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第20部 現世(エリアス編)

第251話 魔素の恩恵

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 あれから半年が経ち魔界からの移民は無事に終わった。
 魔族の人達も最初は戸惑っていたが、今では環境に慣れてきたようだった。
 平民の魔族の容姿は比較的人族に近く、変わりがあるとすれば髪の毛に隠れるくらいの小さな角があることくらいだった。
 そして兵士以外は専門職と言う考えが無く、農業、酪農、林業、鍛冶を含め手が空いている者が極めるやり方らしい。

 俺はセトラー国から闇妖精ダークエルフや山小人《ドワーフ》を呼寄せ指導を任せた。
 それからアモン王の要望で、セトラー国に視察団を派遣することになった。
 やってきたのはまずはスピリトゥスさんだ。
 土の翼と牛の角を持つ、落ち着きのある美しい女性で肉弾戦も得意そうだ。
 そして三対六枚の翼を持ち、炎の短剣を持つ蛇の顔をしたプセウドテイさんの2人と兵士が4名同行している。

 セトラー国を案内された6人は驚いた顔をしていた。
 城壁は高さ10mはあり門も鉱石で創られ片側2m、高3mくらいはある。
 どうみても要塞だろう。
 遊牧民であった彼らは、城壁を築くと言う考え自体が今までなかったはずだ。
 そして城壁の中に入りさらに驚愕の声をあげる。
 ドーム10個分はある広い敷地に田畑が広がっている。
 そしてガラスを使った温室では一年中、果物を作っている。

 中央には3階建ての西洋館が大きくそびえ、それを守るように扇状おおぎじょうにダークエルフ達の住む2階建ての家が立ち並ぶ。

 訓練場ではクロスボウの練習をしている。
 ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!
  ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!
   ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!
  ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!
 ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!ドズッ!!

 セトラー国の人口も1,000人近くになり、その内の700人近くが剣術やクロスボウを学んでいる。
 クロスボウは力のない子供でも扱えその威力は凄まじく、通常の弓なら刺さるところを貫通するほどだった。
 住民は街や流民として流れてきた人が多く、戦闘向きではない人が多かった。
 もしどこかと戦争になることがあれば、クロスボウは城壁越しに弓を放てるのでそんな人達でも戦える武器だった。
 その700人がチームに分かれ、一斉に弓矢を放つ姿は圧巻だ。
「す、凄い。我らが7,000人いても、この弓矢隊が700人居れば我らと同等に戦えると言うのかー」
 プセウドテイさんが戦闘にやり方の違いに驚いている。
「そうね、プセウドテイ。先住民のやり方を私達も学ばないと行けないわね」

「もう先住民ではないだろう、スピリトゥス」
「では、なんと言えば良いのかしら?」
「そうだな、彼等も色んな種族が居るようだから、セトラー国の人々で良いのではないか」
「セトラー国の人々ね、それは良い呼び名かもしれないわ」
「それに彼らの戦闘能力は高そうだ」
 クロスボウの訓練場から離れたところでは、剣の練習をしている集団が居る。
 当初、剣の訓練を選んだのは一部の獣人だけだったが、今では人族を含めクロスボウと剣を学んでいる。

 アスケルの森は魔界ほどではないが、人族が住む国よりも魔素が多い。
 以前より森に住んでいるダークエルフや獣人族には影響はないが、移住してきた人族に大きな変化をもたらした。
 森の魔素を浴びいつの間にか体も一回り大きくなり、戦闘力や魔力値が上がった者が多くなった。
 魔族が角や翼など異形いぎょうの姿をしているのもそれが原因だろう。
 彼等は体力にも自信が付き農業だけではなく、戦闘訓練にも積極的に参加するようになった。

 セトラー国は城壁に囲まれており、他国に攻めることはなく攻め込まれることを前提に考えるとクロスボウは格好の武器だった。
 そしてその強さをまざまざと魔族の2人の将に見せつけるのであった。

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