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第4部 決戦
第23話 道を開く
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ゴブリンのスタンピードがお起り、領主から出動要請が出た。
しかもEランク以上は強制的に参加だ。
ギルド内はざわついた。
「え、Eランク以上からだと?」
ザワ、ザワ、ザワ
「そんな馬鹿な」
「俺はまだ死にたくない」
「静かに!静かにしろ~!」
ギルド長と呼ばれた人が声を出す。
「俺はここのギルド長パウルだ。ただし招集は男のみ、女は参加する必要はない」
「ゴブリンだものね」
「それはそうか」
「良かった私」
女性の冒険者がほっとしたように言う。
俺もほっとしている。
『紅の乙女』のメンバーが参加し、ゴブリン達に狙われたら守り切れる自信はない。
「良かった。みんな」
「何が良かったのよ。エリアス1人でどうするんだよ~」
「大丈夫だよ、オルガさん。俺は防御力が高いのは知ってるだろ」
「そんなこと言ったって」
「必ず戻ってきますから、みんな」
そう俺は言いながらオルガさん、ルイディナさん、パメラさんの顔を見た。
みんな泣きそうな顔をしていた。
「よし、冒険者ギルドのリーダーはコンラードだ。みんな言う事をよく聞けよ」
「俺がギルド長パウルさんより紹介のあったコンラードだ。無理はせず生きて皆で帰って来よう」
「「「おぉ~~!!」」」
参加する人数は俺を含めてここにいる男性24人しかいない。
後の人はどうしたんだろう?
冒険者て、これだけなのか?
「今、街にいるにも拘わらずギルドに来ないやつは、ギルドの身分書を剝奪する」
そうギルド長パウルさんが言った。
そうだよな、しらばっくれることが出来るなら俺もそうしたい。
それに聞いたところによると丁度B、C、Dランクのパーティは商隊の依頼で遠征しており人が居ない時期だったらしい。
以前、依頼をお願いしたCランクパーティー『赤い翼』の人達が居ないわけだ。
「よ~し。まずは城門に向かって、騎士団と合流する。行くぞ」
コンラードの後に続いて歩き出す。
俺は何度も後ろを振り返った。
そして見送りに出てきている『紅の乙女』のメンバーに小さく手を振った。
城門に着くと騎士団の人がすでに待っていた。
コンラードさんが騎士団の方に向かい、偉そうな人と話している。
しばらくしてから何やら揉めている雰囲気になった。
「そんな馬鹿なことがあるか!」
コンラードさんの怒鳴る声が聞こえた。
そしてギルドメンバーのところに戻り、こう言った。
「みんなよく聞け、ゴブリンの数は約500。どうやらキングが居る可能性がある」
「キングだと!」
「あぁ、やっぱり」
「思った通りだよ」
みんなそれぞれに、落胆の声をあげた。
「それからまだある。こちらの数は騎士団700。そして俺達24人だ」
「えっ!」
「それだけなのよ!」
「全滅覚悟の戦いか」
「みんなよく聞け。この街の騎士団は1,000人もいない。警備に300人残すと出せるのは700人だとさ」
なに?
そんなに少ないのか?
街と言ってもそんなに大きくないことは分かっていたけど。
「もう1つある。一体づつ相手にしていてはゴブリンを殲滅しも、こちらも壊滅してしまう。だからキングを狙い先に倒すそうだ」
そしてコンラードさんは間を開けてこう言った。
「騎士団は、キングとの戦いに備え戦力を温存する。そのため、冒険者の俺達がそれまで道を切り開けとさ!」
「うぉ~そんな馬鹿な!」
「まだ俺は子供が小さいんだ」
「帰らせてくれ~!」
「みんなの気持ちは分かる。だが街が存続の危機なんだ。逃げた場合は逃亡罪となり重罪だとさ」
「「「そんな馬鹿な!」」」
「どちらにしても死ねと言うのか」
みんな思い詰めた暗い顔になる。
それはそうだろう、玉砕覚悟なんて。
進んでも戻っても、死が待っている戦いなんてやってられない。
「バルタザール騎士団長、話が着きました」
「ほう、そうかナウム副長。で、どうだった」
「はい。一体づつゴブリンを倒していては消耗が激しい。キング狙いで先に倒す作戦を彼らに話したところ、冒険者が率先して道を切り開く間に、キングを倒してほしいと言っておりました」
「なんと!そのような事を。尊い考えだ。自分達のことより街のことを思うとは」
「はい、彼らもこのアレンの街を愛しているようです」
「それならこの戦いが終わったら、彼らにも報いてやらねばならぬな」
「もちろんでございます」
(冒険者のやつらをおとりにして少しでも奴らの数を減らす。そしてあわよくキングでも倒せば出世ができる。庶民が何人死のうと構うか。せいぜい役に立ってくれよ)
卑屈な思いで俺達は進む。
開けた場所に出た。
そこで俺達は奴らが来るのを待つ。
やつらが横に広がってくれればくれるほど、突破する厚みが薄くなる。
少しでも広がってくれることを願うのみだ。
そしてキングまでの道を俺達が開く。
そこまでが仕事だ。
しかもEランク以上は強制的に参加だ。
ギルド内はざわついた。
「え、Eランク以上からだと?」
ザワ、ザワ、ザワ
「そんな馬鹿な」
「俺はまだ死にたくない」
「静かに!静かにしろ~!」
ギルド長と呼ばれた人が声を出す。
「俺はここのギルド長パウルだ。ただし招集は男のみ、女は参加する必要はない」
「ゴブリンだものね」
「それはそうか」
「良かった私」
女性の冒険者がほっとしたように言う。
俺もほっとしている。
『紅の乙女』のメンバーが参加し、ゴブリン達に狙われたら守り切れる自信はない。
「良かった。みんな」
「何が良かったのよ。エリアス1人でどうするんだよ~」
「大丈夫だよ、オルガさん。俺は防御力が高いのは知ってるだろ」
「そんなこと言ったって」
「必ず戻ってきますから、みんな」
そう俺は言いながらオルガさん、ルイディナさん、パメラさんの顔を見た。
みんな泣きそうな顔をしていた。
「よし、冒険者ギルドのリーダーはコンラードだ。みんな言う事をよく聞けよ」
「俺がギルド長パウルさんより紹介のあったコンラードだ。無理はせず生きて皆で帰って来よう」
「「「おぉ~~!!」」」
参加する人数は俺を含めてここにいる男性24人しかいない。
後の人はどうしたんだろう?
冒険者て、これだけなのか?
「今、街にいるにも拘わらずギルドに来ないやつは、ギルドの身分書を剝奪する」
そうギルド長パウルさんが言った。
そうだよな、しらばっくれることが出来るなら俺もそうしたい。
それに聞いたところによると丁度B、C、Dランクのパーティは商隊の依頼で遠征しており人が居ない時期だったらしい。
以前、依頼をお願いしたCランクパーティー『赤い翼』の人達が居ないわけだ。
「よ~し。まずは城門に向かって、騎士団と合流する。行くぞ」
コンラードの後に続いて歩き出す。
俺は何度も後ろを振り返った。
そして見送りに出てきている『紅の乙女』のメンバーに小さく手を振った。
城門に着くと騎士団の人がすでに待っていた。
コンラードさんが騎士団の方に向かい、偉そうな人と話している。
しばらくしてから何やら揉めている雰囲気になった。
「そんな馬鹿なことがあるか!」
コンラードさんの怒鳴る声が聞こえた。
そしてギルドメンバーのところに戻り、こう言った。
「みんなよく聞け、ゴブリンの数は約500。どうやらキングが居る可能性がある」
「キングだと!」
「あぁ、やっぱり」
「思った通りだよ」
みんなそれぞれに、落胆の声をあげた。
「それからまだある。こちらの数は騎士団700。そして俺達24人だ」
「えっ!」
「それだけなのよ!」
「全滅覚悟の戦いか」
「みんなよく聞け。この街の騎士団は1,000人もいない。警備に300人残すと出せるのは700人だとさ」
なに?
そんなに少ないのか?
街と言ってもそんなに大きくないことは分かっていたけど。
「もう1つある。一体づつ相手にしていてはゴブリンを殲滅しも、こちらも壊滅してしまう。だからキングを狙い先に倒すそうだ」
そしてコンラードさんは間を開けてこう言った。
「騎士団は、キングとの戦いに備え戦力を温存する。そのため、冒険者の俺達がそれまで道を切り開けとさ!」
「うぉ~そんな馬鹿な!」
「まだ俺は子供が小さいんだ」
「帰らせてくれ~!」
「みんなの気持ちは分かる。だが街が存続の危機なんだ。逃げた場合は逃亡罪となり重罪だとさ」
「「「そんな馬鹿な!」」」
「どちらにしても死ねと言うのか」
みんな思い詰めた暗い顔になる。
それはそうだろう、玉砕覚悟なんて。
進んでも戻っても、死が待っている戦いなんてやってられない。
「バルタザール騎士団長、話が着きました」
「ほう、そうかナウム副長。で、どうだった」
「はい。一体づつゴブリンを倒していては消耗が激しい。キング狙いで先に倒す作戦を彼らに話したところ、冒険者が率先して道を切り開く間に、キングを倒してほしいと言っておりました」
「なんと!そのような事を。尊い考えだ。自分達のことより街のことを思うとは」
「はい、彼らもこのアレンの街を愛しているようです」
「それならこの戦いが終わったら、彼らにも報いてやらねばならぬな」
「もちろんでございます」
(冒険者のやつらをおとりにして少しでも奴らの数を減らす。そしてあわよくキングでも倒せば出世ができる。庶民が何人死のうと構うか。せいぜい役に立ってくれよ)
卑屈な思いで俺達は進む。
開けた場所に出た。
そこで俺達は奴らが来るのを待つ。
やつらが横に広がってくれればくれるほど、突破する厚みが薄くなる。
少しでも広がってくれることを願うのみだ。
そしてキングまでの道を俺達が開く。
そこまでが仕事だ。
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