上 下
7 / 254
第1章 見知らぬ街

第7話 教会と腕時計

しおりを挟む
 宿屋に戻りベッドに横たわる。 
 転移した初日は疲れるな、そんなことを考えていると大聖堂の鐘が鳴った。
 14時か、忘れていた腕時計の時間を合わした。


 ゴォ~~ン!ゴォ~~ン!

 鐘の音で目が覚めた。
 どうやらベットで横になり、そのまま寝てしまったらしい。
 腕時計を見ると15時40分。
 鐘は20分早いのか。
 いや、合わした時間が合っているのかさえも分からない。

【スキル】世界の予備知識、が教えてくれる。
【時間は昼は日時計で太陽のある昼間を6等分、日が沈んだあとを6等分とした
不定時法。
 季節によって日の出は変わり、あくまで目安。『大体』となります。
 夜は北極星のような星があり、その星の動きを見てある程度の予測を付けている。
 どちらにしろ夜は寝てるから、20時くらいから日の出まで鐘は鳴らさない。
 雨や曇った日は『大体』で。
 ある意味、庶民は時間の感覚があり、時間の精度は問題視しない】だって。

 地球にいた時のように時間が正確なら、それに合わせて生活してるから合わないと気になる。
 だが大体しか分からないなら、それ程、気にならないし。

 待ち合わせをしてお互い相手が『大体』ならこちらが待つか、逆に遅れるかだ。
 『のどか』てことだのね。
 時計があっても意味ないかもな~。



 そう言えば教会はどこだろう。
 女神ゼクシーにお礼を言わないと。
 お祈りすれば会えることもあるって言ってたな。

 俺の部屋は2階にある。
 1階に降りるとサリーさんが居たので聞いてみた。

「教会はどこですか?」

「教会?あぁ、大聖堂のことですね。大聖堂は…」

 場所を教えてもらい、歩いて10分くらいのところに大聖堂があった。
 大きなお城のような建物の横に教会の様な建物があり、そこで参拝ができそうだ。

 中に入ると女神ゼクシーだと思われる像があった。
 どう見ても盛っている。
 実際にあった俺にはわかる。

 そんなことを考えていると、40代くらいのシスターがやってきて声をかけられた。

「どの様なご用件でしょうか?」

「初めて参拝に来たのですが、どの様にすれば?」

「特に決まりはありませんが女神像にひざまずいて、目を閉じ祈ればいいのです」

 俺は言われた通り跪いて目を閉じ祈った。
 すると転移した時のように、白い靄のようなものに包まれた場所にいた。

『私を呼ぶのは誰ですか?』

『女神様、こんにちわ。俺です』

 女神ゼクシーが現れた。

『あら、あなたは……』

『あなたに名前をもらったエリアスです』
 女神ゼクシーは毎日、仕事でたくさんの魂を見送っている。
 すっかりエリアスの事など忘れていた。

『あぁ、あの時の…。で、なんなの?』
 ややゲンナリした顔をされた。

『質問です、母さん』

『あぁ、もう母さんなのね。はぁ、なに?』

『どうして盛っているのですか?母さんはボン、キュッキュではありません!』

『はい?』

『もう一度言います。どうして盛っているのですか?実際の母さんはボン、キュッキュではありません!』

『そ、そ、それは…少しくらい盛らないと信仰という人気が出ないからよ』

『でも、さすがにメガ盛りはどうかと…』

「そんなことを言いに来たの…(泣)』

『冗談はさておき、生活の目途が立ったことを報告に来ました』

『そ、それは良かったわね。私も少しは安心したわ、アハハハ』

『これも母さんのおかげです。これからの俺の人生を、どうか見守っていてください。また来ますね』

『そんなことを言いにきたの?律儀ね。はい、またね』



 俺は現実世界に戻り、目を開け立ち上がった。

 待っていた様にシスターがやってきてた。
 良く見ると服がややくたびれ、顔も痩せていた。
 今居る建物の外壁も塗装が剥げ、老朽化気味だった。

 俺はそのことをストレートに、シスターに聞いた。
「教会は寄付で運営しております。ただ昨今は寄付が減りました。それだけみなさんの生活が苦しいということでしょうか。大聖堂は大きく、他に建物もあり今の寄付の額では修繕が追い付かないのが現状なのです。それに孤児も引き取っておりまして…」

【メンタルスキル】魅力効果が発動しており、好感をもってくれたようでシスターは素直に話してくれた。
 これは警戒心を持つ人や初対面の人と、話すには丁度いいスキルだ。

 帰りに心ばかりの寄付として50,000円をシスターに渡した。
 シスターはとても驚いていた。
 残金も乏しいが働けばいい。

「こんなに頂いて宜しいのでしようか?」

「俺もある意味、神の子ですし。このくらいは当然ですから」

「そうですね、人はみな神の子です。あなたに神のご加護があらんことを」

 立ち去ろうとした俺は振り向きシスターに「これ差し上げます」と言った。

「なんでしょうか、これは?」

「腕時計です。正確に時刻が分かる道具です。必要でなければ売ってください」

======================================

 後日、教会はもらった腕時計をオークションに出品した。
 それは1億円で国に落札され、そのお金で建物を修繕しシスターや孤児たちの生活も改善された。

 更に国は腕時計を国宝に指定。
 教会に貸し出し、腕時計の正確な時刻を基準とし大聖堂の鐘が鳴る様になった。
 日の出が遅い冬でも時間が分かり、待ち合わせをしても時刻が分かるので長く待たなくてもよくなり、商談にも良い影響を及ぼした。

 良いのか、ずれたままの時刻が基準で。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

処理中です...