呪い殺した、子供たちの念を吸収したせいか単体というよりは複合体だ。
まずは話ができるようこちらの力を見せつける必要がある。
俺は力を解放し迦楼羅炎を燃え上がらせる。
さてとどう交渉するか。
「驚かしてすまん、正直、千尋あんたも、その娘もこの炎で消し去ることは簡単にできる。」
千尋の表情を全く変わらず、こちらを見つめたまま。
「お前の恨み辛みは、見せてもらって重々承知してる。でもよく考えてみろ、その子はお前の弱さが原因で産声をあげれなかった。」
「だからこの人の娘は見逃して、この人の命だけで勘弁して貰えないか?この条件を飲めば、お前ら2人を輪廻できるよう、上げてやる」
交渉を持ちかけたが状況は変わらず、一か八か俺は美海の母親を川に突き落とした。
「バシャン」母親は暗く冷たい川に流されていった。
千尋はあっけない復讐の結末を見つめる。
そして千尋は娘の手を取り、俺に手を差し伸べてきた。
「交渉成立だな。」
俺は千尋の手を取り、霊視を始めた。
間接的な霊視と比べることのできない、恨み辛み、悲しみが溢れ出してくる。
これがイジメを受ける側の感情、それは底なしのように溢れてくる。
「思い残すことはないな」
千尋は頷くと、閃光を放ち、天へがっていった。
俺は複雑な気持ちを抱えて、パラドックスに向かった。
「おかえり」ジレンマ
「ただいま、成仏完了だ、美海は?」
「上で母親と待っている」ジレンマ
俺は階段を上がり2階に
「風間さん!」美海
「問題は解決した安心しろ、今からいつもどおりの生活だ」
「本当ですか?なんとお礼をすればいいか。。。ありがとうございます」母親
「早く家に帰って、飯食って寝て、いい夢みろ」
実は河川敷に行く前にパラドックスにもどった。パラドックスは強力な結界があるため千尋の霊体は入ってくれない。
そこで今回は人形をつかった。
母親の髪と爪を仕込ませ、完全なるダミーを作成したわけだ。
千尋には悪いが、母親の命を引き換えにしたと思ってもらった。
千尋親子、美海親子お互いが幸せになる選択だ。
ジレンマの奴、簡単な依頼からとか言ってたのにこれかよ。
次なる依頼はなんなのか、風間の新たな道は始まったばかりだ。
ご愛読ありがとうございます。
お気に入りコメントも是非頂けたら励みになります。よろしくお願いします🌈
「これこれ、昨日きた依頼なんだけど緊急性のある案件でね、お願いするよ」
案件の内容はこうだ、高校生の娘につきまとう霊体。今のところ被害はないが、毎晩襲う悪夢になやまされている。
成田美海 17歳、都内に住む
私立高校生 両親は環境省の役人か。
「今、親子さんと連絡とって放課後に駅前カフェに来てもらうようアポをとったから時間になったら待ち合わせ場所にいってくれないか」
「わかりました」
「時間までくつろいでくれ、私は下の店舗にいる。」
ジレンマは下のカウターに降りていった。
「風間くんそろそろ向かってもらえるかな」
「わかりました」
「何かあったら連絡して」
ジレンマから少女の連絡先とジレンマの連絡先を渡された。
指示のあったカフェに入り依頼人を待つ。
「美海また明日ね」
美海?あの子が今回の依頼人の子か。
「パラドックスの方ですか?」
「あぁそうだ、どうぞ座って」
俺は店員を呼び、飲み物を注文する。
政府のお偉い方の娘ということもあり
真面目そうな感じだ。
「僕は風間、パラドックスのものだ、親御さんは?」
「母は仕事でこれそうもないので1人できました。」
「わかった、悩んでいるのが君なら問題ない、話を聞かせてくれ」
美海はスマホを差し出し画像ホルダーを開いた。
「2週間前に友達たちとスマホで写真取ったんです」
美海はスマホを差し出した、4人で仲良さそうに記念撮影したような画像だ。
美海は中央にいて左2人、右に1人。
「ここに女の人のような顔があって」
よく見ると確かに美海と右隣の女の子間に顔のようなものが写っている。
「次の画像も見てください、これは3日後の画像です。」
どこかの橋で美海と女友達が2人で写っている画像だ。
「この背後に同じような女性が写っているんです、手すりギリギリでとったので私たちの後ろだと宙に浮いてないと辻褄が合わないと思うんです。」
確かに顔の大きさといい、美海の背後3メートルくらい後方くらいのスケールになってる。
その他にも美海は2、3枚画像を見せた、どれも同じような女性が映り込んでいる。
「中には被っている友達もいるんですけど、私とその女性がセットになっていて、私がカメラマンになってとった写真には写り込んでないんです。。。」
美海の言うとおり、彼女が写っている画像のみこの女性が写っている。
「何か心当たりはあるか?」
「全くないです、この画像とってから毎晩夢の中でこの女性が現れ、何かを言ってるのですが、声が聞き取れなくて、そしてうなされ目が覚めるんです。」
この子にこの女が憑いているのは間違いない、今、霊視を始めたが確かに後ろにいやがる。今すぐ焼き払ってもいいが、何か裏があるなぁ、本体はこいつじゃねぇ。
「確かにお前には女の霊体が取り憑いている、それを今祓う事もできる」
「お願いします、元の生活にもどりたいんです。」
「ただし、きっとまた取り憑かれるだろう」
「どう言う事ですか?」
俺は美海にこいつが本体ではないことを伝えた。この霊体を美海に差し向けるトリガーとなった事があるはずだ。
しかしただの女子高生に恨みを持つ本体とは
どんな奴なんだ。
「今、後ろにいる霊体は口をわらないしな。。。」
「どう言う事ですか?」
「成仏ってのは、簡単に言うと、言い分を聞いたり、理解して怒りを鎮める必要がある、未練を断ち切り、輪廻転生なのか、天国か地獄か分からないが次への一歩へ導くことなんだ。」
「本体にそれをしてあげないと、解決しないと言う事?」
俺は頷き、些細な事でもきっかけがないか2週間前の記憶を辿らせた。
「あの日、母が学生時代の同窓会に行っていて、帰りが遅かったのと、久しぶりの友人との再会だったのに帰ってから何も言わず寝室にいってしまったのですが、関係はないですよね?」
「お父さんはどう?」
「父は特に変わりないと思います」
母親と一度会ってみた方が何か掴めそうだなぁ。
「そうだ、母親から貰ったものとか、身につけていた物とかないよね?」
美海はカバンの中を漁りだした?
「母のものは、ないかと思いますが。。。あっ、このハンカチ、今朝学校行く時に部屋にハンカチを忘れてしまって玄関先で母のを借りて登校しました」
美海は一枚の花柄のハンカチを取り出した。
「ちょっと貸してみて」
俺は霊力を解放して霊視を始めた。
うっすらだけど何か見える。
2年B組の看板、そして、戯れる女子高生。
何人かで一件の家に入っていった。
男性と女性の怒号?
ダメだ、残留思念が僅かすぎる。
「母親は何時くらいに手が空くかな?」
「19時くらいなら連絡取れると思います」
「そしたら20時にパラドックスに来てもらえるかな」
美海は母親にLINEをして、ひとまずで母親を待つためパラドックスに向かった。
美海はカフェに来た時よりも僅かながら
笑顔が増えてきた。きっと相談を聞いてあげた事により、恐怖が少し和らいだのだろう。
「おかえり、あれ、美海ちゃん?」
「そうです、こんにちは」
「ジレンマ、母親が来るまで2階で待たせてもらう」
「あぁ、わかった。」
俺と美海は2階にあがり、母親の連絡を待つ事にした。
ー19:00ー
「母から返信来てここに来てくれるようです。」
美海の母親と連絡は取れた、解決の糸口が見つかればいいのだが。。。
「風間さん、母がもうすぐ来ます」
俺はいつの間にか眠っていた。
時計を確認するともうすぐ20:00だ。
「美海外にでるぞ」
俺は美海を誘い店の外にでる。
万が一母親に何か取り憑いていた場合、この強力な結界の中に入れても一時的に母親から離れてしまう可能性があるからだ。
「母です」美海は向かいの通りにとまったタクシーを指差した。
タクシーからおりた女性は左右の安全を確認してこちら駆け寄る。
「すみません、遅くなり、美海の母です」
「お母さん早速ですが場所を移動して宜しいでしょうか?」
3人でさっきのカフェに移動する。
俺は早速元凶かもしれない、同窓会の話を伺った。同窓会は女子校時代の集まりで高校3年の時の吹奏楽部のメンバーで行ったようだ。
俺が霊視でみた2年B組になにか覚えがないか聞いてみると、母親は美海を外させた。
「ごめんなさい、美海の前では話しずらいことなので。。。」
母親は苦悶の表情で話し始めた。
高校3年の頃の吹奏楽のコンクールの練習に明け暮れていた。
全国で上位のレベルを誇る学校だったために、練習も上下関係も厳しい部活であり、イジメなんて事もよく行われていたようだ。
2年B組にひとつ年下の千尋という、トロンボーン奏者がいて度々演奏をミスすることからイジメの対象になっていたようだ。
美海の母はそんな千尋をいつも慰めてあげてたようだが、イジメの指導者、明子がある日こんな事を提案してきた。
学校からほど遠くないところに一件の空き家があり、そこに千尋を誘い出し閉じ込めていじめよういう計画だ。
美海の母は明子の指示で千尋をその一軒家に誘き出せと命じられた。どんな結末か想像できるものの仕返しを恐れていたため、仕方なく千尋を放課後誘い出した。
ただ閉じ込めると聞いていたのに、結果は想像を遥かに超えるものであった。
家の中には明子の友人の男子校生が潜んでおり、性的暴力をうけインスタントカメラでその様子を撮影された。
笑いながら一軒家から出てきた、若者たち。
美海の母は中に入れず、立ち去ってしまった。次の日から千尋は不登校になり、3年生が卒業をひかえた半年後、自ら命を経ってしまったとのことだ。
当時の友人の子供が事故や病気で3人もなくなっているという不自然な点があり、どの子も高校2年の時に亡くなっているというはなしになり、タブーである千尋の名前がでてきた。首謀者の明子とは連絡が取れないようだった。今回の同窓会はそんな話題がほとんどだった。
「なるほど、これはちょっと娘さんには言えないですね」
「美海の悪夢といい写真といい不安なんです。」
「ちなみに写真に映る女性はその千尋なんです?」
「似てるといえば似てるのですが。」
俺は今回のこの怪現象を止めて、美海を救うには母親にある覚悟をして貰わなければならなかった。
「この怪現象を終わらせるには、お母さんあなたの覚悟が必要です。過去に自分が犯した罪を娘に伝えなくてはならない。その覚悟はありますか?」
母親は目に涙を滲ませながら、頷いた。
「わかりました、早速始めましょう」
僕は美海を手招きし、母親の隣に座らせた。
「今から2人同時に霊視をする、美海、お母さんの記憶を見るかもしれないが、お母さんの好きな所だけを考えろ、優しい母親、家族との思い出そんな事だけを信じろ、わかったか?」
美海は戸惑いながらも頷いた。
俺は迦楼羅炎を解放した🔥
背後を灼熱の炎が燃え上がる。
その炎を両手に集中して2人の手を握った。
俺が見る光景はこの親子にも見えるはず。
目の前にあるのは、あの一軒家と外には母親の姿がある。
中から数人の若者が出てきた。
事件のあった当日のようだ。
この家の中に千尋がいるはず、俺は家の中に入って行った。
中はごく一般の作りになっている。
空き家になってからおよそ10年くらいか室内は埃っぽい。
一階には千尋はいない、2階か?
階段を登り2階に向かう。
中は夕方ともあり薄暗い、2階に上がると3つ扉がある。少し物音がする一番左の部屋に入る。
千尋の姿が見えない、でも畳には僅かな血痕跡がありこの部屋で間違いない。
部屋の左手に押し入れがある。
押し入れの中から音がする。
「ガリガリガリ」
襖をゆっくりと開けると膝を抱えてうずくまる千尋の姿がある。
肌が露出してる部分にはアザが複数あり、なんとも無残な姿だった。
それから場面が変わり、彼女の自宅であろう場所にかわった。
千尋は部屋を飛び出して廊下の突き当たりにあるトイレに駆け込む。
嗚咽をしながら、トイレで倒れ込む。
千尋の力なきその手には妊娠検査機が
彼女は妊娠していた。
きっとあの時、暴行された時に宿されてしまったのであろう。
そのまま場面が切り替わる。
寒空の河川敷?
千尋は国道が上を走る橋下にいた。
少し膨らんだお腹に手をあて、ゆっくりと川の中へ引きづり込まれていく。
結果的に千尋の独断で生まれてきたいという新しい命の希望をたってしまった、若き母親、千尋であった。
僕はゆっくりと目を開けた。
寝の前には泣き崩れる親子の姿があった。
「今のはお母さんに憑いている千尋さんの当時の記憶です。当事者は恨まれても仕方のない、許されぬ行為だったと思いますか?」
「はい。。。」母親は涙をハンカチで拭いながら小さな声で返事をした。
「千尋さんは貴方と娘さんに同じ報いを望んでいます、俺の力では娘さんは救うことはできても貴方のことは救うことはできない。」
「貴方が全てを背負うと言うことで千尋あんと交渉しますが、その覚悟はありますか?」
「娘が助かるならどんな事でも構いませんお願いします。」
俺はわかりましたと回答し、3人でパラドックスに一度戻った。
午前0時までこの店から絶対でないよう美海に伝え、母親とともにタクシーにのり込み。
自殺した河川敷に向かう。
当時と同じような凍てついた風が吹き付ける河川敷、周りには誰もいない。
「いるのはわかっている、出てきてくれないか?」
ピリピリと霊気が辺りを漂う。
千尋が姿を現した、ずぶ濡れの制服姿、
体はふやけて、所々肌が溶けている。
そしてもう1人、千尋の生まれてくるはずだった娘だ、20歳くらいか?生まれてくればこのくらいであろう年頃だ。
ただ、数多くの念や呪い殺した、子供たちの念を吸収したせいか単体というよりは複合体だ。
まずは話ができるようこちらの力を見せつける必要がある。
俺は力を解放し迦楼羅炎を燃え上がらせる。
さてとどう交渉するか。
「驚かしてすまん、正直、千尋あんたも、その娘もこの炎で消し去ることは簡単にできる。」
千尋の表情を全く変わらず、こちらを見つめたまま。
「お前の恨み辛みは、見せてもらって重々承知してる。でもよく考えてみろ、その子はお前の弱さが原因で産声をあげれなかった。」
「だからこの人の娘は見逃して、この人の命だけで勘弁して貰えないか?この条件を飲めば、お前ら2人を輪廻できるよう、上げてやる」
交渉を持ちかけたが状況は変わらず、一か八か俺は美海の母親を川に突き落とした。
「バシャン」母親は暗く冷たい川に流されていった。
千尋はあっけない復讐の結末を見つめる。
そして千尋は娘の手を取り、俺に手を差し伸べてきた。
「交渉成立だな。」
俺は千尋の手を取り、霊視を始めた。
間接的な霊視と比べることのできない、恨み辛み、悲しみが溢れ出してくる。
これがイジメを受ける側の感情、それは底なしのように溢れてくる。
「思い残すことはないな」
千尋は頷くと、閃光を放ち、天へがっていった。
俺は複雑な気持ちを抱えて、パラドックスに向かった。
「おかえり」ジレンマ
「ただいま、成仏完了だ、美海は?」
「上で母親と待っている」ジレンマ
俺は階段を上がり2階に
「風間さん!」美海
「問題は解決した安心しろ、今からいつもどおりの生活だ」
「本当ですか?なんとお礼をすればいいか。。。ありがとうございます」母親
「早く家に帰って、飯食って寝て、いい夢みろ」
実は河川敷に行く前にパラドックスにもどった。パラドックスは強力な結界があるため千尋の霊体は入ってくれない。
そこで今回は人形をつかった。
母親の髪と爪を仕込ませ、完全なるダミーを作成したわけだ。
千尋には悪いが、母親の命を引き換えにしたと思ってもらった。
千尋親子、美海親子お互いが幸せになる選択だ。
ジレンマの奴、簡単な依頼からとか言ってたのにこれかよ。
次なる依頼はなんなのか、風間の新たな道は始まったばかりだ。
ご愛読ありがとうございます。
お気に入りコメントも是非頂けたら励みになります。よろしくお願いします🌈
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【表紙はたいとるぐらふぃ様を使わせていただいてます。ありがとうございます。】
2021/7/8追記
お久しぶりです。たまたま暇だからと書いた小説をあげるためにこのサイトに来たら、過去に書いたものがあってびっくりしています。書いた当時は中学生だったこともあって、恥ずかしくてまだ読み返せてはいないのですが、いつか読み返せたらどっかで書き直したいです。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
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