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第2章 生活の基盤

第25話 青果市場

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 その帰り道のこと。

「家を買ったということは、商談が上手くいったという事ね」
「ええ、納入が決まりました」

「そうなの、良かったね、これでパーティーは解散かな」
「いいえ、オルガさんさえ嫌でなければ、冒険者を続けたいと思います」

「それは、どうしてかな?」
「調味料作りが、どこまでうまくいくか分かりませんから」

「まあ、そうだよね」
「ただあまり危険は冒したくないので、考えたのですが」

「どんなこと?」
「森で採って来た山菜や果物を、買取ってくれるとことはありますか?」
「えぇ、青果市場で買取ってもらえると思うわ」

「ではそうやって二人で生計を立てていきませんか」
「えっ、ふた、ふた、二人で?」

 オルガさんがいくら強いといっても、必ず勝てるとは限らない。
 冒険者なんてやっていたら、いつ死んでもおかしくいない。
 特に俺なんかじゃ駄目だ。
 死亡フラグ満載だ。
 だから違う仕事を見つければいいんだ。

「オルガさんは冒険者が好きですか?」
「他に生活するのに、できることがないからやっているだけかな」
「だから山の幸を採って、生計を立てられれば安全でしょう。それに森に入れば魔獣や魔物に合う事もあります。その時は討伐するのも良いかもしれません」
「そ、そうね」
「では、いくらで買取ってもらえるのか、青果市場に行ってみましょう」




 俺達は青果市場に来ている。
 青果市場は繁華街の側にあり、飲食店の人が買い物に行きやすくなっている。
 市場に入ると野菜や穀物が並び、果物はほんの僅かだ。

 どこで買ってくれるのか分からない。
 仕方ない、誰かに聞くか。

 俺は売り場のところにいる、ちょっと体格のいいおばさんに声を掛けた。

「すみません、果物はどこで買取してもらえるのでしょうか?」
「あぁ、果物の買取はここで、できるよ。なにを売りたいんだい?」

「ブルーベリー、さくらんぼ、イチジク、ビワです」
「ほう、今が旬の果物だね、どこにあるんだい」
「ここです」

 俺は首から下げているポーチを軽く叩いて見せた。

「マジック・バッグ持ちかい。ならここに出しておくれ」
 俺は言われたテーブルに果物を出した。

 

「おぉ、こんなにかい!」

 おばさんは、驚いていた。
 ブルーベリー、さくらんぼ、イチジク、ビワは、バケツ一杯分くらいずつあった。

「これは、状態がとても良いね。まるで今、採ったみたいだよ」

 おばさんは何やら考えてから言った。

「ブルーベリーは6千円。さくらんぼとビワで6千円。イチジクは4千円。全部で16,000円でどうだい?」

 う~ん。高いのか安いのかが分からない。
 俺が悩んでいるように見えたのか、おばさんが言ってくる。

「私の買取は高い方なんだけどね。じゃ、思い切って17,000円でどうだい?」

「エリアス君、その金額で十分よ」

 オルガさんに言われ、俺は納得した。


 1日で17,000円稼げた。
 2人で採って売れば1人、8,500円。

 この世界の平均日給が3,000円だから、冒険者をやらなくてもやっていける。
 だが何かの時のために、貯えも必要だな。

 今の内から貯えて行かないと老後、困るだろうし。
 年金もないこの世界では、働けなくなったら終わりだから。

 果物採取メインで、魔物に会うことがあれば討伐を考えればいい。
 これでなんとか、生活の目途が付いたな。

 
 また来ることを伝え俺達は名前を名乗った。
 おばさんはダニエラさんと言う名前だった。

 買い取る値段は一律ではなく人によって変わるから、私に売るんだよて言われた。
 たくさん採れるようなら、果物を売る商人でやっていけるかな。




 それから帰りに2人でアバンス商会に寄った。
 店の中に声をかけるとこの前、来た時の40代くらいの女性ではなく、50代くらいの恰幅の良い男性が出て来た。
 
 オルガさんは物珍しそうに、中をキョロキョロと覗いていた。
 普段なら商会なんて、来ないものな。


 お金が入って気が大きくなり、小麦粉を100kg。
 椎茸と鰹節もたくさん買ってしまった。
 やはり駄目ですね。
 普段、持ちなれないお金を持つと。

「失礼ですが、そんなに小麦粉を買われて、どうされるのでしょうか?」
「調味料を作るんですよ」
「調味料ですか?」
「えぇ、新しい調味料で『なごみ亭』という宿屋では、もう使っています」
「ほう、そうですか。では今度、食事に行ってみますかな」
 『なごみ亭』は食堂も兼ねているので、食事のみでも利用可能だった。

「ではこれで失礼します」
 そう言って俺はストレージに小麦粉100kg、椎茸と鰹節を収納した。

「そ、それは!」
 男の店員さんが驚いている。
 商会の人なら珍しくないと思うけど。

「それはマジック・バッグでしょうか!!」
 店員さんが叫ぶように言う。

 顔がとても近かった。
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