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第10章 蒸気機関車

第150話 春の夜

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 や、やばい。完全に忘れていた。
 結婚指輪はノリで創ったようなものだ。
 その後、色々忙しくて忘れていたよ。

 この世界では結婚指輪自体の習慣がない。
 だから余計に失念していたのだ。

「みんな、すまなかった。気づいてあげれなくて…」

「いいんです。エリアス様は、ずっとお忙しかったので」「そうです、そうです、私達、全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気に「「 ごめんよ、みんな 」」全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然気にしていませんから。全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、「「 俺が悪かったよ~ 」」全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、「「 だから許して~ 」」全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然、全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然「「 お願い~! 」」全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然「「 お願いだから~! 」」全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然全然…「わ、わかったから、わかったから。本当にごめんよ~」

 アリッサさんとノエルさん、エリザちゃんの3人は、瞳孔を見開き壊れた人形のように同じことを繰り返している。
 俺は3人を引き寄せ抱きしめていた。
 しかし今さらオルガさんと同じ指輪をあげて、許してもらえるだろうか?
 それに今度は差を付けられれば、オルガさんが面白くないだろう。
 

 そうだ。
 良いことを思い付いた。

「では、みんな左手を出して」

 まず鑑定で3人の指のサイズを測る。
 そして『創生魔法』を使い、ミスリルとダイヤを使い指輪を創った。
 小さいダイヤをラウンドブリリアントカットと呼ばれる58面体にカットし、それを6個横に並べたオルガさんと同じデザインだ。
 その指輪を俺は3人の左手の薬指にはめた。

 3人は嬉しいような、少し期待が外れたような顔をしていた。
 
 差を付けたら今度はオルガさんが可哀そうだろ。
 だからみんなには、これをプレゼントだ。

 俺はストレージの中で『創生魔法』でローズウッドの木を加工し、それぞれの顔を彫り込んだカメオのブローチを4人分創った。

 よし、成功だ。次!

 オルガさん、アリッサさんとノエルさん、エリザちゃん、そして集まったみんなが俺を見てキョトン顔をしている。

 それはそうだ。
 俺はなにもない空間をタップして、ストレージの中で『創生魔法』を使い作業をしているのだから。
 そして作業は終わった。

「4人に俺からプレゼントです」

「「 プレゼント?! 」」

 妻4人が同時に応える。

「これはカメオと言いまして、みんなの顔をそれぞれ彫り込んであります」

「まあエリアス君、これは何に対してのプレゼントなの?」
 アリッサさんが、やや皮肉を込めながら答える。

「こ、これは結婚7ヵ月過ぎのプレゼントだよ」

「「 7ヵ月過ぎのプレゼント?? 」」

 その場にいた全員が首をかしげる。

「俺の故郷では結婚してから7ヵ月過ぎたら祝うんだ」
「どうしてですか?」
「そ、それはねエリザちゃん。人の心はうつろいやすい。だから結婚して7ヵ月くらい経つと性格が合わないのが分かったり、お互いの嫌なところが見えてきたり。うまくいかなくなる場合があるんだ」
「そうなんですか、エリアス様」
「だから結婚して7ヵ月過ぎたら、仲の良いことを更に祝うんだよ。あははは!」
「それがこの綺麗なカメオなのですね。私達への後ろめたさから、頂けるわけではないのですね」
 う、エリアスは毒を食らった。
 ダメージ120%。


 あぁ、そうだ。
 良いことを思いついた。

「みんな、良いかな?今から良いものを見せるからね」

 俺はそう言うとストレージの中で魔力を圧縮した。
 魔物の体の中にある魔石が魔力の塊と考えたらできるはずだ。
 どんどん、どんどん魔力を圧縮する。
 そして火の魔力の塊を作り、空に放つ!!

  ヒュ~~~~~~!!

『『『 ボンッ!! 』』』
   『『『 ボンッ!! 』』』

 さらに俺の周りに魔力が集め、そのまま空に向かって撃つ!
 物凄い音がして魔法が夜空に打ち上げられる。
 夜の闇の中、打ち上げられた魔法の灯りで、辺り一面が昼のように明るくなる。

 やった!成功だ。
 打上花火みたいだ!!

『バンッ!』   『バンッ!』   『バンッ!』 『バンッ!』  
   『バンッ!』   『バンッ!』   『バンッ!』   『バンッ!』  
 『バンッ!』   『バンッ!』  『バンッ!』  『バンッ!』  

 魔力が尾を引きながら、放射状に飛び散り菊花の紋を描き出す。

 『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 
   『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』
『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 
  『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 

 更に光の点を描きながら牡丹のような花を咲かせる。
 バンバンという音を出しながら強い光を出す。
 少し遅れて魔力が弾け、一斉に花が咲くように魔力が爆発する。

 『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 
   『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』
『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 
  『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』  『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 
   『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』
『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 
  『ボン!』 『ボボン!』 『ボボン!』 『ボン!』 『ボボン!』 

 そして最後はナイアガラからの打上げ花火だ。
 尾を引かず光の点を描きながら、上空で牡丹のような花を咲かせる。
 丸く広がり高く舞い上がった魔力の塊がの様に、上空から砕け下に延びていく。

「きれい~」
 誰かがそう言った。
 打ち上げられた魔力が、小さく無くなり夜空に消えていく。

 そして俺達は、はかなく消えていく魔力を見上げ春の夜を楽しんだ。

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 ここはアスケルの森から、約150km離れたジリヤ国王都。
 サバイア国王クリストフ ・ディ・サバイアは、今までに聞いたことがない大きな音に驚愕する。
 時刻は18時頃。
 夕食も終わりなごんでいた時の出来事だった。

「な、何事だ?!」
「た、大変です!!国王様」
 そこへシオドリク宰相が、ドアをノックもせず部屋に入ってくる。
「どうした、いったい何が起きた?!!」
「国王様、バルコニーから外をご覧ください!!」
 そううながされバルコニーに出てる。
 するとアレン領がある方向から、物凄い火の玉が打ち上げられてるのが見えた。

「こ、これは…」
 あの方角はアスケルの森の方角だ。

 アレン領のドゥメルグ公爵より、報告には聞いてはいたが。
 女神ゼクシーの『愛し子』様が森を開拓し村を作ったと聞く。
 そこを地盤に我が国と貿易したいという。

 それでこれか?
 これではまるで『恫喝どうかつ』ではないか?
 あれだけの魔法攻撃を受けたら、我が国はひとたまりもない。
 なにか良い手はないのか?
 しかし女神ゼクシー様より、『勝手御免』の神託が降りている以上は我々は手出しができん。
 なにか深い絆を繋げる、友好を築く名目はないものか…。

 そ、そうだ!
 開拓祝いという名目でお祝いの品を送るのはどうだ。
 孫娘にリボンを付けお祝いに『もらってください』と言うのは…。

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 アスケルの森から25km離れた、アレンの領主ドゥメルグ公爵の屋敷の出来事。

「何事だ?!アルマン」
 私は部屋のドアを開け執事のアルマンを呼んだ。

「はい、公爵様。なにやらアスケルの森の方角から、もの凄い音が…」

 私達2人は屋敷を飛び出した。
 すると物音を聞きつけたのか、妻と子供達3人も庭に出てくる。
 
「お父様、何事でしょう?」
 10歳になる娘が聞いてくる。
「大丈夫だ、心配はない」
 私はそう答えるしかなかった。


 夜とはいえ時刻はまだ早い。
 道行く人々は耳を覆い、何が起きたのかと空を見上げ恐怖する。
『愛し子』様が降臨したことを知る一部の信徒や教徒は、アスケルの森の方角を向きひざまずき両手を胸の前で組み祈る。

 エリアスが打ち上げた(自称)花火は、隣接する各国にも観察され大きな波紋を起こすことになる。
 しかしそれは後の話…。
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