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第6章 エリアス商会
第103話 斡旋ギルドとロゴの意味
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ニャオ~~~~ン!!
朝になった。
オルガさんは昨夜、あんなに元気だったのに今朝は起きれないそうだ。
なぜだ?
昨晩、アルバンさんからメイドや執事を、斡旋してくれるギルドがあると聞いた。
さっそく俺はアリッサさんを連れて向かった。
商業ギルドの側に3階建ての木造の建物があった。
ドアを開けて俺達は中に入った。
するとモーニングコートを着た、40代の男の人が立っていた。
「いらっしゃませ、本日はどの様なご用件でしょうか?」
「繁華街のはずれで温泉施設をやっています。そこで人を雇いたいと思いまして」
「繁華街のはずれと申しますと、あの高い塀のお屋敷のことでしょうか」
「えぇ、そうです。ご存じですか」
「もちろんです。この界隈であのお屋敷のことを、知らない者はいないでしょう」
そんなに有名なんだ…。
「さあ、こちらへどうぞ」
そう言われ俺達は客室に通された。
そして男の従業員と向き合いソファに座る。
「私はこの斡旋ギルドの副責任者をしておりますハンスです」
「俺はエリアス、そして妻のアリッサです」
「どのような人材をお探しでしょうか」
「受付から接客、全般業務です」
俺は簡単に仕事内容を話した。
施設の営業時間は9~15時までにした。
だから勤務時間は少し早く来て片付けを考え8:30~15:30まで。
昼休憩は1時間。
門番が2人。1階の受付が3人。
2階の娯楽施設で2人。
3階の休憩所とレストランで3人。
そして休館もしたいが、来る人が休みを知らないはずだから休めず交代制にする。
だから従業員も交代制にするからプラス4人の14人だ。
男女別々の浴室がある。
働く側も男女半々にして、他の職場と兼務できる人が欲しいと伝えた。
何かあった時は同性の方が入りやすい。
「では、どの程度のレベルの人がほしいのでしょうか」
トン、トン、
その時、ドアがノックされ50代のメイドさんがお茶を持って来た。
そして俺達の前にカップを置いた。
俺は話をつづけた。
「レベルですか」
「そうです。新人、中堅、ベテラン。後は若い人や逆に年配者なのかです」
「貴族の相手が出来れば年齢は問いません。それからどんな人が来るのか分かりませんから、適度に戦闘もできる人が良いですね」
「戦闘執事にメイドですか。それですと多少お高くなります」
「おいくら、でしょうか?」
「1日で執事が1万円、メイドが8,000円となります」
「差し支えなければ、本人達への入りはおいくらでしょうか」
「入りですか」
「そうです。こちらは高いお金を払っているのに、ギルドで抜いている金額が多ければ本人達にすれば、これしかもらっていないのに、となりますから」
「そ、それは」
「3割です」
そこにはお茶を持って来たメイドさんが、まだ居て答えてくれた。
「では執事が7,000円、メイドが5,600円ですね」
「そうなります」
ハンスさんが答える。
「では本人達にすれば、その金額は妥当でしょうか?それとも安い?高い?」
「それは、どう言う…」
「妥当と思えば、それなりに。高いと思えば人は頑張れると思いまして」
「平均収入よりはどちらも高額だと思いますが…」
「では男女の賃金の違いは何でしょうか?」
「は?違いと言いますと」
「なぜ男女で賃金の差があるのでしょうか?肉体労働なら体力に差があるのは分かります。ですが接客なら変わらないと思います」
「女性より男性の方が賃金が高いのは昔からですから」
「同じことができるのに、女性の方が安いのは変だと言っているのです」
エリアスの転移前の世界では、男女雇用機会均等法が施行されており違和感を感じたのだった。
「では男と同じ仕事ができると思ったら、女でも1万円払えるのかい?」
いつの間にかお茶を持って来たメイドさんが、ハンスさんの隣に座っている。
「え?もちろんです。仕事は結果ですから」
「そうかい。それから獣人はどうだい?」
「獣人?」
「さっき話した金額は人族の場合の金額さ。獣人は更に安くなるけど」
「おいくらですか?」
「獣人は1日執事が8,000円、メイドが5,000円だよ」
「それでは手取りで執事が5,600円、メイドが3,500円にしかならない」
「それがこの国の格差社会さ。それでもあんたは獣人でも同じ金額で雇えるかい?」
「それでは俺の施設は女性が多いので男性が6人、女性が8人。それと人族と獣人を半分ずつの人数で」
「雇うと言うのかい?!貴族や富裕層相手の仕事に獣人を!!」
「えぇ、そうです」
「それが原因でお客が、来なくなったらどうするんだい?」
「それならそれで、施設を閉めればいいだけですから」
続けるのも面倒だからね。
「な、なぜ、獣人の為に、そこまでするんだい?!」
「俺のもう1人の妻が獣人だからです」
「なっ?!獣人が妻なのかい。そうかい、そうかい」
「そう言うあなたは、どなたですか?」
「私かい、挨拶が遅れたけどここのギルド長のアクアさ」
「俺はエリアス、妻のアリッサです。どうしてアクアさんが、ここに?」
「なあに、ここではあまり見ない年齢の客だからね。興味本位で覗いてみたんだよ」
「そうですか。候補は居そうですか?」
「もちろん、断るくらい希望者が集まりそうだね」
「では、希望者を募って明日、職場見学に来ませんか?」
「職場見学?だって」
「そうです。自分の働く職場を事前に、見学できれば安心でしょう?」
「それはそうだけど、面白いことを考えるね。しかも明日だなんて」
「えぇ、人手が足りなくて急いでいますから」
「わかったよ、声を掛けてみるよ。私も行っていいかい?」
「もちろんですよ」
「あの~、私も良いでしょうか?」
「あんたは駄目だよ、ハンス」
「どうしてでしょうか?」
「責任者が2人いなくなってどうするのさ?」
「そんな~。わ、わかりましたよ」
「情けない声をださないでおくれ。ではエリアス様、明日伺うから宜しく頼むよ」
「わかりました、お待ちしております」
翌朝、斡旋ギルドのアクアは、希望者を募りメイドや執事を連れてやって来た。
半数は獣人で残りの人族は異種族に偏見の無い人を選んだ。
そして彼らは『ラウンド・アップ』の、立派な門構えを見て立ち竦む。
特に獣人の彼らは考える。
私達がくるようなところではない、相応しくない場所だと。
すると獣人の1人が入口の看板に気付いた。
そこにはこう書いてあった。
『娯楽と遊びの施設、ラウンド・アップ。
営業時間9~15時。
紹介者不要、入館料お一人様5万円。
手ぬぐい、タオルは持ち帰り可能。
3階の休憩所にてお茶飲み放題とお菓子1品付き。
なお施設内の従業員に対する暴言、暴力的な威嚇行為、理不尽な要求や言動には
一切、応じておりません。
状況により身分に関わらず、退出頂く事もございますのでご了承願います』
入館料5万円?!
そして看板の上には大きなロゴが書いてあった。
円の下部にエリアス商会の文字と、左右を向く女性の横顔。
正面右の女性は耳が頭部に付いている。
ここには人族と獣人の従業員が居ると言う証。
貴族や富裕層相手の商売で、この看板を出す店はない。
異種族を見下す至上主義者が多い、貴族や富裕層相手の店で雇う訳が無かった。
しかしこの施設では、堂々とそれを表に出している。
このロゴがそうだ。
人種や身分などの違いを越えて、人類は広く愛し合うべきであるとする考え。
斡旋ギルドのアクアは昨日の会話を思い出す。
『それが原因でお客が、来なくなったらどうするんだい?』
『それならそれで、施設を閉めればいいだけですから』
異種族の立場に立ち、本気でそんなことを思う奴がいるなんて。
そして再び目をやる。
人族と異種族の友好を示すかのように、下側でクロスした麦の穂が左右から上部に大きく伸びている。
エリアス商会のロゴが入った看板だった。
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朝になった。
オルガさんは昨夜、あんなに元気だったのに今朝は起きれないそうだ。
なぜだ?
昨晩、アルバンさんからメイドや執事を、斡旋してくれるギルドがあると聞いた。
さっそく俺はアリッサさんを連れて向かった。
商業ギルドの側に3階建ての木造の建物があった。
ドアを開けて俺達は中に入った。
するとモーニングコートを着た、40代の男の人が立っていた。
「いらっしゃませ、本日はどの様なご用件でしょうか?」
「繁華街のはずれで温泉施設をやっています。そこで人を雇いたいと思いまして」
「繁華街のはずれと申しますと、あの高い塀のお屋敷のことでしょうか」
「えぇ、そうです。ご存じですか」
「もちろんです。この界隈であのお屋敷のことを、知らない者はいないでしょう」
そんなに有名なんだ…。
「さあ、こちらへどうぞ」
そう言われ俺達は客室に通された。
そして男の従業員と向き合いソファに座る。
「私はこの斡旋ギルドの副責任者をしておりますハンスです」
「俺はエリアス、そして妻のアリッサです」
「どのような人材をお探しでしょうか」
「受付から接客、全般業務です」
俺は簡単に仕事内容を話した。
施設の営業時間は9~15時までにした。
だから勤務時間は少し早く来て片付けを考え8:30~15:30まで。
昼休憩は1時間。
門番が2人。1階の受付が3人。
2階の娯楽施設で2人。
3階の休憩所とレストランで3人。
そして休館もしたいが、来る人が休みを知らないはずだから休めず交代制にする。
だから従業員も交代制にするからプラス4人の14人だ。
男女別々の浴室がある。
働く側も男女半々にして、他の職場と兼務できる人が欲しいと伝えた。
何かあった時は同性の方が入りやすい。
「では、どの程度のレベルの人がほしいのでしょうか」
トン、トン、
その時、ドアがノックされ50代のメイドさんがお茶を持って来た。
そして俺達の前にカップを置いた。
俺は話をつづけた。
「レベルですか」
「そうです。新人、中堅、ベテラン。後は若い人や逆に年配者なのかです」
「貴族の相手が出来れば年齢は問いません。それからどんな人が来るのか分かりませんから、適度に戦闘もできる人が良いですね」
「戦闘執事にメイドですか。それですと多少お高くなります」
「おいくら、でしょうか?」
「1日で執事が1万円、メイドが8,000円となります」
「差し支えなければ、本人達への入りはおいくらでしょうか」
「入りですか」
「そうです。こちらは高いお金を払っているのに、ギルドで抜いている金額が多ければ本人達にすれば、これしかもらっていないのに、となりますから」
「そ、それは」
「3割です」
そこにはお茶を持って来たメイドさんが、まだ居て答えてくれた。
「では執事が7,000円、メイドが5,600円ですね」
「そうなります」
ハンスさんが答える。
「では本人達にすれば、その金額は妥当でしょうか?それとも安い?高い?」
「それは、どう言う…」
「妥当と思えば、それなりに。高いと思えば人は頑張れると思いまして」
「平均収入よりはどちらも高額だと思いますが…」
「では男女の賃金の違いは何でしょうか?」
「は?違いと言いますと」
「なぜ男女で賃金の差があるのでしょうか?肉体労働なら体力に差があるのは分かります。ですが接客なら変わらないと思います」
「女性より男性の方が賃金が高いのは昔からですから」
「同じことができるのに、女性の方が安いのは変だと言っているのです」
エリアスの転移前の世界では、男女雇用機会均等法が施行されており違和感を感じたのだった。
「では男と同じ仕事ができると思ったら、女でも1万円払えるのかい?」
いつの間にかお茶を持って来たメイドさんが、ハンスさんの隣に座っている。
「え?もちろんです。仕事は結果ですから」
「そうかい。それから獣人はどうだい?」
「獣人?」
「さっき話した金額は人族の場合の金額さ。獣人は更に安くなるけど」
「おいくらですか?」
「獣人は1日執事が8,000円、メイドが5,000円だよ」
「それでは手取りで執事が5,600円、メイドが3,500円にしかならない」
「それがこの国の格差社会さ。それでもあんたは獣人でも同じ金額で雇えるかい?」
「それでは俺の施設は女性が多いので男性が6人、女性が8人。それと人族と獣人を半分ずつの人数で」
「雇うと言うのかい?!貴族や富裕層相手の仕事に獣人を!!」
「えぇ、そうです」
「それが原因でお客が、来なくなったらどうするんだい?」
「それならそれで、施設を閉めればいいだけですから」
続けるのも面倒だからね。
「な、なぜ、獣人の為に、そこまでするんだい?!」
「俺のもう1人の妻が獣人だからです」
「なっ?!獣人が妻なのかい。そうかい、そうかい」
「そう言うあなたは、どなたですか?」
「私かい、挨拶が遅れたけどここのギルド長のアクアさ」
「俺はエリアス、妻のアリッサです。どうしてアクアさんが、ここに?」
「なあに、ここではあまり見ない年齢の客だからね。興味本位で覗いてみたんだよ」
「そうですか。候補は居そうですか?」
「もちろん、断るくらい希望者が集まりそうだね」
「では、希望者を募って明日、職場見学に来ませんか?」
「職場見学?だって」
「そうです。自分の働く職場を事前に、見学できれば安心でしょう?」
「それはそうだけど、面白いことを考えるね。しかも明日だなんて」
「えぇ、人手が足りなくて急いでいますから」
「わかったよ、声を掛けてみるよ。私も行っていいかい?」
「もちろんですよ」
「あの~、私も良いでしょうか?」
「あんたは駄目だよ、ハンス」
「どうしてでしょうか?」
「責任者が2人いなくなってどうするのさ?」
「そんな~。わ、わかりましたよ」
「情けない声をださないでおくれ。ではエリアス様、明日伺うから宜しく頼むよ」
「わかりました、お待ちしております」
翌朝、斡旋ギルドのアクアは、希望者を募りメイドや執事を連れてやって来た。
半数は獣人で残りの人族は異種族に偏見の無い人を選んだ。
そして彼らは『ラウンド・アップ』の、立派な門構えを見て立ち竦む。
特に獣人の彼らは考える。
私達がくるようなところではない、相応しくない場所だと。
すると獣人の1人が入口の看板に気付いた。
そこにはこう書いてあった。
『娯楽と遊びの施設、ラウンド・アップ。
営業時間9~15時。
紹介者不要、入館料お一人様5万円。
手ぬぐい、タオルは持ち帰り可能。
3階の休憩所にてお茶飲み放題とお菓子1品付き。
なお施設内の従業員に対する暴言、暴力的な威嚇行為、理不尽な要求や言動には
一切、応じておりません。
状況により身分に関わらず、退出頂く事もございますのでご了承願います』
入館料5万円?!
そして看板の上には大きなロゴが書いてあった。
円の下部にエリアス商会の文字と、左右を向く女性の横顔。
正面右の女性は耳が頭部に付いている。
ここには人族と獣人の従業員が居ると言う証。
貴族や富裕層相手の商売で、この看板を出す店はない。
異種族を見下す至上主義者が多い、貴族や富裕層相手の店で雇う訳が無かった。
しかしこの施設では、堂々とそれを表に出している。
このロゴがそうだ。
人種や身分などの違いを越えて、人類は広く愛し合うべきであるとする考え。
斡旋ギルドのアクアは昨日の会話を思い出す。
『それが原因でお客が、来なくなったらどうするんだい?』
『それならそれで、施設を閉めればいいだけですから』
異種族の立場に立ち、本気でそんなことを思う奴がいるなんて。
そして再び目をやる。
人族と異種族の友好を示すかのように、下側でクロスした麦の穂が左右から上部に大きく伸びている。
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