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もう遠くへ逃げ出したい!~ミガッティ・ショーワール~

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 馬車を飛ばして辿り着いたリュシオン様の自宅。
「リュシオン様に急ぎ、取り次いで頂戴」
出て来た使用人に告げると、“主人は少し遠い場所におりますので、客間でしばらくお待ちください”と言われた。
 客間のふかふかのソファに腰掛け、窓の外の景色を見る。
豪商と言うだけあって、綺麗で広いお庭だ。夕日に染まってまさに絵になりそうなほど。
 これだけの資産があるのだもの……私をかくまう位、訳はないはず。
そして私は、未来のリュシオン様の妻として、悠々自適の生活をするんだ。
 彼は私を尊重し、大事にしてくれる。
 私の幸せを、何よりも優先してくれるわ。
彼なら、きっと……。

 なんて考えていたから、見えてしまった。
庭園の向こうに見える、その姿を。

あれは…リュシオン様? 

 庭園と一口に言っても広大。探すのも時間がかかるでしょう。あんな私が見える程度の距離にいてても、使用人は全然明後日の場所をウロウロしているんでしょうね。
 ……でも、もう良いわね? リュシオン様はあそこにいるんだから。
私が直接会えばいいだけだもん!!
 即決で決めて、私は窓から庭園に出た。

 ……出たんだけど。

 「嗚呼……我らが主よ、永遠の忠誠を誓います。この生果てるまで、この血肉、魂全て貴方様のために……!」

 な……何? 何でリュシオン様、そんな怖いこと、言ってんの!?
 今、私が潜んでいるのは地下室だ。
リュシオン様の姿を見つけ、すぐさまお側に行こうと庭園に下りた私。
 でも彼は気づかないまま歩き出してピタリと突然止まる。
周り中が白い花の中に、ポツンと黒い花が咲いていた。それが目印なんだろう、リュシオン様がそこでコツコツ、と三回足踏みをする。
と……それが合図のように地面の一部が盛り上がった。それはやがて人1人は入れる位の穴になった。リュシオン様はそこに入っていく。

「……な、何なの?」
ごくり、と喉を鳴らす。
 彼なら力になってくれると思った筈なのに、今、目の前に起きている状況に信頼はグラグラと揺れっぱなしだ。

そうして彼の後を付けて……辿り着いたのがこの地下室だった。
 黒一色の室内。それだけでもおぞましいのに配置されている装飾が更にぞっとする。
 それは知らない害獣の巨大な骨や骸骨。それらと一緒に並んでいる……ビン付けの状態で未だにドクンドクンと脈を打つ、何かの液体に付けられた肉は……?

 それを何かと認定するのは簡単だった。でもしたくなかった。
 な、何よアレは……?
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