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第1部 新しい世界
第15話 回顧
しおりを挟む私の名前は小野 陽子。
どこにでもある、よくある名前。
母が体を壊し今度は私が母の分も、働かないと生活できなくなった。
しかしその母は、私が社会に出て2年目で他界した。
私はそのことを忘れるかのように、がむしゃらに働いた。
でもどんなに努力をしても、会社にとって女性はメインにはなれなかった。
隔週休みも連休もなく休日も出勤し毎日、毎晩残業を繰り返し寝不足だった。
そして当時はどこか具合が悪い方が、仕事ができるように見られる風潮があった。
そして1985年、23歳の会社の帰り道。
横断歩道を渡ろうとして、信号無視の車が突っ込んでくる。
避けようとしたが、突然眩暈に襲われ…。
覚えているのはそこまでだった。
これからバブル経済が始まり、男女雇用機会均等法が改正される。
働きやすい時代が、そこまでやって来ているその矢先に。
この年終わる全員集合の最終回も、見る事もなくこの世を去った。
「と、ナレーションを入れてみました。ここまででどうでしょうか?小野陽子さん」
「あの~、ここはどこでしょうか?」
「ここは現世とあの世の狭間です。私は異世界『エニワン』を管理している女神ゼクシーです。短い間ですが、よろしくお願いいたします」
「異世界ですか?それはどう言うことでしょうか?」
「あなたは死にました。さっき見ましたよね?走馬灯を」
「あの教習所の免許更新の時に見せられる、ビデオ並の劇なら見ましたが」
「いや~、そう言われても。毎回、代役を立ててセリフ合わせをして、短時間で練習するのは大変なんですから」
「なぜ、そんなことをするのでしょうか?」
「ここに来た時点で、前世の事を忘れている人も居ますから。その人達用です」
「はあ、寸劇を見せたいのですね。それで私はどうなるのでしょうか?」
「ちょっと、お待ちくださいね」
女神ゼクシーは目の前のパソコンに入力を始めた。
カチ、カチ、カチ、カチ、カチ
『この人の運の残りポイントは350ね』
「あなたには2つの選択肢があります」
「2つですか」
「このまま天国に行き、次に生まれ変わる輪廻に乗るまでそこで待つか、私の世界『エニワン』に来ることです」
「『エニワン』ですか?」
「はい、あなたが元居た世界とは、別の世界に転移することが出来ます」
「別の世界ですか。どのような世界なのでしょうか」
「剣と魔法の世界です」
「剣と魔法ですか??」
う~ん。どんな世界なんだろう?
「中世ヨーロッパみたいな世界ですよ」
「転移とは、どう言う」
「転移は『エニワン』に移り住み、転生はその世界の誰かに生まれ変わる事です」
「では転生でお願いします」
「えっ、でも転生は申請に時間が掛かり、あなたの器になる人を探すのにも時間が掛かります」
「いいです、それで。私はもう死んでますから、時間は無限にありますから」
『それはそうだけど、私が大変なのよ』
「でも条件があります」
「どんな条件でしょう?」
「両親と姉が居て仲が良くて暮らしに余裕があって、生活に苦労しない家庭に生まれたいです」
「それは、どう言うことですか?」
「私の両親は早くに他界し、兄妹もいなかったので姉が欲しくて。それにお金に苦労するのは嫌なので、中世ヨーロッパ的な世界なら王女に生まれ変わりたいわ」
「でもそれですと転移と違い運のポイント消費が激しいので、自分を守るスキル能力には、ほとんど振れないことになりますが」
「えぇ、それで構いません」
「分かりました。それでは空きが出来ましたら連絡しますので、それまで待機専用空間でお待ちください」
そして何十年、いいえ時間の感覚が無くなるくらい長い時を待って、やっと空きが出来て転生したんだわ。
イルマ・グライナーとして。
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