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第4章 勇者の日常

6 女僧侶アリアン2

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 そのアリアンが、現代世界に来ている。
 ベルクやフィーラと同じく。

 ……ということは、ナダレもどこかにいるんだろうか。

 おそらく、俺を勇者として異世界に連れて行くために。

 もしかしたら、フィーラのように手段を選ばずに襲ってくるかもしれない。
 異世界での、悪鬼のようなアリアンの表情を思い出す。

 俺は暗い気分で彼女を追った。

 ──スキル【気配遮断】を発動。
 こっそりと後をつけていく。

 彼女は水着姿だ。
 ポニーテールにまとめた、青い髪。
 ほっそりとした体に白いビキニ姿。

 今のところ、俺に気付いた様子はない。

 ……俺を追ってきたのか、それとも偶然ここにいるだけなのか。
 思案しつつ、俺は彼女との距離を詰め──、

「……いや、下手に刺激しないほうがいいか」

 ふと、思い直した。

 普段のアリアンは、この間のフィーラほど攻撃的な性格じゃない。
『一周目』の世界で豹変したのも、魔王退治の後のことだ。

 ただ、勇者絡みの話がこじれ、いきなり攻撃してこないとも限らない。
 今日は雫たちと一緒だから、彼女たちが巻き添えを食う危険もある。

 とりあえずは、

 ──スキル【監視】取得。発動。

 俺はアリアンに【監視】のスキルを施した。

 その名の通り、対象を『監視』し、敵対行動を起こすと俺に知らせてくれるスキルである。

 この場では様子を見つつ、対策を立てよう。
 少なくともプールで接触するのは、危険の方が大きい。

 俺はアリアンから離れた。



「あ、先輩。こんなところにいた」

 みんなのところへ戻る途中、月子に会った。

「ねえねえ、今度はボクと競泳用のプールに行こうよ~」
「競泳用?」
「思いっきり泳げるんだよ。競争しよ、競争」

 と、月子。

「負けないからね、先輩っ」

 ──ということで、俺は月子と一緒に競泳用プールに移動した。

「先輩、はやいねー。ボクも泳ぎには自信あったんだけど、全然追いつけないよ」
「ん? ちょっとな」

 ひと泳ぎした後、賞賛する月子に俺は苦笑いを返した。

 スキル【水泳】。
 名前の通り、泳ぐ能力を強化するスキルである。

 今後、場合によっては水中での戦いを経験することもあるかもしれない。
 せっかくの機会なので、泳ぐ能力や感覚も少し鍛えておこうと思ったのだ。

 まあ、半分以上は単なる遊び心だけど。
 ただ純粋な泳力じゃないから、褒められると少しだけばつの悪い気持ちになる。

「ふふふ、こうなったら月光流星拳げっこうりゅうせいけんの奥義を出して、先輩をぶっちぎるしかないねっ」
「泳ぎに関係あるのか、月光流星拳って……?」
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