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12話 生贄

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「なんとなく、状況は理解したけど田中さんはいいのか?」

「え⁉️」

「お祓いだよ、その蓮見さんって人にお祓いしてもらわなくて大丈夫なのか?」

「田中さんは。。。何も憑いてなさそうだし、大丈夫じゃないですか(笑)」

鳴海は犯したミスを茶化し少し場が和んだ。

「あんたら無事に戻って来れたんだな」
行きの時に道の駅であった夫婦であった。

鳴海は村での出来事を説明した、
すると老人は神妙な面持ちで話し出した。

あの村は古い歴史を持つ村であり、江戸時代までは活気にあふれていたようだ。
しかし、飢饉や疫病が日本全土を襲った時に口減らしといって食いっぷちを減らす選択をせまられたという。

村の集会で決定されたのは口減らしの実行であった。

無惨にも犠牲になったのは生まれたばかりの赤子や幼い子供たちであった。
あまりの飢えの苦しさで大人たちは子供たちを食らったといううわさもあった。

人が人を食う、それはこの世のものとは思えない光景であっただろう。


月日が流れ、ある時、村に異変が起きた。

多くの水子や死霊が村に現れるようになり精神が錯乱し首を吊るもの
崖から身を投げるもの
家族や友人を無差別で襲い掛かるものが続出した。

そこで村の長が浮かばれぬ霊を鎮魂させるために僧侶を外部から招きいれたという。

僧侶は村にたどり着くとただならぬ
憎悪、怨念を感じ何か元凶があるのではないかと村長に尋ねた。

村長は口減らしをしていたということが領主などの耳に入るのを恐れ僧侶には事実を伝えなかったそうだ。


早速、僧侶は簡易的な講堂でお経をあげ始めた。
僧侶の申し出で自ら外に出るまで
講堂に立ちいらないでほしいとのことだったので村人は言付けをまもり講堂には立ち入らなかった。

一日二日が過ぎ、村長は食事や水が必要かと思い、中にいる僧侶に外から声をかけた。

しかし中から返事はない、耳を澄ますが読経も聞こえなかたった、まさか逃げ出しのではないか?
そう感じざるをえないほど僧侶の気配がなかった。

しびれを切らした村長は講堂の扉を開け中に入った。
すると目を疑う光景が飛び込んできたのであった。

住職は即身仏のように、骨と皮だけになり、その姿からは生気を感じられない。
恐る恐る僧侶に近寄るとやはり息絶えていた。

やはり、僧侶の力を持っても鎮魂はできないと思いきや不思議な事に1年近く水子の霊や死霊をみることはなくなった。


しかし1年たつと再度、霊たちは騒ぎ出し
村は災難に陥り、再度、僧侶を派遣し、まるでいけにえの儀式のように、僧侶の命をもって一時的な鎮魂繰り返していたようだ。


「そんな村の禁忌をなぜあなたが知っているのですか?」
鳴海は老夫婦に尋ねた。

「私も妻もあの村の出身でね、廃村なるまではあの村で過ごしていたんだよ」

鳴海は村でみた僧侶と水子の霊が現れた理由が何となく理解することができた。

「。。。近年も僧侶を犠牲にしていたのですか?」
鳴海は唐突に確信に迫った。

「近代化した時代にそんな事は許されない、、、」

「あなた、もうあの村はないのよ、話はこのくらいにして」
老人を諭すように妻が話を終わらせた。

鳴海もこれ以上は何も聞けないような空気を悟った。



老夫婦と別れ、俺と鳴海は道の駅で来るであろう親戚を待っていた。

「奏ちゃん久しぶり!」

「あっくん!?」

20代後半から30代前半のスラっとした面持ちで黒縁眼鏡をかけたインテリチックな男性が話に割ってきた。

この男が蓮見アキラ 鳴海の親戚だった。











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