異世界執事

伊簑木サイ

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第八章 そして二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。(R18バージョン)

欲情して

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 唇が触れあう。それだけで、幸せで、安心して、もっともっと触れたくて、無意識に口を開く。すべりこんできた舌に舌をからめとられてこすりあわされた瞬間、頭の奥に、意識が揺らぐような快感が奔った。

「んんっ」

 肌よりも深い場所で彼を感じられる。それがたまらなく嬉しい。
 唇が離れ、頬を舐められる。慕わしさに彼の背を撫ぜれば、深く抱きこまれて、耳を齧られた。思わず身を竦ませると、今度は舌が這わされる。彼の手が首筋をなぞり、髪をかきあげ、手品のように簡単に簪で後頭部に留めつけていく。そうして無防備にさらけ出されたうなじにチュッと吸いつかれた瞬間、頭の中が一瞬真っ白くなった。

「あっ」
「ここも感じるのですね?」
「ああんっ」

 優しい声で尋ねられながら同じ場所にキスを落とされて、さらに一直線に強い快感が通りぬけていく。気持ちいい。力が入らない。その余韻が抜けもしないうちに、首の後ろへと、音をたててキスが移動していった。
 そうして首の真後ろまできた時、シュルとかすかに衣擦れの音がして、バスローブの襟がくつろげられた。うなじにひんやりとした外気を感じて心細さを感じたのも束の間、柔らかくあたたかいものが触れる。彼の唇だと気付くより先に、甘い疼きに体の芯が、じんと痺れて。

「あっ、はん」

 唇で触れられるたびに、鼻から抜ける高い声が、弾き出されていくのが止められない。
 バスローブを押し下げながら、いくつもいくつも背に散らされるそれを、まるで花びらみたいだと思った。柔らかで、すべらかで、儚い感触なのに、情熱を宿してひらひらと降りそそぐ。
 際限なく繰り返されるキスに、魂まで請われている気がして、心が震えてしかたなかった。

「んんーっ」

 感じる場所を探り当てられ、叫ぶようにあえいだ。……何度も、何度も。そのたびに丹念に愛撫をほどこされては、熱が体の内側に溜まっていく。じりじりと、ゆらゆらと、熱は今度は内側から肌を炙りだし、耐え難い疼きをもたらしはじめ、必死に彼の腕にしがみついた。
 いつの間にかずいぶん前のめりになっていて、気付けばすぐ目の前にクッションがあった。うつぶせにその上に下ろされる。
 姿勢が伸びて楽になったけれど、八島さんのぬくもりが離れていってしまう。反射的に彼を追って顔を上げたら、床に下りて膝をついた彼と、ちょうど目が合った。彼は私に笑いかけて身をかがめ、バスローブが引っ掛かっているだけのむきだしになった腰骨のところにキスをした。

「あんっ」

 直接下腹部に届くひときわ激しい感覚に、たまらず大きな声をあげてしまう。

「ここも、なのですね?」

 すかさず歯が立てられ、吸いつかれ、執拗に舐られ。自分では制御できないどうしようもない快感に、甘く高く鼻にかかった声がとめどなくこぼれて。

「ああ、そうです。この声と、同じ」

 うっとりとした呟きとともに、腰の線に沿って掌がのぼってくる。脇から素肌を撫ぜ、前にまわりこみ、あっと思った時には、胸を包みこまれていた。全身に快感が漣のように広がる。
 やわやわと掌の中におさめるように揉まれ、次の瞬間に頂をつままれた。びりびりとした疼きが胸の先から下腹に向かう。同時に腰にもねっとりと舌が這わされて、強烈な快楽が背筋をはしりぬけ、光が頭の中で瞬いた。

「あ、あ」
「ここは、そんなに感じるのですか?」

 声が移動して、耳元にキスされた。ぼんやりと目を開ければ、熱を宿した瞳で微笑みかけられる。肩をやんわりと押されて、されるがままに仰向けになった。そうして露わになった胸元へと、彼が顔を寄せてくる。
 掌で包まれていない方の胸。その中心を咥えこまれた。目の前で繰り広げられる淫らな光景に息を吞み、同時にすぐに加えられた舌の絶妙な愛撫に、頂で快感がはじける。息が詰まって、声も出せずに身悶えるのに、そうしてる間にも反対側も指でこねられ、不規則な予想できない刺激に翻弄されて。

「あっ、あっ、あっ、あっ」

 私はあられもない声をあげて、どうしようもなくびくびくと震えた。
 そうして与えられる疼きごとに、彼への愛しさが増していくようだった。快楽が体の中を走りまわって、自分でもわからない間に心の奥に積み重ねてきた思いを見つけだしては揺り起こす。彼への思いが次々目覚めて、広がって、体の中に満ちていって。
 好き。
 好き。
 内側から破裂してしまいそうなほどの息がつまる思いに、私はたまらず、胸元の艶やかな黒髪に指をさし入れた。

「八島、さん」

 胸から口を離し、彼が上目遣いに見上げてくる。

「ああ、千世様、これを、もっと、もっとください」

 うん、と答えた。掠れた声しか出なかった。私ももっと彼を感じたかった。キスされたい。自分のすべてで彼に触れたい。彼の与えてくれるもので、体中全部全部満たされたかった。
 彼がまた乳房に吸いつく。下腹部がきゅっとくる感覚にうかされて、彼の頭を強く抱きしめる。
 声が止まらない。指と舌と唇とに絶え間なく愛撫されて、ふくれあがって行き場のない快楽が苦しい。でも、まだ足りなくて。なのに、どうしたいのか、どうされたいのかもわからない。ただ、ただ、好きでたまらない人の名が、その人を求めて、体から転がり出ていく。

「八島、さん、八島、さんっ」
「はい、千世様?」
「ん、んっ、もっと……」
「もっと?」

 愛撫が止められ、聞き返される。やだ、やめないで、と思う。もっと、もっと、

「……いっぱい」

 どこもかしこも、触れないところがないほどに触れて。私を満たして。
 最後まで言う前に、自分の本音に気付いて、あまりの恥ずかしさに言葉を飲みこんだ。
 だけど、八島さんはそれだけで。

「もっと、いっぱいでございますね」

 そうして、わかっていますと言わんばかりに優しく笑み、乳房を下から押し上げるようにキスをする。それもまた気持ちよくて、声と一緒に体が揺れてしまう。

「承知いたしました。お体のすみずみまでお探しいたしましょう。千世様の心の臓が騒ぎ、生気が甘美に揺らぐところを。……ですが、ここでは少々窮屈でございますね。寝室へお運びいたします」

 八島さんは脱げかけのバスローブもそのままに、軽々と私を抱き上げた。
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