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第15章 セトラー国の一日

第204話 怪我の功名と甜菜

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「エリアス様、もう終わりでしょうか?」
「ごめんね。もう駄目なんだ…」

 そう俺は言うしかなかった。
 ごめんよ…。



 俺はセトラー学校に来ていた。
 先日、子供達に話して聞かせた紙芝居『桃太郎』は不評だった。

 困ったのが桃を食べ若返ったおじいさんと、おばあさんに子供が出来たことだ。
 若返るとなぜ、子供が作れるのか?
 子供達に聞かれイキナリその話をするのか?と考えたが、アリッサさんの目が怖くて止めた。
 その後は、物凄い顔でアリッサさんに怒られた。


 しかし『ねり飴』は好評で、子供達からまた見たいとせがまれたのだ。
  仕方なく俺は思いつくまま、子供達に話して聞かせた。

 童話の王道と言えばやはり『裏、仕舞しまったろう』だろう。
 仕舞った場所をすぐに忘れる痴呆症の、おじいさんに手を焼くおばあさんの話だ。

 万引きをして捕まった少年を描く『はなさんか!じじい』。
 倒産寸前の家具屋に嫁ぎ、店を立て直す女性を描いた細腕繁盛記『家具屋姫』。
 しまった!あれがない?と、騒ぐ慌て者の『もう、持ったろう』別バージョン。

 だがどれも子供達には理解されず、受け入れてもらえなかった(泣)
 ネタも尽きてしまった頃、アリッサさんにまた怒られ俺は退場となった。



 俺はそのまま不貞腐ふてくされセトラー国を出て、アスケルの森の中を進んだ。
 もう自棄やけです、ぶったれです。

 それなら入ったことが無い場所に行こうと思い、奥へ奥へと進んで行った。
 するとどうだろう、どこかで見たことのある野菜が生えていた。
 大根?
 特に珍しい野菜ではない。
 しかし何かが違うと思い、【鑑定】で見てみると驚くものだった。

【鑑定】甜菜テンサイ:植物
 砂糖大根ともいわれ形が大根と似ているが、大根とは別種でビートの一種。
 寒さに強く寒冷地作物として栽培される。
 サトウキビと並び砂糖の主要原料で、根をしぼって汁を煮詰めると砂糖がとれる。 
 甜菜糖は荒い抽出でも色は白く高級に見えると言う。
 塩害にも強く葉や搾りかすは家畜の餌に出来る。


 この世界で砂糖を作るのに、サトウキビのようなイネ科の多年生植物がある。
 だが亜熱帯気候の地域でのみ栽培できる。
 そのため亜熱帯地域以外の国では輸入品となり、塩と並び砂糖は高級品となる。

 しかし甜菜テンサイは寒冷地でも栽培でき、これが成功すれば砂糖の価格を大幅に下げることができる。
 

 俺はその辺に生えている甜菜テンサイを、ストレージに収納して行く。
 春になったら苗床で苗を作ろう。
 ある程度育ったら畑に植えれば、発芽時期を早めることが出来るから。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 セトラー国西暦2年
 セトラー国の初代国主、エリアス・ドラード・セルベルトの業績は多大だ。

 不可能と思われていたアスケルの森に国を興した。
 鉱山から鉱石を採掘し製鉄が始まり、シャルエル製作所にてフライパン・鍋・やかんなどの台所用品を作成販売する。
 冷蔵庫、照明、魔道コンロの魔道具。
 綿を栽培しアバンス紡績店で作った、タオル、手ぬぐい、バスローブ等。

 調味料の開発と販売。
 調味料は高価で庶民は購入することが出来ず、裕福な貴族でさえ薄味だった時代。
 そんな時に彼は『マヨネーズ』、『味元あじげん』、『醤油』、『醤油タレ』、『ソース』を開発し販売した。

 そんな中、沿岸部のラードルフ国との貿易が始まった。
 蒸気機関車で輸入が可能になり、塩が庶民でも手が届く値段になった。


 そして砂糖が採れる甜菜テンサイの栽培。
 セトラー国の広い領地を開墾し、広範囲で甜菜テンサイ畑を作った。
 人手が足りず各国から人を雇い、人々は蒸気機関車の引く客車に乗った、たくさんの人が通勤する姿を見かけたと言う。

 砂糖も価格が下がり、お菓子や甘いものを出す店が街にあふれたと言う。
 生活が安定した人々は、出産ラッシュが続いた。
 シャルエル製作所で製作されたベビーカーが飛ぶように売れた。
 人々の仕事も忙しく収入も多くなっていく。



 エリアス・ドラード・セルベルトと言えばもう1つ。
 セトラー建国記に彼についての不可解なことが書かれている。
 それは『彼は静けさを呼ぶ男である。彼の寒いギャ〇で身も凍る』とある。

 だが書記が古く文字がかすれ読み取れない為、未だに解読されていない。
 彼は『サイレント』と『フリーズ』の魔法が使えたと言うことなのだろうか?

 今では確かめるすべはない。
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