31 / 72
第4話 菜園荒しを捕まえろ
4 菜園の悲劇
しおりを挟む
菜園は屋敷の裏手に作ってある。クリンちゃんが趣味で作ったとか。でも、趣味で作ったとは思えないほど立派な菜園だ。
クリンちゃんって、普段の無知っぷりに結構呆れちゃうことも多いけど、家事全般は得意だし、何気に凄いよね。
☆★☆
菜園に到着した。
「ウソ!? 何コレ!?」
クリンちゃんは思わず口を両手で覆った。
「これは……、ひどいわね……」
「そうですね……」
私達の目の前には、収穫期を迎えた野菜は全てなくなり、また、生育中の野菜は半分以上がなくなっているという、無惨な菜園が広がっている。
「そ、そんなあっ! モモカブが全部無くなってるっ!」
余程ショックだったのか、クリンちゃんぺたんとへたり込んでしまった。
「ヒドいっ! 毎日頑張ってお世話してたのに……! 一体誰がこんなことしたの……? うっうう……」
とうとうクリンちゃんは泣き出してしまった。
「クリンちゃん、泣かないで……」
ノイアさんは泣き出したクリンちゃんをなだめる。
「やっぱり、これって泥棒の仕業でしょうか?」
「どうかしらね……。食料不足に悩む土地ならともかく、こういう豊かな国の者が、わざわざこんな深い森の中まで入って来て野菜を盗んでいくものかしら? それはちょっと不自然な気がするわ」
「じゃあ、嫌がらせ……とか? アレックスの奴、性格あんなだし、色んな人から恨みとか買ってそうじゃないですか?」
「ユウコちゃんの予想を裏切るようで悪いけど、あいつ、街での評判はそこそこ良いのよ? 信じ難い話だけど。だから、その線も多分ないわね」
泣きじゃくるクリンちゃんをなだめながら私達は犯人を推理するが、見当は全くつかない。
「ここで考えてても仕方ないし、アレックスに相談してみましょ。もしかしたら、心当たりとかあるかもしれないわ」
ノイアさんの提案で、私達はアレックスに相談するために屋敷の方へ戻ることにした。
☆★☆
「菜園に行ったのではなかったのか?」
書斎に入ると、アレックスはこちらを見ずに淡々と訊いてきた。
私達は菜園の惨状を説明する。
「……なるほどな。もしかすると“奴ら”の仕業かも知れん」
「え? 犯人って複数なの?」
「まあ、おそらくな。とにかく、一度奴らの集落に行ってみるとしよう」
アレックスはそう言うと、机の引き出しから何かの薬を取り、飲みかけのコーヒーでそれを飲み下した。
「何それ?」
「耐陽光薬剤だ。これを飲めば、数時間程度なら日差しの影響を受けなくなる。さあ行くぞ」
なんだ、そんな便利な薬があるのか。さっきは“日差しを浴び続けたら死ぬ”って言ってたからちょっと同情したけど、そんな必要もなかったね。
クリンちゃんって、普段の無知っぷりに結構呆れちゃうことも多いけど、家事全般は得意だし、何気に凄いよね。
☆★☆
菜園に到着した。
「ウソ!? 何コレ!?」
クリンちゃんは思わず口を両手で覆った。
「これは……、ひどいわね……」
「そうですね……」
私達の目の前には、収穫期を迎えた野菜は全てなくなり、また、生育中の野菜は半分以上がなくなっているという、無惨な菜園が広がっている。
「そ、そんなあっ! モモカブが全部無くなってるっ!」
余程ショックだったのか、クリンちゃんぺたんとへたり込んでしまった。
「ヒドいっ! 毎日頑張ってお世話してたのに……! 一体誰がこんなことしたの……? うっうう……」
とうとうクリンちゃんは泣き出してしまった。
「クリンちゃん、泣かないで……」
ノイアさんは泣き出したクリンちゃんをなだめる。
「やっぱり、これって泥棒の仕業でしょうか?」
「どうかしらね……。食料不足に悩む土地ならともかく、こういう豊かな国の者が、わざわざこんな深い森の中まで入って来て野菜を盗んでいくものかしら? それはちょっと不自然な気がするわ」
「じゃあ、嫌がらせ……とか? アレックスの奴、性格あんなだし、色んな人から恨みとか買ってそうじゃないですか?」
「ユウコちゃんの予想を裏切るようで悪いけど、あいつ、街での評判はそこそこ良いのよ? 信じ難い話だけど。だから、その線も多分ないわね」
泣きじゃくるクリンちゃんをなだめながら私達は犯人を推理するが、見当は全くつかない。
「ここで考えてても仕方ないし、アレックスに相談してみましょ。もしかしたら、心当たりとかあるかもしれないわ」
ノイアさんの提案で、私達はアレックスに相談するために屋敷の方へ戻ることにした。
☆★☆
「菜園に行ったのではなかったのか?」
書斎に入ると、アレックスはこちらを見ずに淡々と訊いてきた。
私達は菜園の惨状を説明する。
「……なるほどな。もしかすると“奴ら”の仕業かも知れん」
「え? 犯人って複数なの?」
「まあ、おそらくな。とにかく、一度奴らの集落に行ってみるとしよう」
アレックスはそう言うと、机の引き出しから何かの薬を取り、飲みかけのコーヒーでそれを飲み下した。
「何それ?」
「耐陽光薬剤だ。これを飲めば、数時間程度なら日差しの影響を受けなくなる。さあ行くぞ」
なんだ、そんな便利な薬があるのか。さっきは“日差しを浴び続けたら死ぬ”って言ってたからちょっと同情したけど、そんな必要もなかったね。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる