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しおりを挟む世界が飽和すると、衰退を迎える。世界が滅びる前に一つ異分子を取り込む事で、世界のバランスが急激に変わり、衰退から転換し過渡期を迎え、新しい世界の発展へと移行していくのだという。
異分子、というのが彼のことなのだと一ノ瀬君は言った。
異分子となってこの世界に迎えられた時、世界から与えられたのが、生きていくための知識。「知っている」というよりかは、知りたいと思ったとき、記憶を探れば「思い出すように、分かる」という物らしい。
例えば、とっさの時に「危ない!」と気付く、とか。「アレを食べたいな」と思えば大丈夫だと分かる、とか。
「さっきは、知るはずのないことを知っているから、自分でも気味悪くて曖昧な言い方になっちゃったんだけど……」
「じゃあ、ここに向かってきたのは、ここに来たら良いって分かったから?」
一ノ瀬君は小さく頷いた。
「ここにいれば、迎えが、たぶん、来る」
「じゃあ、私は、どうして、ここに……」
震える声で、もう一度一ノ瀬君は、ごめんと言った。
「俺が、あの時、河野さんを……」
彼の言葉を聞いて、私は叫んだ。
「どうして!!」
ずっとごまかし続けていた感情がこみ上げる。
「私、こんな所、来たくなかった!! ねぇ、帰れるんだよね? こんなトコ、ヤだよ、怖いよ……!!」
泣いて、わめいて、一ノ瀬君の服を掴んだ。どうしてと一ノ瀬君を責めた。
「……ごめん」
私に責められるのを無言のまま受け続けてた一ノ瀬君は、泣き崩れて言葉を失った私に一言だけ謝ると、ぐっと眉間に皺を寄せてうつむいた。
繋いだ手は、だらんと下がって、でも、離れる事はなかった。
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