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第2話 ソフィアちゃん

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「あなた、お名前は?」
「わ、私ですか。ソフィアです」

「ソフィアちゃんね。いくつ?」
「10歳です」

「10歳ね。わたしはパメラよ」
「パメラ様は、どうしてここに」

「普通にパメラでいいわよ。変でしょ、それ」
「はい、分かりました。パメラ様」
「様は要らないわよ」

「でもサーベルウルフの群れを倒せて、治癒魔法も使える人を…」
「いいのよ、気にしなくて。パメラお姉ちゃんて呼んでも良いから」
「分かりました、パメラさん」
 ガクッ。
 そう、くるのねこの子は。
 できるわ。


「あ~、それからソフィアちゃん。このサーベルウルフはどうする?」
「どうする、と言われても~。倒したのはパメラさんですから。でも持ち帰るにしても、その量では…」
「では、頂くわね」
 ヒョイ、ヒョイ、ヒョイ、ヒョイ、ヒョイ

 私は13匹のサーベルウルフを、ストレージに収納していった。

「す、凄い!マジック・バッグなんて初めて見た~」
 ソフィアちゃんは興奮している。

「そうなんだ、初めて見たんだ。最近、私の旦那様から(能力を)もらったのよ」
「もらった!凄い旦那様なんですね」
「ええ、そうよ。最高の先生よ」
「先生ですか?」
「私の旦那様は何でも知っている、ていう意味よ」
「凄い~」
「えへへへへ」


「ソフィアちゃんは、何をしにこの森にいるの?」
「お母さんが病気だから、薬草を取りに来たの」
 薬草では傷は治せても病気は治せないけど。

「どんな病気?」
「よく分からない。手足の感覚が無くなったり、皮膚が赤くただれているの」

 この世界には医者はいない。
 なぜなら魔法に頼り、人の体についての研究がされていないからだ。
 だから病気にかかったら自然回復を待つか、死あるのみだった。

「そうなの。一度、パメラお姉ちゃんにお母さんを診察させてもらない?」
「え、お母さんを見てくれるの。パメラさ…お姉ちゃん」
「でも期待しないでね、役に立てないかもしれないから」
「うん、ありがとう…」



 私達2人は森を下り港町レアーナに入った。
 入り口には門番らしい人が1人立っている。
 門番は町人達が交代で番をしている。
 みんな顔見知りで門を通っても、呼び止められることはなかった。
 いつもなら…。

「おい、ソフィアちゃん。その人は誰だい?知らない人みたいだけど」
「ガゼルおじさん。この人はパメラお姉ちゃんです」
「パメラ…お姉ちゃん?」

「お母さんのために、北の森に薬草を採りに行ったの。そしたらサーベルウルフの群れに襲われて…」
「群れに襲われただって!あれほど森の奥には入ってはいけないと、町で決めているのに」
「だってお母さんが辛そうだったから」

「それでどうしたんだい?」
「そしたらパメラお姉ちゃんが、魔法でやっつけてくれたの」

「魔法だって、魔法使いがなぜこんな、辺鄙へんぴなところにいるんだい?」
「それはね。私の旦那様が海のある所に住みたい、て言うからよ」
「君達なんて、この町で見たことがないけど」
「それはそうよ。人づきあいが煩わしいから、森の中に家を建て住んでいるのよ」

「森の中って。大型魔獣や魔物も多いんだぞ!知らないのか」
「大丈夫よ、私達にかかれば大概の魔物は相手にならないわ」
「私達?」
「えぇ、家族で住んでるの」
「他にも人が居るのか。それでこの町に何のようだい?」
「あのね、パメラお姉ちゃんは回…『回復魔法の事は内緒にしておいてね』

 私は思わずソフィアちゃんの口に手を当てた。

「おい、どうしたんだ」
「なんでもないわ。ねえソフィアちゃん。私はお母さんのお見舞いに来ただけよね」
「本当か」
「本当です、ガゼルおじさん」
「わかった、通っていいぞ」
 やっと許可がおりて、私達は町の中に入った。


 質素な街並みが並ぶ小さな港町。
 私はソフィアちゃんと、手を繋いで歩いている。

「お父さんはどうしたの?」
「お父さんは私が小さいときに、漁に出てそれっきり帰ってこなくて」
「そうだったんだ」
「お母さんは漁の手伝いをして、働いていたけどしばらく前から調子が悪くて」
「頑張ってきたのね」

 私はそう言うしかなかった。
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