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最後の希望は~子爵令嬢・ミガッティ・ショーワール~

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 「ミガ、ツカァズ侯爵家にはもう、関わるな。研究の為に土地を使いたいから、というのが婚約の理由だと思っていたが、実はツカァズ卿が詐欺にあってしまい借金の返済の為が主な理由らしい。あそこに関わってもメリットはないだろう」
「分かったわ、パパ」
家に逃げ帰った私はパパに言われた事に素直に頷く。
 それに対しては異論はないわ。ドッチィがあんなに使えない奴だったと思わないもの。しかも父親が詐欺に引っかかったなんて、侯爵位を持つだけの無能じゃない。
 でもそこで話は終わらなかった。
「ミガ、お前はしばらくこの王都から出なさい」
「え? どうして……」
目をぱちくりさせていると、ママも取り繕ったような笑みで合わせて言う。
「スタン卿が教えてくださったの。貴女のような子供を専門に教育する施設があると。
そこでお世話になりなさい。とても理解のある場所で、貴女と同い年の、似たような経験をしているお嬢さんが大勢お世話になっているそうよ」
「どうしてそんな場所に!」
「……“病弱”なお前が、普通の状態になる為だ」
ウソだ、パパは知ってる。私に病弱の振りをしろ、って言っていたのはパパだ。
 その方がドッチィの気を引けるから――って言われたから弱い振りをした。そりゃ、少しは私も良かったわよ。ドッチィを独占出来て、婚約者っていう女を下に見れて。
 でも、それをいきなり見知らぬ場所に行けなんて!
「状況が変わったんだよ。お前は最近、色んな紳士たちと交流があったそうだな? その彼らの関係者達がお前を血眼になって探しているらしい」
「どう、して」
あの変態達に?
「自分達の崇拝している彼らと交流を持っている事に対する怒りか、逆に彼らに好意を抱かれているのだからありがたく受けろ、と思っている者とだ」
「そんな……!」
「事実だ。見た者達が言うには、その様はもはや狂信者のようで、逆らえばどんな目に遭うか分からないと思った程だったらしい」

 何それ!? そんなにあの変態達を崇拝出来るの?
信じられない……とは思ったけど、確かに彼らは表むきはセレブな権力者。
私だってあの本性を知るまでは喜んでいた。そんな彼らを崇拝する人間がいても、おかしくはない。
――彼らのうわべだけしか知らない狂信者達が、私を狙っている?
  そして……危害を加えるか、もしくは彼らのどちらかの申し出を受けるよう、強要される?
 ぞわっ!! と背筋に怖気が走った。
い、嫌だ、あの変態達とくっつくのも、危害を加えられるのも。
 だって……私、あの人達をもう、好きじゃないのにそんな目に遭うなんて。
と、思った時…彼が姿が頭に浮かんだ。

「ちょっと出て来る!」
「なっ! ミガ、待ちなさい!!」
「何が出来ると言うの? お父様の言う事を聞きなさい!!」

 パパとママの声が聞こえるけど、私は一縷の望みを持って家を出た。
そして馬車を出すように言う。

――リュシオン様なら、私をきっと助けてくれる!
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