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第1部 新しい世界

第10話 私はイルマ

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 まず召喚されてからどうしていたのかを、お互いに情報交換した。
 俺は寝て起きて昼食を食べ、イルゼさんからこの国の情報を聞いたことを話した。

 ジ~~~!
「お気楽なのね、あなたは」
 イルマちゃんにそう言われた。

 実際に俺はオマケだから、召喚されても何も用事がないしね。
 消されなかっただけ、マシだよ。

 ちなみにイルマちゃんは、俺の事はタケシ君と呼ぶ気らしい。
 見た目12~13歳くらいにしか見えない少女に『君』呼びされるのはどうかと思うが仕方がない。


 イルマちゃんの方は大変だったらしい。



 自宅に居たら眩暈がして魔法陣の上に。
 よく見ると角がなく魔族ではない人達がいた。

 慌てて唯一使える精神系の魔法を使い人族の振りをした。
 そしてビッチェ王女に聖女召喚の話を聞いた。

 いやらしい目で私を見てくるロターリ司祭と、オバダリア侯爵にもcharm魅了を使った。

 警戒されていると掛かりずらいけど、簡単に掛かった。
 まさかcharm魅了を使うとは思わなかったのだろう。

 すぐにビッチェ王女とオバダリア侯爵ができていると分かったわ。
 だって同じチーズの腐ったような臭いが2人からするから。
  終わったらちゃんと、お風呂に入ろうよ。

 それにしてもオバダリア侯爵にcharm魅了が効いてよかったわ。
 後から知ったけど、鑑定ができるなんて。
 もし使われてたら私が魔族で聖女でないことが分かってしまうから。

 それから私は考えた。
 何でもいいから、外に出してもらう。
 そしてcharm魅了で供と食料を付けてもらい、逃げ出そうと思ったのに。

 だがそれもすぐに諦めた。
 この国と魔界の間にはアスケル山脈と言う、人が踏み入れたことが場所があるということ。
 そして未開拓の為、貴重な資源が眠っている半面、森の奥に行けば行くほどレベルの高い凶暴な大型魔物がたくさんいるそうだ。

 そんなところに行っても、アスケル山脈を越えることは出来ず死ぬだけ。
 そしていずれは私が聖女ではないことが分かる。
 それまでに何とかしないと。

 私は精神系の魔法以外は使えない。
 腕力も強くはない。
 だからここから逃げ出すことは難しいかもしれない。

 そんな時だった。
 一緒に召喚された男が居ると聞いたのは。
 ビッチェ王女には私が聖女ではないことが分からない様に、故郷に帰りたいと泣き部屋にこもった。
 確かに魔族が居る魔界に帰りたいのは本当だからね。

 そして泣きまねをしている私を見かねて、気晴らしのつもりなのか同胞だと言う一緒に召喚された男に会うことになった。

 魔族であることを期待していたのに人間だった。

 仕方ない、えっ、charm魅了を使ったけど効かない?
 や、ヤバい。
 角がバレるから。

 私は精神を集中し『傀儡の術』、『影縛り』、『精神波』を使ったけど効果なし。
 私は魔族の中でも精神系の魔法に関しては自負していたのに。

 鑑定も使え精神系の魔法にも耐性がある。
 魔族の基準でいったら彼は、魔法に長けているタイプだわ。

 でも聞いても多分、教えてくれないだろうしね。

 それに私の事を見た目が幼いからと言って『ちゃん』付けで呼ぶのよ。
 だから私も彼の事を『君』付けで呼んでやるの。
 お返しよ。

 これから彼と組み、ここを抜け出すことにした。
 でも抜け出した後は、どうするの?
 アスケル山脈越えなんて出来ない。
 魔族の私は一生怯えながら人族の世界で暮らすのかしら。

 それ以前にどうやって逃げ出そうかしら。
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