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第4話 菜園荒しを捕まえろ
4 菜園の悲劇
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菜園は屋敷の裏手に作ってある。クリンちゃんが趣味で作ったとか。でも、趣味で作ったとは思えないほど立派な菜園だ。
クリンちゃんって、普段の無知っぷりに結構呆れちゃうことも多いけど、家事全般は得意だし、何気に凄いよね。
☆★☆
菜園に到着した。
「ウソ!? 何コレ!?」
クリンちゃんは思わず口を両手で覆った。
「これは……、ひどいわね……」
「そうですね……」
私達の目の前には、収穫期を迎えた野菜は全てなくなり、また、生育中の野菜は半分以上がなくなっているという、無惨な菜園が広がっている。
「そ、そんなあっ! モモカブが全部無くなってるっ!」
余程ショックだったのか、クリンちゃんぺたんとへたり込んでしまった。
「ヒドいっ! 毎日頑張ってお世話してたのに……! 一体誰がこんなことしたの……? うっうう……」
とうとうクリンちゃんは泣き出してしまった。
「クリンちゃん、泣かないで……」
ノイアさんは泣き出したクリンちゃんをなだめる。
「やっぱり、これって泥棒の仕業でしょうか?」
「どうかしらね……。食料不足に悩む土地ならともかく、こういう豊かな国の者が、わざわざこんな深い森の中まで入って来て野菜を盗んでいくものかしら? それはちょっと不自然な気がするわ」
「じゃあ、嫌がらせ……とか? アレックスの奴、性格あんなだし、色んな人から恨みとか買ってそうじゃないですか?」
「ユウコちゃんの予想を裏切るようで悪いけど、あいつ、街での評判はそこそこ良いのよ? 信じ難い話だけど。だから、その線も多分ないわね」
泣きじゃくるクリンちゃんをなだめながら私達は犯人を推理するが、見当は全くつかない。
「ここで考えてても仕方ないし、アレックスに相談してみましょ。もしかしたら、心当たりとかあるかもしれないわ」
ノイアさんの提案で、私達はアレックスに相談するために屋敷の方へ戻ることにした。
☆★☆
「菜園に行ったのではなかったのか?」
書斎に入ると、アレックスはこちらを見ずに淡々と訊いてきた。
私達は菜園の惨状を説明する。
「……なるほどな。もしかすると“奴ら”の仕業かも知れん」
「え? 犯人って複数なの?」
「まあ、おそらくな。とにかく、一度奴らの集落に行ってみるとしよう」
アレックスはそう言うと、机の引き出しから何かの薬を取り、飲みかけのコーヒーでそれを飲み下した。
「何それ?」
「耐陽光薬剤だ。これを飲めば、数時間程度なら日差しの影響を受けなくなる。さあ行くぞ」
なんだ、そんな便利な薬があるのか。さっきは“日差しを浴び続けたら死ぬ”って言ってたからちょっと同情したけど、そんな必要もなかったね。
クリンちゃんって、普段の無知っぷりに結構呆れちゃうことも多いけど、家事全般は得意だし、何気に凄いよね。
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菜園に到着した。
「ウソ!? 何コレ!?」
クリンちゃんは思わず口を両手で覆った。
「これは……、ひどいわね……」
「そうですね……」
私達の目の前には、収穫期を迎えた野菜は全てなくなり、また、生育中の野菜は半分以上がなくなっているという、無惨な菜園が広がっている。
「そ、そんなあっ! モモカブが全部無くなってるっ!」
余程ショックだったのか、クリンちゃんぺたんとへたり込んでしまった。
「ヒドいっ! 毎日頑張ってお世話してたのに……! 一体誰がこんなことしたの……? うっうう……」
とうとうクリンちゃんは泣き出してしまった。
「クリンちゃん、泣かないで……」
ノイアさんは泣き出したクリンちゃんをなだめる。
「やっぱり、これって泥棒の仕業でしょうか?」
「どうかしらね……。食料不足に悩む土地ならともかく、こういう豊かな国の者が、わざわざこんな深い森の中まで入って来て野菜を盗んでいくものかしら? それはちょっと不自然な気がするわ」
「じゃあ、嫌がらせ……とか? アレックスの奴、性格あんなだし、色んな人から恨みとか買ってそうじゃないですか?」
「ユウコちゃんの予想を裏切るようで悪いけど、あいつ、街での評判はそこそこ良いのよ? 信じ難い話だけど。だから、その線も多分ないわね」
泣きじゃくるクリンちゃんをなだめながら私達は犯人を推理するが、見当は全くつかない。
「ここで考えてても仕方ないし、アレックスに相談してみましょ。もしかしたら、心当たりとかあるかもしれないわ」
ノイアさんの提案で、私達はアレックスに相談するために屋敷の方へ戻ることにした。
☆★☆
「菜園に行ったのではなかったのか?」
書斎に入ると、アレックスはこちらを見ずに淡々と訊いてきた。
私達は菜園の惨状を説明する。
「……なるほどな。もしかすると“奴ら”の仕業かも知れん」
「え? 犯人って複数なの?」
「まあ、おそらくな。とにかく、一度奴らの集落に行ってみるとしよう」
アレックスはそう言うと、机の引き出しから何かの薬を取り、飲みかけのコーヒーでそれを飲み下した。
「何それ?」
「耐陽光薬剤だ。これを飲めば、数時間程度なら日差しの影響を受けなくなる。さあ行くぞ」
なんだ、そんな便利な薬があるのか。さっきは“日差しを浴び続けたら死ぬ”って言ってたからちょっと同情したけど、そんな必要もなかったね。
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