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第10章 蒸気機関車

第149話 失念

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 血まみれになった蒸気機関車で、開拓村に戻るとアリッサさんに怒られた。
 ディオさん達や小人族に手伝ってもらい洗った。
 それを見たアリッサさんは、満足したように戻って行った。
 今度からは車の洗車機の様な、洗浄設備を創ろうかな。


「凄~い。広い~」
 小人族達が開拓村を見て驚いている。

 開拓村は田畑も農園もブロックごとに整備されている。
 しかもとてつもなく広い。
 農耕が得意な彼らからすれば、夢の様な場所なのかもしれない。

 彼らをまず俺の屋敷に招き、1階のホールに案内した。
 立派な屋敷に入り、彼らはとても驚いている。
 今までこんなお屋敷自体、見たこともないのだろう。


 そして住民全員をホールに集めてもらった。

 ザワザワ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、  ワイワイ、  ガヤガヤ
   ワイワイ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、
      ザワザワ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、  ワイワイ、
   ワイワイ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、
ザワザワ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、  ワイワイ、  ガヤガヤ
   ザワザワ、  ガヤガヤ、  ザワザワ、  ワイワイ、  ガヤガヤ

 パン、パン、パン!

「はい、みなさん。静粛に!」
 住民が一斉にこちらを向く。

「今日から開拓村でみなさんと、一緒に住むことになった小人族の方達です。これで住民は61人になりました。人も増えたのでこれからは穀物だけではなく、野菜や果物、更に酪農にも力を入れていきたいと思います。家畜は今、牛とラプタ(卵を産む鳥)が居ますが、それだけではなく猪を捕まえ家畜化して増やしていきたいと思います。箱の中に餌を置き、餌をとるとフタが降りる罠を作り、捕まえていきましょう。
そうすれば一年中、食べ物に困ることはありませんから」

「一年中、食べ物に困ることは無いなんて…」
 小人族の人達は驚いている。
 森の中に居たら魔物に怯え、食べる事にも事欠くのに。
 ここは楽園だ、楽園に来たんだ。
 みんなそう思った。


 そして問題が起きた。
 それは小人族の住居の場所だ。
 エルフは俺の屋敷を中心に、逆さの扇状に左右に家が並んでいる。
 それを見た小人族が、文句を言ってきたのだ。
 この領の主の屋敷の両脇を占めて家を建てていると。
  対抗意識が強いのかな?

 今さらエルフの家を移動する訳にはいかない。
 結局は屋敷の正面に19世帯の小人族を10と9世帯に分け、2列に真っすぐ延びるように家を建てた。
 もちろん、約束通り俺のストレージの中で創ったログハウスですけど。

 小人族はタバコ好きで陶器製や木製のパイプを使用して喫煙をする。
 だから9世帯の列のところに喫煙所も建て、所定の位置で吸うように話した。
 二次喫煙は良くないからね。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 その夜は小人族達の歓迎会になった。
 外に出てストレージの中から、ホーンラビットやワイルドボアの肉を出した。
 みんなで野菜を切り串に刺して焼く。
 バーベキューだ。

 そしてお酒は好評だったスティルワインだ。

「美味しい!!」
「この美味しいお酒は何??」
「こんなの初めて!」
「良かった、ここに来て」

 小人族の人達は美味しそうに飲んで、食べて楽しんでいる。


 そんな人達を俺は見ている。
 側には妻のアリッサさんとオルガさんノエルさん。
 そしてエリザちゃんと侍女のネリーさんだ。

 するとダークエルフのラルフさんが俺のところにやってきた。
 あれから彼女達は結婚し、一緒にラルフさんの家で暮らしている。
 

「エリアス様、お願いがあります」
 ラルフさんが俺に頼み事らしい。

「なんでしょうか」
「実は我々に、結婚指輪を作ってほしいのです。オルガ奥様から伺いました。お互いの左手の薬指にはめ永遠の愛を神へ誓う物だと」

「私もオルガ奥様の指にはめている物を見てほしいと思いました」
 ネリーさんも話に加わる。

「分かりました。お創りします」

「良かった、嬉しいです。ありがとうございます」
 ラルフさん、ネリーさんがお礼を言う。

 しかしマリーの侍女のネリーさんは浮かない顔をしている。
 どうしてだ?

「エリアス様、一つ気がかりがございます」
「どんなことでしょうか?」
「オルガ奥様以外の他の奥様方には、差し上げないのでしょうか」

 へ? 

 振り向くとアリッサさんとノエルさん、エリザちゃんがいた。

 そして3人は左手の肘を曲げ手の甲を俺に見せた。
 全員の指に指輪はなかった。
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