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第2部 外の世界

第23話 始まり

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ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
   ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
       ガサ、ガサ、ガサ、ガサ

 気が付くと俺達は、200匹以上はいると思える程のゴブリンに囲まれていた。

 騎士団が剣や弓を構える。
 そしてメイドのイルゼさんやレーナさんも、バスターソードを抜いている。

 誰も攻撃しなかった。
 いいや、正確には出来なかったのだ。

 ここでゴブリン達に攻撃をすれば、こちらから口火くちびを切ることになる。
 だが待っていても、一度に攻撃されたら防ぎ切れない。

 長いようで短い時間が流れた。
 
 シュッ!
 その時、弓矢が飛んだ。

 この沈黙に耐えられなかったのだろう。
 騎士団員の誰かが弓矢をゴブリンに放った。

「ギッ、ギッ!」
 矢を受けたゴブリンが倒れる。

 それが戦いの始まりだった。

「皆の者、落ち着け。円陣を組むんだ」
 騎士団長アーガスさんが叫ぶ!

 弓兵はひたすら目の前のゴブリンに弓を打つ。
 そして剣士は剣を振るう。

 神官達も聖魔法を放つ。
Holy Arrowホーリーアロー!!」

 ドス、ドス!!

 俺達は神官に囲まれ、そして騎士団が更に囲んで守ってくれている。

 だが俺達の方は騎士団員と神官で合わせて30人。
 200匹以上いるゴブリンに、数で勝てるとは思えない。
 
 乱戦になり、イルゼさんやレーナさん達も戦っている。

 誰も自分のことを守るので精いっぱいだ。
 俺は怖がっているイルマちゃんの側に立ち、成り行きを守っている。

 するとそれは起こった。

Holy Arrowホーリーアロー!!」

「ドスッ?!!」

 俺は背中に衝撃を受けた。

 後ろを振り返ると、両手を前に出した格好のロターリ司祭がいた。
 そして驚いた顔をしている。
「ば、馬鹿な。いくら聖魔法とは言え、この近距離で私の攻撃魔法を受けたのに…」



 タケシめ、折られた手の恨みは忘れてはいないぞ。

 事前に魔物討伐にはタケシも同行すると聞いていた。
 討伐にかこつけて始末する。
 そして目撃者は権力と金を使い黙らせればいい。

 どうせタケシという男はオマケだ。
 王宮に忍ばせている小間使いからの報告では、聖女は心が不安定らしい。
 そして同郷の男を随分、頼りにしているとか。
 それならその男がいなくなれば。
 消えてしまえば、聖女は心のよりどころが無くなり私を頼るかもしれない。

 そして教会に置き王女の様に、いいやそれ以上に寵愛しよう。


「ドスッ?!!」

 そして俺は今度、お腹に衝撃を受けた。
 無意識に手で腹を押さえ、手をどけるとライトアーマーの焦げる臭いがした。
 

 ロターリ司祭を見た。
 さっきのは間違いではなかった。
 なぜならロターリ司祭が、両手を俺の方に向けた格好のままだからだ。


 俺は邪魔ものか。
 この機会に始末する気か。

 しかし攻撃魔法を受けたのに痛くない!
 というより、当たったことさえ分からないくらい感じない。
 これが防御力Bの俺力か。
 この程度の魔法なら防げることが分かった。

 それならもう、遠慮はしない。
 この森は王都から東北らしいから、まずは東に逃げれば魔界方向か。

 それにこの程度のゴブリンの数なら、対応できるという根拠のない自信の様なものがあった。

「イルマちゃん、逃げるよ」
「えっ、タケシ君。このゴブリンの群れの中を逃げるの」
「正確には逃げるんじゃなくて、突っ切るんだけどね」
「突っ切る?」

 俺は小柄なイルマちゃんを片手で抱き抱えた。
「きゃ!」

「さあ、いくよ。祭りの始まりだ」
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