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22 話をお聞きなさい!なのですわ!

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いやいや、そんな勝ち誇ったように笑顔で見られましても…。
わたくしが聖女ですって!?
いいえ、わたくしは聖女様にいつか処刑される、悪役令嬢でしてよ!?
いえ、でも処刑されるつもりも、悪役令嬢になるつもりもございませんけどね!?

「わたくしが聖女だなんてありえませんわ」
「いいや、俺の目は誤魔化されないぞ。強い光。消えた魔物。そして現場にいた美女!グラマラス美女!間違いない!お前が聖女だろう!?」
「………び、美女?」

え、わたくしのことですの?お褒めいただき光栄ですわ!
……が。あなたの目と美的感覚を心配してしまいますわ!わたくしは「デブス-デブ=ブス」の残念王女なのですわ!えっへん!

あ。でもまだわたくし洋服がキツイんでしたわ!デブの域から脱していないんでしたわ!?てことはグラマラス(豊満)というところは残念ながら合ってますわね?………はっ!美女というのは嫌味でしたの!?ぐぬぬぅ。さすがゼレグラントの王子。他国の侍女にも容赦ありませんのね!?

「と、とにかく。わたくしは聖女ではありませんわ。本当にあの光も何だったのか分かっておりま…」
「いいや!侍女が騎士から守られるなんておかしいだろう!?おまえが聖女で、あの光を以てして魔物を消したに違いない!」
「ですから、あれはわたくしではな…」
「女!いや、聖女殿!アルエスクではなく、ゼレグラントへ来い!この国よりもいい待遇でもてなすことを約束しよう!」
「だから…」
「そうだ。聖女なんだから、愛妾ではなく嫁に来い!うん、それがいい!生涯大切にすることを誓おう!」
「聞いて!!」

なんなんですの!?この人!!全っっ然!わたくしの話を聞いてくださいませんわ!?
こんな話を聞かない男の嫁になるなんて願い下げですわ!!

「嫁…?レーナを嫁に、だと…………?」
「ひっ!?」

ぞわりと悪寒が体を駆け抜け…ひやぁぁ!!ま、魔王が!魔王が降臨いたしましてよぉぉお!!!
魔王様……もとい、オレグ様は目には見えないドロドロとした禍々しい何かしらを発しながら、にっこりと微笑みになられたのですわぁぁ!

「………彼女はです。聖女でもなければ、あなたの愛妾にも、ましてや嫁にも!!なり得ない、です!!」

笑っているのに怒っている…!これは確実に、相当怒ってらっしゃいますわ!激おこですわ!?
ご自分のものに手を出されたから怒っておりますのね!?それが例え将来ポイッと捨てるものでも、実はそんなにいらないと思っていようとも、なんならちょっと邪魔だな、と思っていようとも!!横から手を出されるのは男のプライドが黙っちゃいられねぇ!ってやつなのですわね!?そうなのですわね!?

「……おまえは?」
「申し遅れました。私はガルロノフ公爵家が長男、オレグ・ガルロノフです。以後、お見知りおきを」
「公爵家、ね……」

どこか値踏みするような、少し小馬鹿にするような目で、美しい礼をするオレグ様を見下ろすルスラン様。
むむぅ。いずれ捨てられる身とはいえ、好きな方を馬鹿にされるのは気分のいいものではありませんわ。許すまじ、ゼレグラントの王子。

「ガルロノフの息子といえばレギーナ姫の婚約者ではなかったか?あの、ふくよかな」

くぅっ!ルスラン様とは昔、社交の場で会ったことがありますわ。その時は挨拶しかしませんでしたが…内心、嘲笑ってらしたのね!
ん?お待ちになって?あの太さじゃ…………そう思っても仕方ありませんわね!うん、納得!落ち着きましたわ!
あ、でもでも!今は…まだまだふくよかとはいえ、だいぶ痩せましたのよ!ふふふふん!

わたくしがひとり、何にかは分からないけれど心の中で勝ち誇った気分でいると、ふと気付けばルスラン様とオレグ様の雰囲気が最悪なことに…。

「分かって頂かなくても結構ですが、レーナは太っていても痩せていても可愛いんです。もう、心が、魂が美しいですからね」

ヤーナ、うんうんって…あなた、贔屓目が過ぎましてよ。
あら、まさかのチャラス様まで。まぁ、我が騎士団員は皆、アルエスク王家贔屓ですものね。

「はんっ。そんな見えないもん美しくたって仕方ないだろうが」

ルスラン様はそんな皆さんを鼻で笑い、ぐいと押しのけると、わたくしの目の前に…。

「父上からは今回の訪問でレギーナ姫を嫁にもらってこいと言われたんだが…聖女がいるなら話は別だ。是非ともお前を嫁に連れて帰りたい」
「だから違…!」
「デブな姫より美人な聖女の方がいいに決まってる。国民もその方が喜ぶしな」

んもぅ!お聞きなさいな!
わたくしは聖女じゃないって言っているでしょう!?なんでこんなに話を聞かないんですの!?

というかルスラン様はわたくしと…レギーナと結婚するつもりでいらしたの!?わたくし、一応まだオレグ様と婚約しておりますのに!
でも確かに、もしもわたくしとルスラン様が婚姻を結べば、お互いの国にとってそう悪いことではございませんわ。
ゼレグラントはアルエスクからの流通をより強固なものにできますし、アルエスクは武に秀でたゼレグラントと友好な関係を築ける…。
まぁ、アルエスクは現在、他のどの国とも対立しておりませんし、なかなか強い国ですからそこまでゼレグラントの力は必要ではありませんが……わたくしが一公爵家に嫁ぐよりは、よっぽど有益ですわね。

そういえば小説の中のレギーナが小説開始頃…つまりは聖女召喚直後、ゼレグラントの王子と婚約していなかったということは、このお話を断ったということかしら?
まぁ、そうね。こんな話を聞かない男は小説のレギーナも嫌だったのでしょうね。
でも…。もし、ここでわたくしが小説とは違う判断を…つまりは、ルスラン殿下と婚姻を結んだとしたら、処刑は免れるのでは…?
ルスラン様と結婚すれば、聖女様と会うことも、虐める理由も無くなりますわ。
そうすれば、わたくしは、生きて……生き、て…………?

「………ただ生きられればいいということではありませんわ」

うん、そうですわ。わたくしは生きたい。生きたいけれど…自分を犠牲にして、心を殺してまで生きたくはないのですわ!
やはり全力で拒否!

「ルスラン殿下。わたくしは聖女ではありませんし、やはりこのお話は…」
「結婚式は盛大にやるからな!国民に聖女が嫁いできたことを大々的に知らしめてやろう!日取りやドレスは俺に任せておけ。何も心配はいらない」
「だからお聞きなさいな!!」

その時。

「相も変わらず貴様の奏でるメロディは迷える子羊だな…(相変わらずお前の会話は独りよがりだな)」
「っ!?この独特な言い回し…………ま、まさか!?」

突然割り込んできた厨二病な発言に、レギオン様が目を見開きましたわ。
全く話を聞かない王子に苛つくわたくしを救って下さったのは、

「ボリスラーフ兄様!?」

魔の国から召喚されし、生を与えし者(アルエスク国から来た料理人)でしたわ!

……………え、兄様?

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