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 視界が開けた、と思うと、目の前には大きな湖があった。
 そこはとても静かで、とてもきれいな場所だった。パズルとかにありそうな、幻想的な美しい水と緑の世界。
 二人手を繋いだまま、その景色を前に立ち尽くした。

「……きれい」
「うん」

 思わずついて出た言葉に、一ノ瀬君が頷く。

「……一ノ瀬君、まるで、ここを目指していたみたいだったね」

 長い沈黙の後、だんだんと居心地悪くなってきた私は、あははと軽く笑い飛ばしながら、ごまかすように適当なことを言ってみる。
 ほんとは、こんなどうでも良いことじゃなくて、もっと聞きたいことがあった。もっと話したいことがあった。

 なんで私たち、こんな所にいるの。ねえ、アミューズメントパークにみんなでいたよね。あの地震が関係あるのかな。一ノ瀬君はなんでそんなに平気そうなの。私たち帰れるのかな。友達びっくりしてるよね。先生探してるかな、家族が知ったら心配するよね。ここどこかな。…………私たち、どうなるのかな。

 渦巻いた気の狂いそうになるような疑問や苦しさに蓋をして、その場をただ取り繕う言葉で、その場の空気も、私の中の感情もごまかしてしまう。

 ごまかそうと、していた、のに。

「……ごめん」

 一ノ瀬君が、急に謝った。

「え?」

 なんで謝るの?
 疑問と共に、ぐわっと、変な感情がこみ上げてきた。

 だって、謝るって事は、今、謝るって事は……。

 思考が働きそうになる。でも考えたくないと思考を止める。

「こんなトコ、俺も、知らない、それは、本当、だけ、ど」

 歯切れの悪いしゃべり方は、一ノ瀬君らしくない。それが余計に、私にとって都合が悪いことを告げられる前フリのようで。

「……たぶん、河野さんは、俺に、その……巻き込まれたんだと、思う」
「巻き込まれた、って……」
「俺が、たぶん、この世界に……喚ばれた」

 なに、それ? というのが、最初の疑問。

「なんで、そう思うの?」
「……思うというか、分かる、っていうか」

 寒くもないのに身体がたがたと震えた。笑って見上げる顔はきっと引きつっていた。普通の声を出そうとしてたのに、声が勝手に、震えた。

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