上 下
101 / 254
第6章 エリアス商会

第101話 お好み焼き

しおりを挟む
 俺達は住居兼作業場の話で、時間が少し遅くなった。
 遅い朝食を食べに6人で『なごみ亭』に向った。

 忙しい時間帯を過ぎたせいなのか、比較的店の中は空いていた。
 
「おはようございます!サリーさん。6人前お願いします」
「まあ、今日は大勢なのね」
「えぇ、アルバンさん一家も一緒です」
 昨日挨拶に来た時にサリーさんもいたから、アルバンさんの顔は知ってる。

「エリアスお兄ちゃんの嫁のアディです。お兄ちゃんがいつもお世話になってます」
「まあ、かわいいお嫁さんね」
 サリーさんが微笑む。

「なに!エリアスお兄ちゃん。これはどうゆうことよ?!」
『なごみ亭』の看板娘10歳のアンナちゃんがむくれている。

「私はまだ子供だから、オルガお姉ちゃん達のことは仕方ないと目をつむったわ」
 なにを言ってます?

「この女は何よ!私と同じくらいじゃないの?」
「エリアスお兄ちゃん、この女だあれ?」
 アディちゃんが聞いてくる。

「この『なごみ亭』の看板娘、アンナちゃんだよ」
アディです。初めましてアンナ
「なにが、アンナちゃんよ!!あんた何歳よ?!」
「9歳よ」
「な、なんですって!!私は10歳よ!!私より年下に手を出すなんて、エリアスお兄ちゃんの節操なし!!」
「それがなにか?昨日から私達は同じ屋敷に住んでいるわ」
「な、なんですって!!」
 いや、だって奴隷だし。
 でも今日から建物が違うから。

「うふふふふ。プラトニックだけでは、男女は駄目なのよ」
 な、何かしましたか俺?

「パコ~~~~ン!!」

 アリッサさんのハリセンがアディちゃんを叩く。
「痛い?」
 アディちゃんが痛くないのに、思わず両手を頭に載せていた。
「ほう、これが『オチ』を付けるということですか?分かりました」
 アルバンさんが感心している。

「おい、なにを騒いでいるんだ?」
 厨房からビルさんが出て来た。
「おはようございます!ビルさん。アルバンさん一家と今日は来ました」
「おお、あんたは昨日の…」
「お父さん聞いて。またエリアスお兄ちゃんが新しい女を連れて来たのよ」
「なにを言っているんだアンナ?」
「アルバンさん親子には昨日から同じ敷地に住んでもらっています。調味料作りを手伝ってもらっているので」
 俺はそう説明した。
「ほう、そうなのかい」
「家族共々、よろしくお願いいたします」
 アルバンさんが挨拶をした。
「こちらこそ、よろしく頼むよ」

「ビルさん、今時間は空いていますか?お話があります」
「あぁ、良いけど話はエリアス君達の料理を出してからだな」
「そうでしたね」
 それから俺達は 朝食を食べた。

 食べ終わった頃、ビルさんがやって来た。
「で、話って何だい?」
 商業ギルドにソース、醤油、マヨネーズ、醤油タレを卸すことを伝えた。
 そして『なごみ亭』でも店頭販売してほしいと話した。
「それは助かるよ!」
「店頭価格は統一しているので、店の取り分は1/3ですけど」
「俺にはそんな難しい話は分からないからな。任せるよ」
 そう言うとビルさんは笑う。


 ソースとマヨネーズがあるなら、食べたいものがある。
「ビルさん、新しい料理方法があります。やってみませんか?」
「おう、教えてくれるのかい?助かるよ」
「ではさっそくやりますか」
 俺はそう言うとストレージから、魔道コンロとフライパンとボウルを出した。

 そしてまな板と材料、キャベツを出し千切りにした。
 ボウルに小麦粉、『味元あじげん』、キャベツを空気を含むようによくかき混ぜる。
 フライパンの上に生地を流しスプーンの角を使って、約2cmの厚みになるように押し広げ焼く。
 
 生地の上にバラ肉を3枚載せる。
 そしてヘラを使い裏返えす。
 そしてまた裏返して焼く!
 ソースをスプーンすくい生地にぬる。
 そしてマヨネーズを網状に垂らして。

 はい、お好み焼きのできあがり~!

 辺り一面にソースのいい香りが漂う!

「食をそそる、いい匂いだ。なんという料理だい?」
「はい、好みの物を入れて焼く。お好み焼きです」
「お好み焼きか!それはいい。さっそく店にも取り入れてみるよ」
「はい俺も後で商業ギルドに、特許を出しておきます」

 


 俺達は屋敷に戻って来た。
「エリアス様、ソース、醤油はどこで作られているのでしょうか?」
 アルバンさんが聞いてくる。
 それはそうだろうな、それらしい建物も屋敷には無いから。

「ソース、醤油はあるところ(ストレージの中)で創って、あるところ(ストレージの中)に収納しています」
「そうでしょうね、私達の作業場を見ればわかります。創る時に一時いっときだけ場所があれば、それ以外はマジック・バッグに収納しておけばいいのですから。あんな大容量のマジック・バッグは見たことがありません」
「そのことは秘密ですから」

「わかっております。私も商人の端くれ、マジック・バッグの価値は分かります」
 こうしてエリアス商会は開店した。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 その後、エリアス商会はたくさんの料理レシピを商業ギルドに申請した。
 開示する金額もとても価格が安く、大勢の人が料理方法を知ることが出来た。

 小麦粉などの粉物を使った料理がたくさん増え、街の人達がソース、醤油、マヨネーズ、醤油タレの味を知るのに時間は掛からなかった。

『なごみ亭』はこれを機に、宿屋を辞め食堂に専念した。
 アレン領は調味料により食の街と呼ばれる程に、多くの料理文化が芽吹いた。
 
 のちの歴史学者によれば、それにはどんな料理にも欠かせない調味料があったこと。
 そしてそれを提供している、エリアス商会の存在が大きかったと言う。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

処理中です...