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第9章 製鉄技術

第138話 鉄道許可

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 俺はストレージから開拓村と、アレン領のジオラマを出しアルバンさんに見せた。
「ジオラマというもので、周辺環境・背景を立体的に表現する縮尺模型です」
「こ、これは。なんと精密な」
「ここが開拓村、そしてここがアレン領です」
「この馬車みたいな乗り物はなんでしょうか?」
「これは馬車ではなく蒸気機関車と言う、荷物や人を運ぶ乗り物です」
「蒸気機関車ですか?」


「はい、これで10tの重さの荷物を、アレン領から開拓村まで30分で運べます」

「「「 30分ですか! 」」」

 驚くのも無理はない。
 アレン領から開拓村まで歩いて5時間。
 距離にして約20km。
 この世界に歩き以外は馬車しかない。
 馬車も実際は普段は歩きと変わらない速度だ。
 20kmの距離を蒸気機関車で80km/hで走れば30分もかからない。
 
「この金属はなんですか?」
「それは線路といって、その上を機関車は走るんです」
「この上をですか」
「その為、アレン領まで線路を引かなくてはいけません。領主ドゥメルグ公爵様には俺が交渉しますから」

 そこで一息つき俺はまた話し始める。
「アルバンさんにやってほしい事は、コークス製法の特許をエリアス商会の名前で登録すること。そして機関車で運んできた鉱物や石炭を、鍛冶ギルドや商業ギルドに卸す交渉や手配をしてほしいのです」
「はい、お任せください。このアルバン命に代えても」
「そこまで気負わなくてもいいですから。アバンス商会のアイザックさんにも声を掛けてあげてください 」
「分かりました。アイザックさんも、一番に声を掛けられれば喜ぶでしょう」
 なんでも一番は嬉しいよね。

「ドゥメルグ公爵様と話しが付き、鉄道がアレン領まで延びれば鉱山や炭鉱から鉱物と石炭を掘り出す人が必要になります。その時はまた声を掛けますから」
「分かりました。待ち遠しいです」
「ははは、これからドゥメルグ公爵様のところに行ってきます。バスターソードは置いていきます。見本の役目が終わったら欲しい人が居たら売ってください」
「わかりました。これだけの剣なら、欲しがる人はたくさんいるでしょう」

 後はアルバンさんに任せて、俺はエリアス商会を後にした。




 俺は街中まで鉄道を引く許可を得る為、ドゥメルグ公爵を訪ねた。

「突然お伺いして申し訳ありません」
「なに構わないさ、元気そうじゃないか。今日はどんな話かな」

 俺は鉱山と炭鉱を掘り当てたことを話した。
 その時の公爵の顔が見ものだった。
 口をアングリと開け目を見開いていた。

 そうだろうな。
 鉱山一つあれば大金持ちだから。
 フライパン・鍋・やかんなど、製鉄技術を使った物を作り売り出すことを話した。
 
 そして石炭という燃える石が出る炭鉱を見つけたこと。
 石炭があれば木炭よりも高温になり、不純物の少ない鉄ができる。
 鉄の加工がしやすくなれば、色んな物が作れるようになる事を。

 鉱物は今まで発掘される場所が遠く、少なかったから高価だった。
 だが身近な所から発掘されれば、安く市場に出回り加工技術も発展するはずだ。

 そしてそれを運ぶのが蒸気機関車だ。
 俺はストレージから、開拓村とアレン領のジオラマを出した。
 開拓村とアレン領を結ぶ鉄道の話。
 蒸気機関車を走らせれば10tの重さの荷物を、アレン領から開拓村まで30分かからないことを話した。

「 30分だと! 」
 あなたの脚力次第です…。

「はい。鉄道をアレン領から王都まで引けば、馬車で6日かかるところを2時間かからずに着くことができます」

「 2時間!! 」
 ダイエットにもなりますよ?


「それに蒸気機関車は荷物だけではなく、客車を付ければ人も…」
「 人も運べると言う事か?!」」
 いずれ将来的には、だけど。


 ドゥメルグ公爵は驚いてばかりだ。
 俺の言う言葉をただ繰り返すだけだ。
 それはそうだろう、これからは移動手段が大きく変わるんだ。

「その為にアレン領の街の中に蒸気機関車を止める『駅』を創りたいのです。駅用の門を別に作り、そこから200mの線路を引きたいのですが」
 蒸気機関車は幅約3m、高さ約4m、長さ約20mはある。
 貨物車両を4両連結するだけでも、もう長さが100mにもなる。
 そのため蒸気機関車と貨物車両を最大9両連結すると考え、城門から200mは線路は欲しいところだ。

 ドゥメルグ公爵は考えているようだ。
 もう後一押し。
「ウォルド領とアレン領の間に線路を引き、蒸気機関車を走らすことも可能です」
 ウォルド領は王都より西の、エリザちゃんの実家の領だ。

「ほ、ほんとうか?」
「そこに鉄道を引き、蒸気機関車もプレゼントしましょうか?義父のウォルド領主ノルベール公爵と、ドゥメルグ公爵のご判断になりますが…」
「ノルベール公爵には私から相談しよう。嫌とは言わないだろう。見返りは何だ」
「蒸気機関車を使って出た売上げの1割をください」
「1割か。随分、安くしてくれるんだな」
「えぇ、1割でも十分です」

 そう思うのも無理はない。
 今までになかった蒸気機関車は輸送が早くでき人の移動も速くなる。
 それなら利益の2~3割でもおかしくないと思うだろう。
 物資と人を運び、これからお金を生み出すことが分かっているんだから。

 だが俺はいずれジリヤ国、全土に鉄道を広げようを思っている。
 絶対に他の州も欲しがるはずだからだ。
 恩を売って利益を継続して得ることが出来る。
 それなら1割でも十分だ。


「早く道を整備しないといけないな。遅くなればなるほど、儲けが遅くなるからね」
 さすが領主様。
 お金の事はしっかりしている。

「わかった、アレン領の門を入ったところに『駅』を作る許可をだそう」
「ありがとうございます。これで鉄道が通ればアレン領は『食文化』だけではなく、『食文化と鉱物』の街と呼ばれますね。そして産業が立ち上がれば人が増え、消費が多くなり税収が上がり良い事ばかりです」

「そう言う君が一番儲かるのではないかな?」
 うぎっ!俺は適当にごまかした。
「これから城門のところに行き、鉄道用の門と駅を作り線路を引いてきます」
「分かった。私も行こう」
「面白い乗り物を創りましたので、それに乗って城門まで行きませんか?」
「面白い乗り物?」
「実際に見て頂いた方がいいでしょう。庭にでませんか?」

 そう言うと俺はドゥメルグ公爵と庭に出た。
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