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第16章 今度は召喚(ビッチェ王女編)

第207話 小鳥

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 俺はメイドさんに案内され部屋の中に入った。
「こちらのお部屋をお使いください。何かあればこの鐘を鳴らしてください」
 そう言うとメイドはハンドベルを置いて部屋を出て行った。

 部屋の中は12畳くらいでベッドとテーブルとイスとタンスだ。
 俺は仕方なくベッドに横になった。
 
 これからどうする?
 なぜ、こんなことになったのか?
 エリザちゃんは1人で無事に、セトラー国に帰れただろうか?
 この世界のことが良く分からない以上、ここから出ていくのは得策ではない。
 誰か教えてくれる人が欲しい。
 聞いてみよう。

 俺はハンドベルを鳴らした。

「チリン、チリン!」

 しばらくすると誰かが来る気配がし、ドアがノックされる。

「お呼びでしょうか?」
 ドアが開き先ほどのメイドさんが顔を出す。

 お腹が空いたので少量で良いので、何か食べるものが欲しいことを伝えた。
 時間はどうやら12時くらいのようだが。
「分かりました、食べ物をお持ち致します。お待ち下さい」

「それからこの宮殿の中を、出歩くことは可能なのでしょうか?」
「それは難しいと思います。エリアス様のお顔を知っているものは、ほとんどおりませんから」

「そうですよね。ある意味、私がうろついていたら不審者ですよね。せめてトイレくらいは場所を教えておいてください」
「こ、これは失礼いたしました。部屋を右に出てしばらく歩き、2つ目の角を左に曲がって2つ目の角を右に曲がり十字路を左手に曲がったところにあります」
「そ、そうですか…。それだとお付きの人が、必要かもしれません。あはは!!」
 いったいどこにトイレはあるんだ?

「申し遅れました。私はイルゼです。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「では、後ほどお食事をお持ち致します」
 そう言うとイルゼさんは部屋を出ていった。

 部屋から出れないという事はある意味、監禁状態だな。
 そんなことを考えながら、俺はベッドに横になった。

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇
 
 私の名はジリヤ国第一王子の娘、第一王女ビッチェ・ディ・サバイア。

 召喚されたエリアス様がオバダリア様に凡人と鑑定された。
 鑑定能力を持つ人はこの国でも数人しかおらず、疑うことなど考えられなかった。
 それでも私は信じたくなかった。
 人と資金と時間を掛け召喚した結果が『凡人』だなんて。
 それを確かめなければ、私達親子は…。

 従者が一緒にいては本音が話せないと思い、私は1人でエリアス様の部屋に向かった。
 するとメイドがエリアス様の部屋に、食事を運ぼうとしている所だった。
 それなら親睦を深めるために私が運ぶことを伝えた。
 驚くメイドを後に私は部屋のドアを叩いた。

 トン、トン!

 ドアを叩いたが返事がない。
 まさかエリアス様になにかあったの?

 私は注意深くドア開け部屋の中に入った。

「エリアス様?!えっ?」

「ス~、ス~、ス~」

 エリアス様はベッドに横になり寝息を立てていた。
 いきなり知らない世界に召喚され、緊張状態が続いていたのかもしれない。

 エリアス様の寝ているベッドの左横に立ちしゃがみ込んだ。
 黒い瞳、黒い髪。
 勇者伝説のままね。
 13~15歳くらいに見えるけど、話し方からするともっと上かもね。
 いくつなのかしら?
 まだ幼顔だけどいい男になるかも?

「エリアス様、起きてください。お話しがございます」
 私はエリアス様の左肩をゆすった。
 
「う~ん」

「キャッ?!エリアス様」

 エリアス様は寝ぼけているのか、私の手を掴み引き寄せた。
 そして抵抗もむなしく一瞬で抱き寄せられた。
 凄い力だった。
 私はそのエリアス様の手を振りほどけなかった。
 
 今まで自由に羽ばたいていた私は、小鳥が羽を休めるようにエリアス様の胸に顔をうずめていた。
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