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再会と義姉の近況
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「三ツ目熊を、5体…………!」
討伐内容を見た受付嬢・ベッキーさんの顔が青く引きつる。
「昨日一日でそれって……! チヨちゃんあなた、本当に虐待されていないわよね!?」
ああ……ここでも旦那様の悪評の影響が……。
まぁ私も、実際にお会いするまでは信じていたのだから何も言えないが。
ここは『冒険者ギルド』。言い換えると、短期単発仕事斡旋所……とでも言うのか。ここに登録したら、誰でもお仕事をもらえる。……そう、誰でも。
内容は家の掃除から魔獣の討伐まで様々、だ。年齢制限もないので子供の私でも登録出来たけど、素性の分からない者でも登録出来る事から、あまり良く思っていない人もいる(犯罪歴のある人の場合は、登録は出来るけど見張りがつく。期間は罪によって様々)。
でもそれとは別に、買い取りも受け付けているので、私と旦那様が討伐した三ツ目熊を持って訪れたのだ。
「旦那さーいえ、わが主、クラウディア公が、私に防御魔法を付与して下さったので出来ただけです」
「それにしたって……! 三ツ目熊なんて、大人でも5.6人で討伐するのよ? それを……」
「ベッキー、そいつを普通のガキと一緒にするなよ」
屈強な男の人がそこで、口を挟む。
短く刈り上げた銀髪に、赤に近い茶色の瞳。彫刻で作られた像のような目鼻立ちのハッキリした顔。旦那様とはまた違う美形だ。
「シドさん」
「チヨ、また派手に暴れたらしいな」
シドさんは私を見ると、口元だけちょっと綻ばせた。
彼は私と同じ、冒険者のシドさん。
同じといっても私はB級、彼はA級と差があるけど、以前師匠とパーティ組んだ時から、顔を見たら声をかけて下さる。強面で無口な為、近寄りがたい印象があるけど、話してみれば優しい。
「ところでチヨは、ケーチャー家の養女なんだよな?」
「? はい、そうですが……」
お義姉さんの知り合いなのかな?
「……つまりアイリス嬢は義理の姉なのか?」
「そうですが……姉をご存じなのですか?」
もしかしたらシドさんは、お義姉さんの攻略対象なのだろうか?
A級冒険者も将来有望な異性に違いないし、カッコいいから不思議では無い。
「それなんだがな……」
「チヨちゃん!」
シドさんの声が途中で遮られた。
声の方を向くと、いかにもお嬢様な装いの超が3つ位付きそうな美少女が満面笑顔で私の前に立っている。その後ろにも同じ歳くらいの女性が2人。殺伐としたギルドに、そこだけ花が咲いたようだ。
私はこの方々を知っている。けど、
「あ、アンナマリー嬢……?」
どうしてご令嬢が、私の名前を……?
呆然と呟くと、カトレア嬢はぱあっと華やいだ笑顔になる。
「覚えてくれたの? 嬉しいわ。でも今度からは“アンナお姉様”って呼んでね♪」
…………はいー?
討伐内容を見た受付嬢・ベッキーさんの顔が青く引きつる。
「昨日一日でそれって……! チヨちゃんあなた、本当に虐待されていないわよね!?」
ああ……ここでも旦那様の悪評の影響が……。
まぁ私も、実際にお会いするまでは信じていたのだから何も言えないが。
ここは『冒険者ギルド』。言い換えると、短期単発仕事斡旋所……とでも言うのか。ここに登録したら、誰でもお仕事をもらえる。……そう、誰でも。
内容は家の掃除から魔獣の討伐まで様々、だ。年齢制限もないので子供の私でも登録出来たけど、素性の分からない者でも登録出来る事から、あまり良く思っていない人もいる(犯罪歴のある人の場合は、登録は出来るけど見張りがつく。期間は罪によって様々)。
でもそれとは別に、買い取りも受け付けているので、私と旦那様が討伐した三ツ目熊を持って訪れたのだ。
「旦那さーいえ、わが主、クラウディア公が、私に防御魔法を付与して下さったので出来ただけです」
「それにしたって……! 三ツ目熊なんて、大人でも5.6人で討伐するのよ? それを……」
「ベッキー、そいつを普通のガキと一緒にするなよ」
屈強な男の人がそこで、口を挟む。
短く刈り上げた銀髪に、赤に近い茶色の瞳。彫刻で作られた像のような目鼻立ちのハッキリした顔。旦那様とはまた違う美形だ。
「シドさん」
「チヨ、また派手に暴れたらしいな」
シドさんは私を見ると、口元だけちょっと綻ばせた。
彼は私と同じ、冒険者のシドさん。
同じといっても私はB級、彼はA級と差があるけど、以前師匠とパーティ組んだ時から、顔を見たら声をかけて下さる。強面で無口な為、近寄りがたい印象があるけど、話してみれば優しい。
「ところでチヨは、ケーチャー家の養女なんだよな?」
「? はい、そうですが……」
お義姉さんの知り合いなのかな?
「……つまりアイリス嬢は義理の姉なのか?」
「そうですが……姉をご存じなのですか?」
もしかしたらシドさんは、お義姉さんの攻略対象なのだろうか?
A級冒険者も将来有望な異性に違いないし、カッコいいから不思議では無い。
「それなんだがな……」
「チヨちゃん!」
シドさんの声が途中で遮られた。
声の方を向くと、いかにもお嬢様な装いの超が3つ位付きそうな美少女が満面笑顔で私の前に立っている。その後ろにも同じ歳くらいの女性が2人。殺伐としたギルドに、そこだけ花が咲いたようだ。
私はこの方々を知っている。けど、
「あ、アンナマリー嬢……?」
どうしてご令嬢が、私の名前を……?
呆然と呟くと、カトレア嬢はぱあっと華やいだ笑顔になる。
「覚えてくれたの? 嬉しいわ。でも今度からは“アンナお姉様”って呼んでね♪」
…………はいー?
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