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第10章 蒸気機関車

第142話 黒い悪魔

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 俺はアレン領の城門から、開拓村へ線路を引いている。
 手を前にかざし歩く速度に合わせ、目の前の土を収容する。
 排出時にストレージ内で創っておいた、枕木とレールを組み込み線路を引く。
 やや速足くらいの速さで、線路を引いて走る。

 アレン街道をどんどん進む。
 開拓村に交わる道に着けば、そこからは開拓村まで線路を引いてあるので後少し。

 開拓村に交わる道に着き、途中まで引いてあった線路に繋げた。
 村にも同じように駅を創った。
 そして採石場で採掘された石炭や鉱物を置く場所も同時に創る。

 それからアスケルの森の中にある、鉱山と炭鉱まで更に線路を引く。
 開拓村で分岐器を付け進路変更をできるようにもした。

 これで完成。
 当面はアレン領から開拓村への移動は蒸気機関車での移動となる。
 徒歩では来ないだろうから線路だけ引けばいいかな。
 それから俺はストレージから自転車を出し開拓村まで戻った。



 そして今、俺は蒸気機関車作りに取り組んでいる。
 と、言っても屋敷の自分の部屋に居るんだけどね。

 いくらストレージ内の『創生魔法』で、創るからと言っても集中力は必要だから。

 蒸気機関車はどうやって動くのか?
 それは石炭を燃やしてお湯を沸かし、発生した蒸気で動輪を回すんだ。
 
 蒸気機関車のボディは円筒形をしていて、蒸気を発生させる『ボイラー』という装置になっている。
 ボイラーは石炭をくべる火室かしつという部屋と、水が入ったボイラー胴に分けられている。

 石炭をくべて燃やすと、ボイラー胴の中の水が温められお湯になる。
 お湯が沸くと蒸気が発生する。

 ボイラーで発生した蒸気は、圧縮することで大きな力が生まれる。
 その高温高圧の蒸気が、動輪の前方にあるシリンダーに送られ、その中のピストンを前後に動かす。
 そのピストンの動きが横棒ロッドによって車輪へ伝えられ、回転運動に変わり、車輪を回転しさせ動かす。

 火にかけたお湯が沸くと、蓋がカタカタ動く力を動力にしようと思うなんて、考えた人は凄いと思う。

 機関車本体の後ろに炭水車を接続する。
 石炭と水を機関車のボイラーに送るのが機関助士の仕事だ。
 だがそうすると機関士と機関助士の最低2人いないと、蒸気機関車は動かせない。
 だから炭水車に石炭と水を、機関車のボイラーに自動で送る投炭装置を付けた。
 ※炭水車:蒸気機関車が使用する燃料や水を積載した車両。

 これで最低運転手1人でも動かせるようになった。
 そして暗くなっても走れるように前照灯ヘッドライトを付けた。

 機関車は蒸気の力で動輪を回して走り、同時に蒸気の力を利用して『タービン発電機』で電気をおこすことができるんだ。
 電気は機関車の前照灯や運転室の照明、機器の電源として使用できる。
 これで後は用途に応じて、鉱物を運ぶ貨物や客車を連結すればいいんだ。
 


 
 俺はホールに住民を集めた。
「みなさん、今後の方針をお話しします。まずは…」
 俺はアスケル山脈の麓で炭鉱と鉱山を見つけたと話た。
 炭鉱から採れる石炭は高温で燃える石で、鉱物を高温で溶かし純度の高い鉄が出来ること。

俺はストレージから、開拓村とアレン領のジオラマを出した。
そして線路を引き蒸気機関車で山から鉱物や石炭を積み、アレンの街まで運びエリアス商会で売り捌くことを話した。

「これが蒸気機関車ですか、物々しい装備ですな」
 ダークエルフの部族長カーティスさんが言った。
 確かに車体が真っ黒で、真横に槍の刃を出しながら走るんだからね。
 そして車体の側面には4人の妻が背中合わせに彫られた、エリアス商会のロゴが描かれている。
 実物を見たら圧巻だろうな。

 でもそれをやっても我が開拓村は、あまり変わらないことを話した。
「ではなぜやられるのでしょうか、エリアス様」
 ダークエルフのリーダー格、ディオさんが聞いてきた。
「この開拓村を存続させるため、いてはみなさんのためです」
「それは、どう言うことでしょうか?」
「みなさんは異種族として人族から蔑まれ、こんな山奥に住んでいる種族も居ると聞きます。この村の人口は村以下です。そしてこんな辺鄙なところでは人も来たがりません。ですがこの開拓村にくることで自分達が潤う事があるなら、人族はやってくるでしょう」
 そこで一息ついた。

「ここに鉱山ができれば、たくさんお金が働き大勢の人が働きに来ます。そして鉱山関係や鉱物を加工して生活する人が多くなれば、この開拓村の価値が上がります。利害が同じになれば、仲間になれるかもしれません」
 みんな真剣に聞いてくれている。

「俺はここを他種族との架け橋となる村に、出来れば良いと思っています!!」

 他種族との架け橋だと…
 この村をみんなで…
 人族と利害が同じに…  

 みんな黙りこくってしまった。

 


 まずは見てもらった方が早いな。
 俺達は全員で屋敷出て出発点になる線路のところまで歩いた。
 城壁の中から外に延びる線路に、ストレージから蒸気機関車を出す。

〈〈〈〈〈 ドン!! 〉〉〉〉〉

 なぜか俺は無意識に軽く、ジャンプした。

 みんなも一拍遅れてジャンプする。
 真っ黒で全長約20m、幅約3m。高さ約4mの蒸気機関車は圧巻だった。
 

「おぉ、これは凄い」
「蒸気機関車は、こんなにデカいのか!」
「これが世界征服をするための黒い悪魔か…」
 誰だ?変なことを言っているのは。

「これだけ厚い鉄板なら、防御力も高そうだ」
 ゴン、ゴン!
 ゲンコツで車体を叩き確認している人も居る。
「物理攻撃だけでなく、魔法攻撃にも耐えれそうですな」

「ほほう、側面の槍は普段は起こしておけるのですな」
 ダークエルフの部族長カーティスさんが、感心したように言う。

 戦闘用に側面に1mの刃が付いており、戦闘時は横に倒し刃を出しながら走ることができる。
 まるでムカデのようだ。

 だが俺が居ないと何もできないのでは困る。
 俺の代りに機関車を作ったり、無理ならばせめて整備が出来る人が欲しい事をいった。
 部族長カーティスさんが言う。
「それなら、うってつけの種族が居ます。山小人ドワーフです」

「これならオーガくらいなら、簡単に倒せそうですね」
 ダークエルフのリーダー的存在のディオさんが言う。
「ただ残念なのは、線路があるところ以外は走れないという事ですね」
「まったく、その通りです部族長」
「一刻も早く山小人ドワーフを見つけ出し、地上を思うように走れるように改造しなければ」

 あ~、もしもし。
 みなさん、勘違いしてませんか~。
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