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第2話 街へ出掛けよう
4 買い物はぜひ四つ葉堂で
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商店街の一角のこじんまりとした地味な建物。
「ここがね、あたし達がよく利用する雑貨屋さんなんだ。“四つ葉堂”っていうの」
クリンちゃんはそう説明してドアを開けた。カランカランと、来客を告げるベルが響く。
「いらっしゃい」
店員は若い男の人だった。明るめのブラウンの髪、垂れ目が印象的なこの店員さんはラグラス=バウェラさん。ティル・リ・ローナの人間族である。イケメンではないけど、愛嬌のある顔のお兄さんだ。年齢は十九歳。私より少し年上なだけなのに、すでに自分のお店を持ってるなんて凄いなぁ。でも、ちょっとスケベそう……。人を見た目で判断しちゃダメなんだけど……。
店内は雑然と商品が並べられている。商品の統一性は全くない。ぬいぐるみ、鍋、アクセサリー、酒、その他色々……。なんだかおかしな店だ。失礼だけど、繁盛しているようには全く見えない。
「こんにちは、ラグラスさん」
「クリンちゃん、今日も来てくれたんだ。ゆっくりしていってね」
ラグラスさんは嬉しそうに、にっこりと笑う。
「アレックスさんも珍しいですね。こんな時間にいらっしゃるなんて。えっと、そちらの子は?」
ラグラスさんが私を見る。やっぱりスケベそうな顔だと思った。
私は、最近定番になりつつある自己紹介をした。
「そうなんだ。それは大変だ。早く、そのチキュウって世界に帰れるといいね。俺も雑貨屋として、君の助けをになれたらって思うよ。欲しいものがあったらなんでも相談に乗るからね」
「はい、その時はよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた。スケベそうだけど(しつこい?)、結構いい人なのかもしれない。
クリンちゃんが楽しそうに商品を眺めている。その様子をラグラスさんが何とも幸せそうな顔で見つめる。……もしかして、クリンちゃんに気があるとか?
「店主、景気はどうだ?」
ラグラスさんの至福の一時を、アレックスがどうでもよさげな話題でぶち壊しにかかる。あんた……、わざと邪魔してない?
「えっ? まあ、ごらんの通り、ぼちぼち……ですかね」
ラグラスさんはハッと我に返ったようにアレックスの問いに答えた。
「そうか。……それにしても相変わらず雑然としている店だな。客のことも考え、少しはレイアウトに気を配った方がいいのではないか? 私は君が生まれる前からこの店を利用しているが、君の父親の代の時はもっときちんと整頓されていたぞ。それに比べ君は実にだらしない。こんなことでは客足が遠のいて、店をたたむ羽目になるかもしれんぞ。……もしや君は、老舗だからと安心しきっているのではあるまいな? だが最近では他国の大手企業もこの街に進出してきている。そういった相手との競争に負け、潰れた老舗も何軒かあるのだぞ? 君も、もっと危機感を持って経営に臨んだ方がいい」
アレックスは説教モードにターボをかけて淡々長々と語った。その、余計なお世話っぽい偉そうな言動に、ラグラスさんの顔は引きつっている。彼の心境はまさに天国から地獄へ、といったところだろう。
「ねえアレックス、栗饅頭買って~」
クリンちゃんはいくつかの饅頭を持ってきた。昨日出されたあの饅頭だ。紅茶とともに出されて驚いたから良く覚えている。結局昨日は食べる余裕がなかったから、手をつけずじまいだったっけ。
「自分の小遣いで買え。毎月与えているだろう」
「もう無くなっちゃったもん」
「なんだと? 新しい月が始まり、まだ一週間も経っていないのだぞ?」
「でも、無くなっちゃったんだもん。ねえねえ買ってよぉ。おーねーがーいー!」
「……さてはお前、それが目的で私を街まで引っ張り出したな? 駄目だ。無計画に散財したお前が悪い。諦めろ」
「アレックスのケチ! いいもん、じゃあここで働くから! そしたら『栗饅頭食べ放題だよ』って、ラグラスさんが言ってたもーん!」
クリンちゃんはラグラスさんをびっしーと指して言った。
「何を言い出すかと思えば……。勝手に働けばいいだろう。そうすれば、こちらとしても月々の小遣いを渡す必要もなくなるしな。私としても好都合だ」
アレックスは小馬鹿にしたような勝ち誇ったような感じで言って、クリンちゃんに背を向ける。
「へ~、本当にいいの? もしかしたらラグラスさんに、イケないことされちゃうかもしれないのに?」
クリンちゃんがまたも“イケないこと”を持ち出してきた。ってか、この子……意味わからずに使ってない? それなのに、必殺技感覚で使ってるよね……。罪な子だよ、まったく。
クリンちゃんの繰り出した必殺技は、今回はラグラスさんに対して効果テキメンだった。その証拠に、彼の顔は瞬く間に青ざめた。そしてその顔には『突然何てことを言い出すんだ、君は!』と書いてある。……でも、この人ならそういう可能性もありそう……。だって、バイトの女の子に平気で手をつけるスケベ店長みたいなオーラがどことな~く漂ってるもん。
「ラグラスさん、あたしがここに来るたびに言ってくるんだよ。ここでバイトしないって? もしかして、あたしにイケないことをしたいからじゃないのかなぁ?」
クリンちゃんの必殺技が、またも鮮やかにキマる。そんな必殺技を二度も食らってしまったラグラスさんは瀕死状態に追い込まれ、今にも気絶しそうな感じだ。
「……店主、今の話は本当なのか?」
殺気が込められている冷ややかな声音で、アレックスはラグラスさんに問いかけた。
「え!? ま、まあ、確かにバイトしないかって、誘ってはいましたけど……」
「そうか。それは、この子が言ったように、妙な下心を抱いているからか?」
アレックスはラグラスさんの胸倉をつかみ上げ、威圧的に詰め寄る。目つきが、まるで親の仇を見るような感じに険しい。こいつ……完全にキレちゃったよ…
「めっ、めめめ、滅相もない……! そっ、そんなこと、考えるわけないじゃないですか! じゅっ、じゅ、純粋にバイトが欲しいからですよ……!」
ラグラスさんはしどろもどろになって答えた。気の毒なくらい怯えている。冷や汗なんか尋常じゃないくらい凄いし……。
「ほう? しかし、それはおかしいな。こんな閑古鳥が鳴いているような店に、従業員など本当に必要なのか? 雇った者に払う賃金の捻出すら危うそうな経営状態に見えるのだが?」
げっ! こいつ、何て失礼な奴なんだよ。常連客のくせにそこまで言うか?
「そっ、そんなの言いがかりですよ……! 確かに大繁盛してるとは言えませんけど、これでも、そこそこ繁盛してるんですよ!? それこそバイトがいれば助かるのにってくらい!」
「本当だな? 今言ったこと、虚言だったら許さんぞ」
ラグラスさんの胸倉をつかむ手に、一層の力が込められる。
「う、嘘じゃないですよぉ……!」
ラグラスさんは泣きそうな哀れっぽい声で、自分は潔白だという意を示す。
「ならば、確かめてみるまでだ」
アレックスはそう言うとラグラスさんを解放し、静かに目を閉じた。そのまましばらく間が開き……、
「確かに、心を読む限り、君の言ったことに偽りはなさそうだ」
アレックスの言葉に、ラグラスさんは心底安心したように胸をなで下ろした。
ってか、何!? こいつ、他人の心が読めんの!? それヤバいじゃん! じゃあ、私が心ん中でこいつを罵ってることも全て筒抜け!? ハッ! そういやこいつ、たまに私の心ん中を読んだような、尋常じゃない勘の良さを発揮してたっけ? あれ、心ん中を読んでたから!?
アレックスと目が合った。思わずギクリとなる。
「安心しろ。私が心覘術を使う時は、必要に迫られた時だけだ。普段はそんなプライバシーの侵害に当たる真似はしない」
アレックスはそう断言したけど、ホントかな? すッごく嘘くさいんだけど……。
クリンちゃんは大きな瞳いっぱいに涙をため込んで、アレックスを睨んでいる。この子、どんだけ栗饅頭が欲しいのよ? ってか、結構ワガママなんだね……。
「店主、脅かしてすまなかったな。栗饅頭を一箱いただこう」
アレックスの言葉にクリンちゃんの顔がパアッと明るくなる。
「今回限りだからな」
アレックスはクリンちゃんに背を向けたまま言った。
「うん! ありがとう、アレックス! えへへ、だ~い好き♪」
クリンちゃんは、アレックスの背中にぎゅ~っと抱きついた。
「現金な奴だ」
そうは言うけど、ちょっと嬉しそう? アレックスって何だかんだ言ってもクリンちゃんに甘いんだな。
「ユウコ、せっかくだ。お前も何か買うといい」
アレックスが私を見て言った。予期せぬ言葉に私は戸惑う。
「いいの?」
「お前だけ何も買わないというのもつまらないだろう? さぁ、早く選べ」
アレックスは無表情に淡々と促す。私はアレックスの言葉に甘え商品の物色を始めた。
「じゃあ、これ……」
私が選んだのは、白と黒の三日月がモチーフになっているネックレス。特に可愛いものではないが、この世界を象徴しているデザインに、なんだか惹かれたのだ。
「お前、こういう地味な装飾品が好きなのか? もう少しマシなものもあっただろうに……」
清算を済ませたアレックスは、私の首にネックレスをかけながら言った。
「いいでしょ別に。これが良かったの! あの……、買ってくれてありがと……」
私はボソボソと小声でお礼を言う。だって、なんだかちょっと照れくさい。
「ありがとうございました。今後とも御贔屓にー!」
ラグラスさんのよく通る声に見送られ、私達は四つ葉堂を出た。っていうか、ラグラスさん、アレックスにあんだけ脅かされてたのに、最後は何もなかったかのように平然としてたな。意外と逞しい?
「ここがね、あたし達がよく利用する雑貨屋さんなんだ。“四つ葉堂”っていうの」
クリンちゃんはそう説明してドアを開けた。カランカランと、来客を告げるベルが響く。
「いらっしゃい」
店員は若い男の人だった。明るめのブラウンの髪、垂れ目が印象的なこの店員さんはラグラス=バウェラさん。ティル・リ・ローナの人間族である。イケメンではないけど、愛嬌のある顔のお兄さんだ。年齢は十九歳。私より少し年上なだけなのに、すでに自分のお店を持ってるなんて凄いなぁ。でも、ちょっとスケベそう……。人を見た目で判断しちゃダメなんだけど……。
店内は雑然と商品が並べられている。商品の統一性は全くない。ぬいぐるみ、鍋、アクセサリー、酒、その他色々……。なんだかおかしな店だ。失礼だけど、繁盛しているようには全く見えない。
「こんにちは、ラグラスさん」
「クリンちゃん、今日も来てくれたんだ。ゆっくりしていってね」
ラグラスさんは嬉しそうに、にっこりと笑う。
「アレックスさんも珍しいですね。こんな時間にいらっしゃるなんて。えっと、そちらの子は?」
ラグラスさんが私を見る。やっぱりスケベそうな顔だと思った。
私は、最近定番になりつつある自己紹介をした。
「そうなんだ。それは大変だ。早く、そのチキュウって世界に帰れるといいね。俺も雑貨屋として、君の助けをになれたらって思うよ。欲しいものがあったらなんでも相談に乗るからね」
「はい、その時はよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた。スケベそうだけど(しつこい?)、結構いい人なのかもしれない。
クリンちゃんが楽しそうに商品を眺めている。その様子をラグラスさんが何とも幸せそうな顔で見つめる。……もしかして、クリンちゃんに気があるとか?
「店主、景気はどうだ?」
ラグラスさんの至福の一時を、アレックスがどうでもよさげな話題でぶち壊しにかかる。あんた……、わざと邪魔してない?
「えっ? まあ、ごらんの通り、ぼちぼち……ですかね」
ラグラスさんはハッと我に返ったようにアレックスの問いに答えた。
「そうか。……それにしても相変わらず雑然としている店だな。客のことも考え、少しはレイアウトに気を配った方がいいのではないか? 私は君が生まれる前からこの店を利用しているが、君の父親の代の時はもっときちんと整頓されていたぞ。それに比べ君は実にだらしない。こんなことでは客足が遠のいて、店をたたむ羽目になるかもしれんぞ。……もしや君は、老舗だからと安心しきっているのではあるまいな? だが最近では他国の大手企業もこの街に進出してきている。そういった相手との競争に負け、潰れた老舗も何軒かあるのだぞ? 君も、もっと危機感を持って経営に臨んだ方がいい」
アレックスは説教モードにターボをかけて淡々長々と語った。その、余計なお世話っぽい偉そうな言動に、ラグラスさんの顔は引きつっている。彼の心境はまさに天国から地獄へ、といったところだろう。
「ねえアレックス、栗饅頭買って~」
クリンちゃんはいくつかの饅頭を持ってきた。昨日出されたあの饅頭だ。紅茶とともに出されて驚いたから良く覚えている。結局昨日は食べる余裕がなかったから、手をつけずじまいだったっけ。
「自分の小遣いで買え。毎月与えているだろう」
「もう無くなっちゃったもん」
「なんだと? 新しい月が始まり、まだ一週間も経っていないのだぞ?」
「でも、無くなっちゃったんだもん。ねえねえ買ってよぉ。おーねーがーいー!」
「……さてはお前、それが目的で私を街まで引っ張り出したな? 駄目だ。無計画に散財したお前が悪い。諦めろ」
「アレックスのケチ! いいもん、じゃあここで働くから! そしたら『栗饅頭食べ放題だよ』って、ラグラスさんが言ってたもーん!」
クリンちゃんはラグラスさんをびっしーと指して言った。
「何を言い出すかと思えば……。勝手に働けばいいだろう。そうすれば、こちらとしても月々の小遣いを渡す必要もなくなるしな。私としても好都合だ」
アレックスは小馬鹿にしたような勝ち誇ったような感じで言って、クリンちゃんに背を向ける。
「へ~、本当にいいの? もしかしたらラグラスさんに、イケないことされちゃうかもしれないのに?」
クリンちゃんがまたも“イケないこと”を持ち出してきた。ってか、この子……意味わからずに使ってない? それなのに、必殺技感覚で使ってるよね……。罪な子だよ、まったく。
クリンちゃんの繰り出した必殺技は、今回はラグラスさんに対して効果テキメンだった。その証拠に、彼の顔は瞬く間に青ざめた。そしてその顔には『突然何てことを言い出すんだ、君は!』と書いてある。……でも、この人ならそういう可能性もありそう……。だって、バイトの女の子に平気で手をつけるスケベ店長みたいなオーラがどことな~く漂ってるもん。
「ラグラスさん、あたしがここに来るたびに言ってくるんだよ。ここでバイトしないって? もしかして、あたしにイケないことをしたいからじゃないのかなぁ?」
クリンちゃんの必殺技が、またも鮮やかにキマる。そんな必殺技を二度も食らってしまったラグラスさんは瀕死状態に追い込まれ、今にも気絶しそうな感じだ。
「……店主、今の話は本当なのか?」
殺気が込められている冷ややかな声音で、アレックスはラグラスさんに問いかけた。
「え!? ま、まあ、確かにバイトしないかって、誘ってはいましたけど……」
「そうか。それは、この子が言ったように、妙な下心を抱いているからか?」
アレックスはラグラスさんの胸倉をつかみ上げ、威圧的に詰め寄る。目つきが、まるで親の仇を見るような感じに険しい。こいつ……完全にキレちゃったよ…
「めっ、めめめ、滅相もない……! そっ、そんなこと、考えるわけないじゃないですか! じゅっ、じゅ、純粋にバイトが欲しいからですよ……!」
ラグラスさんはしどろもどろになって答えた。気の毒なくらい怯えている。冷や汗なんか尋常じゃないくらい凄いし……。
「ほう? しかし、それはおかしいな。こんな閑古鳥が鳴いているような店に、従業員など本当に必要なのか? 雇った者に払う賃金の捻出すら危うそうな経営状態に見えるのだが?」
げっ! こいつ、何て失礼な奴なんだよ。常連客のくせにそこまで言うか?
「そっ、そんなの言いがかりですよ……! 確かに大繁盛してるとは言えませんけど、これでも、そこそこ繁盛してるんですよ!? それこそバイトがいれば助かるのにってくらい!」
「本当だな? 今言ったこと、虚言だったら許さんぞ」
ラグラスさんの胸倉をつかむ手に、一層の力が込められる。
「う、嘘じゃないですよぉ……!」
ラグラスさんは泣きそうな哀れっぽい声で、自分は潔白だという意を示す。
「ならば、確かめてみるまでだ」
アレックスはそう言うとラグラスさんを解放し、静かに目を閉じた。そのまましばらく間が開き……、
「確かに、心を読む限り、君の言ったことに偽りはなさそうだ」
アレックスの言葉に、ラグラスさんは心底安心したように胸をなで下ろした。
ってか、何!? こいつ、他人の心が読めんの!? それヤバいじゃん! じゃあ、私が心ん中でこいつを罵ってることも全て筒抜け!? ハッ! そういやこいつ、たまに私の心ん中を読んだような、尋常じゃない勘の良さを発揮してたっけ? あれ、心ん中を読んでたから!?
アレックスと目が合った。思わずギクリとなる。
「安心しろ。私が心覘術を使う時は、必要に迫られた時だけだ。普段はそんなプライバシーの侵害に当たる真似はしない」
アレックスはそう断言したけど、ホントかな? すッごく嘘くさいんだけど……。
クリンちゃんは大きな瞳いっぱいに涙をため込んで、アレックスを睨んでいる。この子、どんだけ栗饅頭が欲しいのよ? ってか、結構ワガママなんだね……。
「店主、脅かしてすまなかったな。栗饅頭を一箱いただこう」
アレックスの言葉にクリンちゃんの顔がパアッと明るくなる。
「今回限りだからな」
アレックスはクリンちゃんに背を向けたまま言った。
「うん! ありがとう、アレックス! えへへ、だ~い好き♪」
クリンちゃんは、アレックスの背中にぎゅ~っと抱きついた。
「現金な奴だ」
そうは言うけど、ちょっと嬉しそう? アレックスって何だかんだ言ってもクリンちゃんに甘いんだな。
「ユウコ、せっかくだ。お前も何か買うといい」
アレックスが私を見て言った。予期せぬ言葉に私は戸惑う。
「いいの?」
「お前だけ何も買わないというのもつまらないだろう? さぁ、早く選べ」
アレックスは無表情に淡々と促す。私はアレックスの言葉に甘え商品の物色を始めた。
「じゃあ、これ……」
私が選んだのは、白と黒の三日月がモチーフになっているネックレス。特に可愛いものではないが、この世界を象徴しているデザインに、なんだか惹かれたのだ。
「お前、こういう地味な装飾品が好きなのか? もう少しマシなものもあっただろうに……」
清算を済ませたアレックスは、私の首にネックレスをかけながら言った。
「いいでしょ別に。これが良かったの! あの……、買ってくれてありがと……」
私はボソボソと小声でお礼を言う。だって、なんだかちょっと照れくさい。
「ありがとうございました。今後とも御贔屓にー!」
ラグラスさんのよく通る声に見送られ、私達は四つ葉堂を出た。っていうか、ラグラスさん、アレックスにあんだけ脅かされてたのに、最後は何もなかったかのように平然としてたな。意外と逞しい?
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