不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

第１章 勇者の帰還

１８ 緋ヶ崎穂乃花３

「えっ、彼方くん……？」

　まず自分のステータスを確認する。

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　名前　　　：夏瀬彼方
　レベル　　：５
　攻撃　　　：１３
　防御　　　：９
　ＨＰ　　　：１９
　ＭＰ　　　：１７
　経験値　　：１１４
　固有スキル：【経験値効率・極大】
　汎用スキル：【サーチ・レベル１】【近接格闘・レベル３】【知力ブースト・レベル１】【ジャンプ・レベル１】【リペア・レベル１】【威圧・レベル３】【気配遮断・レベル１】
　基本ジョブ：【勇者】【戦士】【魔法使い】【僧侶】【武闘家】【暗殺者】【盗賊】
　ＥＸジョブ：なし
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　地道に経験値を貯め続けているおかげで、レベル５まで上がっていた。

　異世界にいたころの俺のレベルは７００超えだから、まだ全然届かないんだけど。
　魔族や魔王ならぬコンビニ強盗が相手なら、これでも十分だろう。

　俺はゆっくりと歩みを進めた。

　単純な戦闘能力なら負けるはずもないけど、相手は人質を取っている。
　取得したばかりの、あのスキルの出番だな。

　──スキル【気配遮断】発動。

「あ、あれ、彼方くん、どこですか……？」

　戸惑ったような雫の声が聞こえる。
　彼女には、俺が目の前から消えたように思えただろう。
　当然、他の人間にとっても。

　誰も俺の気配を──存在を捕えられない。

　そのまま進み、コンビニ強盗の目の前までやって来た。
　数十センチの距離まで近づいても、男も人質も俺に気づいた様子はない。

「い、いいか、誰も、近寄るんじゃねえぞ！」

　あいかわらず騒いでいるが、こいつに俺の姿は見えていないのだ。

　とりあえずナイフを取り上げよう。

　──【近接格闘・レベル３】発動。

　俺は奴のナイフの動きを見極めた。
　人質の女子店員にナイフが当たらないよう、慎重に手を伸ばす。
　刃先を指でつまみ、男の手から取り上げた。

「えっ？　ナイフが──!?」

　驚いたような男に、すかさずアッパーを食らわせる。

「ぐはっ……」

　綺麗にあごを打ち抜き、男を吹っ飛ばした。